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小さく負けて、大きく勝つ!

ネタバレ注意


● 雅也は美冬と心中しようとした


美冬に利用されていただけだったのか。憔悴しきった雅也は手製の拳銃を懐に、美冬の命を狙う。


ところが乗船場で加藤刑事に追いつめられ、雅也は一発の銃弾を加藤にぶちこんだ。と同時に銃は暴発し雅也自身も粉々になった。


このラストシーンだが意外と理解できてない人が多いようである。


銃が暴発したのは素人が作った銃だからではない。

雅也は一流の腕をもった職人である。


雅也はこの拳銃は「生涯で最高の、そして唯一のものを作り上げた。このコルトは、間違いなく自分の目的を果たしてくれるはずだ。P758」と自信満々であった。


自分の目的、そう美冬を道連れに自殺することだ。

つまり引き金を引くと銃が暴発するように作ったのだ。


美冬と運命を共にするために作った特製の銃だ。・・・中略・・・加藤の喉元に銃口を向けた。同時に自らも銃に身を寄せた。P777」


暴発するように設計されていたから銃に身を寄せたのだ。


● ドラマ版のラスト


ドラマ版では雅也は船上パーティーに潜り込めた。衣装替えのために船室に戻る美冬の後をつけ雅也も船室に入る。このシーンでテレビ観ながら船室のドアが開きっぱなしなんがすごく気になっていた。


雅也は、暴発する銃でいっしょに死のうと美冬に銃口を向ける。


美冬は命乞いするでもなく「いいわ、いっしょに死んであげる」と銃の先を喉にあてがい「撃ちなさい」と促す。


美冬との思い出を回想してなかなか引き金を引けない雅也。

船室のドアが開きっぱなしなんだが案の定加藤刑事に簡単に見つけられた。


結局、雅也は加藤ともみ合い中に引き金を引き銃が暴発、雅也と加藤の二人は死んだ。


死の直前、血だらけで床に倒れている雅也の頭を美冬は優しくなでる。

このときの雅也の安らかな表情が印象的であった。


二人の死体の横で衣装替えし、一人甲板で潮風にあたりながら美冬はつぶやいた。


「こんなに素晴らしい夜は初めて。幻みたい」


つづく

ネタバレ注意


① 新海美冬=新海美冬本人でない理由


そもそも新海美冬=新海美冬本人であるならわざわざ曽我を殺害する必要がない。


また美冬は船上パーティーの直前に加藤刑事に詰問されて苦し紛れにこう言った。

理想の女性(ホワイトナイトの社長)と出会い、何もかもその人の真似をしようと頼み込んで海外に連れて行ってもらったり、整形手術までして顔を真似た。手元に彼女の写真がないのが残念だと。


ところが曽我が美冬を探す過程でホワイトナイトの女社長と会ったとき、初対面ではないのに顔立ちが変わっていて名前を聞くまで同一人物だと気づかなかった。

美冬は整形手術を受けたというが、いったいいつの女社長の顔にそっくりなんだろうか?


第一章にも美冬=美冬本人でないことを示唆する記述がある。

美冬と雅也が車で被災地から離れるときにラジオニュースが流れた。死者の数は5千人を超えており、身元不明の死体もあるようだと伝えているところで美冬は手を伸ばし、ラジオのスイッチを切った。そして一言「あたしらにはもう関係のないことや」そういって微笑んだ。

誰かが死んだはずの人間に成りすませば身元不明の遺体がひとつできあがる。


サスペンスドラマによくありそうなベタなシーンだが、ここを読んでいてこの何気ないシーンが伏線だと気づく読者はそう多くはいまい。私は二度目読んでいて気付いた。


結論として、本物の美冬が慕っていた女社長が美冬に成りすましていると考えられる。


問題は、この女社長が唐沢雪穂かどうかである。


② 美冬=女社長=唐沢雪穂である数々のヒント


著者はずばり書いてしまうのは無粋だと言っている。だからぼかしながらヒントを散らかしている。


・ 美冬も雪穂も関西弁が使える


・ 美冬は雅也とのセックスのときに膣の中で射精することを拒む。亮司は膣の中で射精できない体になっていた。美冬=雪穂は、亮司の代替である雅也に同等のセックスを求めた。


