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スコットランドは独立国家となるべきか。賛否を問う住民投票が来月行われます。投ぜられる一票には、国際社会への多くの問いかけが含まれています。

 「独立」という言葉は、民族感情を刺激する不思議な力を秘めているようです。独立支持派として知られるスコットランド出身の俳優ショーン・コネリーさんも、高揚感たっぷりに記しています。

 「この好機を逃す手はない。いかなる創作行為であれ、国家創設に勝るものはないのだから」

◆高福祉国家の理念

 イングランドとスコットランドが一七〇七年に大ブリテン連合王国を築いて三百年余。今、なぜ独立なのでしょうか。

 スコットランド民族党のサモンド自治政府首相は、昨年十一月に発表した「スコットランドの将来」と題した独立白書で「諸国家でつくる家族のなか で、独立国家としての対等な地位を回復する」ため、と端的に記しています。裏を返せば、「差別的な現状」への決別宣言に他なりません。

 北海油田の主要海域を抱えながら財源を中央政府に管理されることに象徴される経済的不満。また、地域政党として英下院議会に十分声を反映できない 政治的不満もあります。スコットランドがイングランドに抱く屈折した民族感情の歴史的由来を辿(たど)れば、十六世紀の英エリザベス一世時代の宗教対立や 十三世紀のイングランドとの独立戦争以前まで遡(さかのぼ)る必要があるでしょう。

 冷戦終結後、欧州各地で民族主義的機運が高まるなか、ブレア政権が英国の三つの地域に地方議会、政府の復活を認めたことが、大きな転換点でした。

 教育、文化、福祉政策や一定の課税権という権限移譲を受け、自治政府はきめ細かい福祉政策を進めてきました。独立白書に描かれた青写真も、北海油田から得られる財源を裏付けとした北欧型の高度福祉国家像です。

◆英国旗は変わるか

 民族自決の原則上、住民投票実施を甘受はしたものの、離脱対象とされた英国の衝撃は計り知れません。国旗のユニオンジャックから、スコットランド の象徴である白色の斜線が消えかねない事態です。アダム・スミスやデビッド・ヒュームら、英国のアイデンティティーを形成してきた思想家の伝統が失われか ねない危機感は想像に難くありません。

 仮に独立賛成が多数を占めた場合、自治政府は二〇一六年三月を独立記念日に想定、それまでに通貨としての英ポンド継承、公的債務の分担、領域内にある核基地の扱い、さらには欧州連合(EU)への加盟問題など、新国家の根幹をなす諸課題を英政府と交渉する、としています。

 キャメロン政権がこれを座視するはずはありません。スコットランド選出のダーリング元財務相を反対派の代表に立て、「独立計画は現実的裏付けを欠 くフィクション」として白書の現実性を否定。特に、金融立国として譲れない通貨問題では、ポンドの継続使用を認めない方針を繰り返し通告し、独立阻止へ圧 力を強めています。

 EU再加盟も容易ではありません。地域の独立運動を抱えるスペイン、ベルギーなど他の欧州諸国にも波及する問題です。「招かれざる客」と敬遠する加盟国は少なくありません。

 それを意識してか、さる四月、ベルギーの欧州大学院大学でサモンド氏が行った演説は、親EUを色濃く打ち出していました。「欧州嫌悪が深まる英国 にこのままでとどまれば私たちもいずれEUからの離脱を迫られる恐れがある。私たちには、欧州プロジェクトに積極的に寄与する自由があるはずだ」

 人口約五百五十万。世論調査では、独立反対派が10ポイントほどの差で終始優位を占めてきましたが、投票が近づくにつれ、差は縮まっているとの調査もあります。

 「歴史は常に予期 せぬ展開をし、われわれを驚かせる」(故ハベル・チェコ大統領)のも事実です。投票日の十八日は、十四世紀 の対イングランド戦争の戦勝記念日に当たります。「独立 」にかける民族的高揚感が、賛否 の差をはね返さないとも限りません。

◆未来見据え選択を

 最も著名なスコットランド在住者の一人、ハリー・ポッターの作者 J・K・ローリングさんは、独立反対の立場から「これは、やり直しがきく総選挙ではない。その結果の正しさを孫の世代まで説明する必要のあるものだ」と訴え、警鐘を鳴らしています。

 民主的プロセスに則(のっと)った民意の表明 は、有権者の負託に応えきれなくなった政治に対する正当な異議申し立てです。そうであればこそ、過去を向くのではなく、欧州 の未来を見据えた選択であってほしい、と願わざるをえません。