栄養整形医学実践医の今日の独り言です。

 

つい最近のお話です。

自由診療の栄養療法外来に予約が入りました。

 

患者さんは、12歳の中学生。

 

お母さんの話では・・・

 

『中学校でサッカー部に入部し、

 

”毎日楽しくてしょうがない!” 

 

と、活き活きしていた息子が

数ヶ月前からどんどん元気がなくなってきました。

 

子供に聞いても何か学校であったとか、

いじめなど、部活での人間関係のトラブルも何もないし、

サッカーが嫌になったわけでもないようです。

 

本人は、

むしろ思いっきりサッカーをしたくてしょうがないのに、

体が辛くて朝も起きられないほど元気がなくなっています。

 

食欲もなくなってきていて、

日に日に元気がなくなってきている様子を家族みんなで心配しています。

 

本当に本人が辛そうなので病院に連れて行きたかったのですが、

どこ(何科)に連れて行っていいのか分からなかったので

 

少し調べてみたら精神科が該当するようなのですが・・・

直感で ’精神科ではないな’ と感じました。

 

更に調べてみたら栄養療法があることを知って、

’息子はひょっとしたら栄養不足なのではないか’ と思い、

近くを探してみたら先生のクリニックに辿り着きました。』

 

・・・との事でした。

 

目の前に座っている中学生の息子さんは、

見るからに調子が悪そうでした。

 

事前に目を通していた問診票では、

”時々”、”ひどい”、”特にひどい”、

という項目がそこそこ目立ちました。

 

症状は、

朝の体のだるさ、

頭痛、

腹痛、

足がつる、

足が痺れる、

と様々です。

 

実は、

この様々な症状が出ているのが、

栄養不足からくる症状なのではないかと疑うヒントになります。

 

頭痛だけだったら、

腹痛だけだったら、

足が攣るだけだったら、

それぞれの専門の科に行けばいいのですが、

 

症状が多すぎたら、

今回のお母さんのように、

一体何科に連れて行けばいいのかわからなくなります。

 

そうこうしているうちに時間が経つと、

子供の元気がなくなり、

親御さんたちは見かねて精神科に連れて行くことも少なくありません。

 

実は、

ある栄養に関する書物にはこんな記載があります。

 

「全ての栄養不足は ”うつ” に繋がる」

 

そうです、

栄養不足を放置していると気分も落ち込み、

うつ状態になることもあります。

 

うつ状態になって精神科を受診したとして、

カウンセリングを受けても、

お薬を処方せれても、

うつ状態のベースが栄養不足ならば、

症状の改善にはつながらないと思います。

 

元気いっぱいだった自分の子供が急に元気がなくなって、

それがいじめや人間関係やストレスと関係がないのであれば、

心や体を元気にしてくれる ”元気の素” が足りなのかもしれないのです。

 

アンパンマンがお腹が空いて元気が出ない人に、

自分の顔をちぎって食べさせると、

それを食べた人が元気を取り戻すように、

 

元気がない子供には

”元気の素” である栄養素を摂取してもらうといいのではないでしょうか。

 

冒頭の12歳の男の子は、

私のクリニックで血液検査を行い、

それと同時に食べているものをチェックして、

食事の内容と食事の摂りかたもアドバイスしました。

 

そして、

血液検査結果の出る10日間ほどの期間に、

あらかじめセットしている子供用のサプリメントを

摂取してもらうことにしました。

 

ビタミンA ,B ,C ,D ,E ,Kに鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルです。

タンパク質は食事で肉や魚を摂ってもらいます。

 

思春期は成長期の真っ盛りで、

そのお子さんもぐんぐん背が伸びている状態でした。

 

私も、

中1から中2にかけて15cm以上も身長が伸びました。

 

こんな時に特に注意する必要があるのが、

運動部のお子さんです。

 

なぜなら、

身長を伸ばしたり身体を大きくすために

すごいペースで栄養素が使われるのに、

運動することによってさらに栄養素が消費されていくので、

 

体が小さかった時にしていたような食事では、

必ず栄養素の不足が生じてしまうからです。

 

骨や筋肉を作るのはタンパク質です。

脳内で作られる神経伝達物質もアミノ酸が必要です。

タンパク質はアミノ酸が集まって出来ています。

 