・ 美冬は加藤刑事についてこう評した「刑事はみんな犬みたいに鼻がきくけど、中でも特別に鋭いやつがおる。あいつはそのタイプや」

過去に特別鼻がきく刑事がいた、そう笹垣のことだ。


・ 美冬はコンピュータ・ネットワークを利用した裏ビジネスに詳しい。雪穂は亮司の影響でその道に詳しいはずである。


・ 曽我殺害計画のときに美冬は青酸ガスの蘊蓄を語った。亮司が私立探偵を殺害するときに亮司から教わった知識なのであろう。


・ ホワイトナイトは以前は別の名前であり、一時は南青山を含む都内3店舗あり大阪にも進出していた。これはもうホワイトナイトはR&Yだよと言わんばかりである。

 亮司の死をきっかけに店名を変えたんだろう。


・ 本物の新海美冬が慕っていた女社長は、「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラのような人だと言っていた。

 唐沢雪穂は子供のころからスカーレットのような女性になりたいという願望があった。


これだけのヒントをちりばめながら結論は避ける。これが東野圭吾の流儀なのか。


個人的に唐沢雪穂という女に惚れたが新海美冬に感情移入できない。


まるで別人のようでもある(笑)。


亮司の死をもって雪穂の心も完全に死んでしまったのだろうか。


つづく

ネタバレ注意


もし幻夜が白夜行の続編ではなく完全な独立した小説なら、新海美冬の正体を小説内で明かさなくてはならないだろう。そこが小説のオチなのだから。


極端な話、そのオチを示さないなら主人公がわざわざ他人になりすましている設定が無意味である。

震災で出会った雅也と美冬が次々と犯行を重ねていって最後は自分が利用されていただけだと気付いた雅也が、真相を嗅ぎつけた唯一の刑事と死ぬ....これでよいではないか?なんでヒロインが他人に成りすます必要があるわけ?


美冬になりすました女性が膨大な借金を抱えている、あるいは犯罪歴があるなどなにか理由があるからわざわざ他人に成りすますわけだ。

でも小説では成りすましの理由は一切明かされないのだ。これが独立した作品ならまったくの尻切れトンボの作品である。


著者としては、美冬の正体を最後まで明かさないことで、美冬は唐沢雪穂なのではないかと読者に妄想させることに成功したわけである。


本物の美冬は勤め先のブティック「ホワイトナイト」の女社長をスカーレットのようだと慕っていた。

美冬(本物)はしばらく女社長の家に居候し、そして女社長とともに1年ほどロンドンで暮らす。


女社長はこのロンドンで整形手術を行った。自分の過去を消し、他人に成りすますためだろう。このころから新海美冬に成りすまそうと考えていたのか、それとも自分のことを心酔しきっている従順な新海美冬をパートナーとして二人で新しい人生を歩んで行こうと考えていたかは不明である。


ここで大きな疑問もある。女社長=雪穂であるなら、白夜行のラストから僅か1年ほどでR&Yが倒産し、篠塚製薬の御曹司と離婚していなければならない。

仮にバブルが弾けてR&Yが倒産したとしても、篠塚製薬の御曹司の妻であるなら何不自由なく暮らしていけるのではないか?一人の女性の人生としては大成功である。


離婚の原因は、亮司の死や実家の庭から松浦の死体が発見されたことによりことの真相を知った篠塚家から三行半を言い渡されたのか。


数々の犯罪幇助の容疑者となり、R&Yも倒産し膨大な借金を抱えた雪穂は自分の過去を完全に消すための計画を立て美冬とともにロンドンに渡った。


つづく

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今回はネタバレなし


新海美冬の正体についての詮索は少し休憩し、ドラマ版について触れておこう。


2010年11月21日よりWOWOWオリジナルドラマとして全8回にわたり放映された。


主なキャスト


新海美冬 - 深田恭子
水原雅也 - 塚本高史
岡田有子 - 市川由衣
青江真一郎 - 菊田大輔
曽我孝道 - 尾美としのり
倉田頼江 - 根岸季衣
米倉俊郎 - 岩松了
倉沢克子 - 森下千里
元刑事 - 船越英一郎(特別出演)
加藤亘 - 柴田恭兵


