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【カイロ=中村禎一郎】イラク北部シンジャール山周辺でヤジド派の住民多数がイスラム教スンニ派過激派組織 「イスラム国」に包囲されている問題で、現地のヤジド派住民が十四日、携帯電話を通しての本紙の取材に答え、歩いて逃げることが難しい高齢者や子どもを中 心に千人以上が取り残されていると証言した。米国防総省は前日、「(米軍による)過激派への空爆が奏功し(住民の多くは)山中から脱出した」として「救出 作戦を行う可能性はほとんどない」との声明を出したが、米軍の判断にイラク国内から疑問の声が上がっている。

 シンジャール山に残るヤジド派のソライマンさん(35)は、健康な人の多くが既に徒歩で逃げたと認めながら「ここには自分の脚で避難できない人だ けが残り、渇きに苦しんでいる。足りないのは水だ。皆、物資を投下してくれる飛行機の音が聞こえてくるのを心待ちにしている」と訴えた。

 ヤジド派の記者や住民によると、シンジャール山周辺から比較的安全な地域へ避難するには丸一日以上歩く必要がある。残された住民は体力が衰え、四〇度にもなる猛暑の中で、助けがなければ数日で命を失う恐れもあるという。

 アソさん(43)は、イラク北部クルド人自治区の治安部隊「ペシュメルガ」の誘導で西隣のシリアを経由しイラクのクルド人自治区へ脱出した。だ が、歩けない親類はシンジャール山周辺にとどまっている。「山に残る人数は決して少なくない。このまま死んでもいいと言うのか」と憤った。

 一方、クルド人自治区では、米国のさらなる介入を求める声が聞かれる。自治区の最大都市アルビルのイスラム教徒ジャマールさんは「ヤジド派は平和的で、親近 感を覚える。われわれと同じクルド人だ。この危険な状況を救えるのは米国 しかいない」と話す。

 食糧や水の投下でシンジャール山周辺 の住民の状況が改善されているという米軍の声明について、バグダッド在住の政治評論家ハダド氏は「(米軍地上 部隊の投入による)救出作戦を行いたくない米国の言い訳ではないか」と指摘。「オバマ米大統領 は、救出作戦で米兵を失う事態を恐れているのだろう」と語っ た。

<ヤジド派(ヤジーディー)> クルド民族の中の少数派で、ゾロアスター教(拝火教)、キリスト教、イスラム教などが混交した独自 の宗教を信仰す る。イスラム過激派は「悪魔崇拝者」とみなし、ヤジド派殺害を命じる宗教令を出した勢力もある。イラク北部などに居住し、現地 のヤジド派指導者によると人 口は数十万規模。イラク連邦議会議員もいる。