平成18年度上半期、第135回直木賞を受賞した作品だそうだ。(って全く知らなかった。今回購入してから気づいた・・・)おまけに三浦しをんさんという作家に関しても今まで取りたてて読もうと思ったこともなかった。正直・・・。
でも、今回読んで、結構笑えたし、じ~んとした。友達とは一言で言えない何か、昨年ずっと言われていた「絆」「家族愛」というものを考えさせられた。
物語は東京のとある市、まほろ市。(最後の解説で町田市?って書かれてあったけど、なるほどこんな感じかも・・・)
そのまほろ市で便利屋を営むバツいちの多田。そしてひょんなことから一緒にコンビを組むことになった幼馴染の行天。行天という名前もおもしろいけど、中身もおもしろい。いつもは飄々としているのに行天の中で許されない事態が起きたとき、同じ人かと思うくらい病力的に豹変する。(これは幼い頃の虐待が理由だそうだが・・・)
その多田と行天が織り成す人間模様。ペット預かりに塾の送迎、納屋の整理にバスの運行状況調べ・・・。便利屋ならではの仕事。
しかし、この本の中で私の興味を惹いたのが、多田が行天と関わり合っていく中で、今まで体験したことのないことに遭遇し、巻き込まれ、今までこびりついていた固定観念が引き剥がされていくことでした。一人だったら普通に仕事としてこなしていた事態も行天と関わることで、様々な事件に巻き込まれていき、本当のことがわかるのです。そうこうするうちに、最初はうっとおしく思っていた行天をいつしか頼りにし、思いやっていることに気づきます。一人よりも二人、二人よりも三人・・・関わる人が増えていくと体験も感情も増えていくのです。一人の方がラク・・・でしたが、人恋しくなる本でもあるのでした。
まほろ駅前多田便利軒
著者:三浦しをん
文春文庫