稀代の悪女を元アイドル深キョンが演じきった。


ドラマ観ていて私が惚れた定食屋の看板娘、有子役の市川由衣だが、ついさっきラストシンデレラの性悪女(ひろと君の元カノ)だったと気づいてびっくり仰天。

役柄によりこんなにイメージが変わるもんなのか。


水原雅也役の塚本高史はなかなか良かった。


刑事の柴田恭兵はどうだろう。白夜行の刑事、武田鉄矢のねちっこさと迫力には敵わないか。


さてドラマは原作と時代背景や震災場所を変えている。時代はドラマ放映時に合わせている。震災は関西ではなく東海地方で起こったことにしている。


白夜行と比べて幻夜は映像化しやすかっただろうね。

映像化しやすいぶん比較的原作に忠実であった。ドラマ版白夜行とえらいちがいである。


幻夜はただでさえおどろおどろしいのに、加藤刑事(柴田恭兵)の嫁はんや子供のエピソードは全く不必要だと思う。


ドラマの白夜行ははまりまくって5回観たが、幻夜は1回でおなかいっぱいである。


原作のラストシーンはしょぼかったが、ドラマは少しひねりを加えて面白くなっている。このラストは評価できる。


ドラマだからしかたないが水原雅也は早々に美冬と手を切って定食屋の娘、有子と結ばれたらいいのになあ、なんて考えてしまう。


健気な有子がかわいらしくてしょうがない。まさかこの子がラストシンデレラで憎たらしい女を演じていたとわな。


肝心の主演女優、深キョンだが難しい役柄を一生懸命演じてはるんはよくわかる。もうそれだけで十分でしょう。


私が美冬役を選ぶなら酒井のり子かな。もちろん年齢的な問題があるが、もし10歳わかければノリピーだ。彼女の方がリアルに表の顔と裏の顔を演じ分けるでしょうな。


8月18日追記

原作を忠実に再現するなら、完璧な関西弁がしゃべれる役者でなければならない。

幻夜で美冬と雅也の関西弁でのやりとりが見せ場でもあるのだ。

関西出身ということで


新海美冬・・・・・・・北川景子

水原雅也・・・・・・・大倉忠義(関ジャニ∞)


のコンビが最高だと思う。もし映画をつくるならこの二人の採用を希望する。


とにかく美冬にしろ雪穂にしろとびっきりの美女でなくてはならない。確かに綾瀬はるか、堀北真希、深田恭子は可愛いし個性的で魅力ある女優である。しかし「美人」という観点では現在20代後半の年齢で関西出身の女優では北川景子しか思い浮かばない。


つづく

ネタバレ注意


新海美冬=唐沢雪穂であるための前提条件として幻夜にでてくるホワイトナイト(訳すと白夜)というブティックは元R&Yであること。ホワイトナイトで働いていた本物の新海美冬が心酔していた女社長が唐沢雪穂であることだ。


作中ではわざわざホワイトナイトは以前は別の名前であったこと、南青山を含め都内に3店舗、大阪にも進出していたと書いてくれている。ここまで書いておきながらホワイトナイト=R&Yとの明言は避ける。憎たらしい。


もし作者がひねくれ者でなかったなら、或いは幻夜を白夜行の完全な続編として描いていたならホワイトナイトをR&Yに、主人公の名前を新海美冬ではなく浜本夏美としたはずである。だいたい美冬と夏美って夏を冬に変えただけじゃないか。

8月17日追記

 幻夜を再読した。本物の新海美冬=浜本夏美は成り立たないことに気付いた。浜本はR&Y創業時1988年からの社員であるが、新海は店名がホワイトナイトにかわってから1993年に就職している。

作者は、幻夜を白夜行の続編にしたくなかったので、これらの関連性をぼかしたわけである。

続編にしたくない理由は幻夜は幻夜として独立した作品として売りだした方が読者層が広がると考えているからであろう。

続編と公言すると白夜行を読んだ人しか本を買ってもらえない。続編ではないといいながらも続編をによわすことで白夜行ファンも白夜行をまだ読んでない人も両方をターゲットにできるわけである。

売れっ子作家は商売上手なのだ。


つづく

東野圭吾のインタビューより


「どちらから読んでもらってもいいのですが、両方読めば両方読んだなりの面白さがあると思います。ただ『白夜行』の「続編」にはしたくなかったので、『幻夜』を書くとき、そこは苦労しました。ズバリ書いてしまうのは無粋。両方を読んだ人同士でいろいろ想像して盛り上がってくれればいいな、と思っています」


以下ネタバレ注意


このインタビューでもわかるように東野圭吾は、幻夜で新海美冬を名乗る謎の女性が誰なのか故意に複数の解釈が成り立つように小説を構成した。

これは読者各々が自分なりの解釈をすればそれでよいということか。


ちゅうことは、美冬が誰なのか議論しても仕方がない。


と書いてしまえば元も子もないわけで、著者のいたずらに付き合って推理を楽しんでみよう。


まず、普通に小説を読めば二つの推理が浮かび上がる。


①新海美冬に成りすましている女性=唐沢雪穂


②新海美冬に成りすましている女性=浜本夏美


8月17日追記

幻夜を再読中である。新海美冬=浜本夏美の線は弱いと判断する。


余談だが、WOWOWドラマの幻夜ではわざわざ船越英一郎(映画版白夜行の笹垣刑事)までゲスト出演させて新海美冬=唐沢雪穂という設定にしている。


つづく