展示館の次は、すぐ御近所の弘前市りんご公園にお邪魔しました。

丁度行った日に、期間限定で岩木かちゃらず会さんが、こぎんの展示販売を行っていたのです。


展示品には小物が多く、大作はタペストリーなどがいくつか有りました。

遊び心の有る創作こぎんを主に作られているようで、古作のこぎんとはまた違う面白さでした。


こちらではいくつか買い物をしたのですが、コースターの製作キットがとてもお安かったので、そちらも購入しました。


その後、この日の宿泊先やら帰りの新幹線やら色々な場所で刺して、おかげさまで無事完成しましたので、今日はそちらの作品を御紹介!

手芸ブログのくせに、自作作品画像をあげるのは久しぶりですあせる



刺繍日和-岩木かちゃらず会コースターキット

それぞれ説明致しますと、

ピンクの糸→花コつなぎ

白の糸→テコナ(ちょうちょ)

水色の糸→ベコ刺し(牛)

茶の糸→クルミのカラ

…となっております。


こちらキット4枚+見本1枚のセットで、お値段3桁だったはず!

練習用には最適なキットでした。


自分で言うのもなんですが、青森で沢山こぎんを見まくって、色々な方に話を伺っただけあって、以前よりも上手くなったでしょう?にひひ

あとは数をこなさないとね!


青森2日目は、八戸から弘前に移動して、こぎん探索をしました。



まず最初に訪れたのは佐藤陽子こぎん展示館

こちらは個人の方がこぎんを紹介する為に作られた施設なのですが、規模の検討がつかず、どれぐらい時間をとれば良いのかもわからなかったので、この日の最初に行きました。

因みに写真撮影は出来なかったので、写真無しのうえに文章が凄く長くなりますあせる



こちらの展示館、実際お邪魔してみると、普通の一軒家。

ところが玄関を入った瞬間から、こぎんの大作がお出迎え。

館主の佐藤さんが製作された作品です。


展示室は2階。

こぎんで素敵に飾られた階段を上っていくと、古作のこぎんが飾られています。

ショーケースに飾られた古作のこぎんは、2枚の着物をメインに、子供服等も有ります。

2枚の着物は、西こぎん(中津軽郡一帯のもの)と東こぎん((南津軽郡一帯のもの)の2種類。

この他にもう1つ三縞こぎん(西・北津軽郡一帯のもの)を含めた3種類が、こぎん刺しを細分化した際の種類になりますが、三縞こぎんはとても希少でほとんど残っておらず、展示用に手に入れる事が出来なかったそうです。

この2枚の着物を見比べながら、佐藤さんからそれぞれのこぎんの特徴を教えて頂きました。

既に書籍でそれぞれのこぎんの特徴等は学んでいたつもりでしたが、やはり実物を観ながら説明して頂くと理解度も上がりまして、こぎん着物を見てどの地域の物かがわかる様になりました。

個人的には繊細な柄合わせの西こぎんが好きです。

このあたりの違いは後日、アミューズミュージアム で撮った写真を使って御紹介しようと思います。


こちらの古作の着物、1枚だけショーケースから出ている物が有りまして、そちらは触らせて頂けました。

きっと初めて触れたならば感動もひとしおでしょうが、なにぶんアミューズミュージアムでも触りまくっていたので、相変わらずの硬くてパリっとした麻の質感に「そうだよね~こんな感じだよね~」なんて思っていましたが、佐藤さんが「是非羽織ってみて下さい」と薦めて下さったので、おそるおそる羽織らせて頂きました。

