「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」
私たちの年代だと、あ~・・・と思い出す「人間の証明」(森村誠一著)。本はもちろん、映画も話題になりました。映画では松田優作がやってました。最近では2004年に竹野内豊でテレビドラマ化されたとのこと(知りませんでしたが・・・)
今回は、今さらですが読んでみました。
東京のあるシティホテルの最上階に向かうエレベーターの中で、黒人がナイフで刺され死亡した。関係が疑われるのが、麦わら表紙と「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」の西条八十の詩集。棟居刑事は被害者の過去を追い、詩集が関係する霧積温泉から富山県へ向かう。一方、黒人の住んでいたニューヨークでもアメリカの刑事ケンが調査していた。黒人の殺人事件と別の角度から関係する女性の失踪事件。黒人の殺人事件は思わぬ方向へ・・・
様々なミステリーを読んでいますが、これはすごいです。細かい描写、犯人の尻尾を掴んだと思ったその瞬間に、スルリと抜けられる。そして別の角度から再度捜査が始まる。実際の事件とはこのように一つ一つ小さい推理を組み立て、そして調査していくものなのではないかと思った。最近のミステリーや刑事ドラマにありがちな、だいたい犯人が分かるというものがなく、本当にハラハラさせられた。最後の方は、睡眠時間を削り、また電車に乗るとすぐに本を開けたくなる、そんな本でした。
人間の証明
森村誠一著
角川文庫