するとただ触っているだけではわからない、衣服としてのこぎんの感触が伝わってきました。

薄い麻地の着物は、保温面ではとても心許無く、まるで夏用の下着…というイメージです。

たかだか百年ちょっと前の青森では、こんな薄衣で冬を過ごしていたのかと思うと、とても信じられません。

しかしこぎんを刺した着物の上半身部分は、何も刺されていない下半身部分と比べて明らかにずっしりと重く、柔らかで暖かです。

保温の為に生まれた刺繍というのはわかっていたつもりですが、羽織ってみて初めてその保温性を実感しました。

とはいえとても北国の寒さに太刀打ち出来る様な着物ではなく、この土地で生きるのがいかに厳しかったかを痛感させられました。


他にも、古くなり藍で染め直した着物や、生地が弱りこぎんを2重刺しした着物等、色々な古作を見せて頂きました。

生地を手に入れるのに苦労した時代の着物ですから、1枚の着物をいかに長く着るかで試行錯誤した様子が伺えます。


個人の展示館なので、この小さな部屋1部屋だけの展示かと思いましたが、お隣の部屋も展示室になっていました。

こちらの部屋には佐藤さんが作られた作品が並んでいます。

バッグ等がメインで、パッチワークの中にこぎんを取り入れた様な作品が多いです。

紗綾形の模様がお好きだそうで、紗綾形を刺した作品が多く見られました。

コースター等の小さな作品も多く「小さな作品なら、自分もこれなら作れるかも…って思って貰えるでしょ?」と笑顔で話して下さった佐藤さんが印象的でした。

本当にこぎんが大好きで、みんなにもこぎんを楽しんで欲しい…という真っ直ぐな意思が感じられます。

こぎんの他に、とても綺麗な色合いの糸玉等も飾られていて、そちらは菱刺しの作家さんである天羽やよいさんが草木染で染められたものだとおっしゃっていました。


最後の部屋は佐藤さんの作品の中でも大作が並ぶ部屋。

こぎん刺しの書籍等でも有名な前田セツさんからこぎんを教わった佐藤さん。

第一人者の下で活動されていたので、大作はもうそれはそれはびっくりする程の大作です。

それでもどの作品も遊び心が有るのです。

コーヒー豆が入っていた粗目の麻袋に太い毛糸でこぎんを加えた作品は、和というよりもインディアンの民族刺繍のよう。

桜の文字が浮き刺してある巨大なタペストリーは、むら染めのピンクが美しく、糸もわざと色を落として雰囲気を出したそうです。

そして特に印象に残っているのは、羽越しな布という新潟の樹皮生地に刺した作品のお話。

お店に飾られていた羽越しな布に一目惚れして、その生地を譲って頂けるようにお店に交渉したものの譲って頂く事が出来ず、織元に行って「生地は販売しない」と断られながらも、なんとか粘って手に入れた生地にこぎんを刺した作品です。

この話を伺っている時に、本当に生地や糸に対する愛が感じられて…マニア気質の私としては少し仲間意識みたいなものが湧いてきて、作品は勿論のこと、館主の佐藤さんが本当に素敵だと思いました。

しかもそこまでして手に入れたしな布は、樹皮繊維故に硬く、刺しているうちに糸が傷んできてとても刺しにくかった…というオチまでついているあたりが、とても親近感がもてます。

完璧になんでもこなせる方よりも、ちょっと失敗してしまうくらいの方の方が魅力的ですよね。


展示を拝見させて頂いたあとにはお茶まで出して頂いて、こぎんの刺し方のコツなども教えて頂きました。

菱刺しの作家さんともお知り合いのようだったので、思い切って「本当は菱刺しが見たかったのですが、どこか見られる場所を御存知ですか?」と相談してみたのですが、やはり菱刺しを見るのは難しいとのこと。

実はこぎん刺しも大々的に展示している所は今まで無くて、「こぎんを見たい」という声に応えるために、退職を期に佐藤さんが始めたのがこちらの展示館だそうです。

元々展示館をやろう…などとは考えていなかったそうで、色々試行錯誤なさっている御様子。

それでもこのように「沢山の方にこぎんを伝えていきたい」という意思の有る方が続いていけば、今後もこぎんは少しずつ形を変えながらも存続していくのでしょう。

すごく安心したと同時に、このままだと菱刺しは本当に消えてしまうのだろうな…という焦燥感も感じました。


そして最終的にこちらでは3時間もお邪魔して、こぎんを満喫させて頂きました。

今回の青森旅行の中で、こちらが最も心に残った場所になりましたし、またすぐにでも行きたい…と思える場所にもなりました。

思いつきで遠くまで行ってしまったけれど、本当に良い旅になったな…と思います。

ユートリーを後にして、まずはインターネットで検索をかけて引っ掛かった小川原湖民族博物館に電話をしてみました。
どうやら菱刺しの展示には力を入れているようなのですが…残念な事に閉館していました。

ショックでどんよりしながら、最後の頼みの綱、八戸市立博物館を目指しました。

市立博物館は不便な場所で、八戸からバスで結構揺られます。
博物館には菱前掛けが2点。

まず1点目がこちら↓

刺繍日和-博物館菱刺し1

色味は地味ですが、とても素敵な菱前掛けです。
よく見るととても沢山の菱模様が使われています。
この前掛けの図案構成パターンは、ミズフキだと思います。
ケースに入れられて、大切に保管されているところを見ると、とても貴重なものなのでしょう。

そしてこちらが2点目↓


刺繍日和-博物館菱刺し2


刺繍日和-博物館菱刺し3

私が菱刺しに惚れ込むきっかけとなった、カラフルな毛糸で刺された菱前掛けです。
構成パターンは枡刺し。
菱前掛けにしては、ちょっと色がまとまり過ぎている気がしますが…レプリカでしょうか?
もし現役で使われていた菱前掛けだとしたら、かなり後期に使われたものではないかと思います。
古い作品は所々に余り糸が使われているので、もう少し色味が乱れる気がします。
菱模様の上に赤糸と緑糸で刺されているのは、くものいがきという地刺し模様。
この模様とってもかわいいんです!
難しそうですが、刺せる様になりたいです。

博物館で観る事が出来た菱刺しはこの2点だけ。
ほんの少ししか観られなかったけれど、最終的にはこの2点(?)が今回の旅で観られた、古い菱刺し作品だったので、行った甲斐は有ったと思います。