だからアミノ酸の供給源が肉や魚などのタンパク質なんです。

 

タンパク質はたくさんの種類のアミノ酸が繋がった長い鎖になっていますが、

食べたその鎖が胃の中で酵素によって細かくなって短い鎖になり、

その鎖が今度は小腸で分解されてアミノ酸になってから

体内に栄養として取り込まれます。

 

でも胃の中にある酵素も実はタンパク質なんです。

 

つまり、

タンパク質不足になっていると、

タンパク質の消化ができないということになるのです。

 

そして、

酵素の働きを助けるのが補酵素、補因子と呼ばれるもの。

それがビタミンとミネラルです。

 

Aというアミノ酸を体が利用できるようにBというアミノ酸に変えるのが、

アミノ基転移酵素いう酵素で補酵素はビタミンB6になります。

 

ビタミンB6は野菜ではなく肉(赤身)に多く含まれます。

 

骨の素はコラーゲンですが

そのコラーゲンを作るのに必要なのが 鉄 です。

 

そして、

コラーゲンを立体的に丈夫するときに必要なものが ビタミンC です。

 

リジン、プロリンというアミノ酸が

ビタミンCによって水酸化リジン、水酸化プロリンに変えられると

コラーゲンを立体的に丈夫な構造に仕上げます。

 

また、

ビタミンB6 や 鉄 は、

脳内伝達物質を作るのに必要なので、

これらが不足するとやる気がなくなり楽しくなくなります。

 

鉄 は、ATPというエネルギーを作るのにも欠かせないもので、

鉄が不足すると手足の冷えが出たり、疲れやすくなります。

 

また、

ミネラルは筋肉にとっても大事で、

カルシウムは筋肉を縮め、

マグネシウムは筋肉を緩めます。

 

足が攣るのはマグネシウム不足が原因になります。

 

ここまで読んでいただけたら、

12歳の男の子の症状の原因が

栄養素の不足なのかもしれないとわかっていただけたのではないでしょうか。

 

さて、

血液検査をしてその結果が出るまでの10日間、

サプリメントを摂取してもらった患者さんですが、

血液検査結果を聞きにきた時にはすでに元気になっていました。

 

診察室に入ってきたお母さんと患者さんに聞きました。

 

「この10日間で何か変わりましたか?」

すると、すぐにお母さんが口火を切りました。

 

『先生、すごいんです!

サプリ飲んだ次の日から体調が良くなって、もう別人のようになりました。

食欲もあるし、頭も痛くないし、だるさがなくなって、

今では朝もしっかり起きれるようになりました。

こんなにすごいなんて思いませんでした。

精神科ではないなと思って、栄養療法を選んでよかったです。

ここにきて正解でした!』

 

患者さんにも聞きました。

「調子はいいの?」

 

『はい。すごく体か楽になりました。」

 

そして、

冷静に血液検査の結果から判断できる栄養と症状の関係性について

お二人にじっくり、ゆっくり説明しました。

 

そこから患者さんに必要な

栄養素、

食事の仕方、

食事の方法、

運動の再開に向けたプラン、

そして成長期に伴う栄養の不足する理由をお話しし、

”将来は自己の管理がしっかりとできる一流のサッカー選手になってほしい”

とお話ししました。

 

すると、最後にお母さんからお話しされました。

 

『先生、実は同じサッカーチームのメンバーに、

この子のような症状の子供が何人もいて、

ほとんどの子が精神科に行っているんです。

私も受診を勧められていたのですが、ちょっと違うなと思って、

本当にこちらに来てよかったです。』

 

それを聞いて私は患者さんにお話ししました。

 

「○○くん、自分がどうやって改善したのか仲間に教えてあげてね。

そうすればチームのレベルも上がると思うよ。」

 

『はい。』

 

患者さんはニッコリと返事を返してくれました。

 

・・・・・・

 

思春期は成長期真っ盛り。

タンパク質は肉、魚、卵、大豆などの食材で美味しく確保できますが、

ミネラルやビタミン類は食材からだけでは十分摂取できないことが多いです。

 

特に思春期にサプリメントを使ってまで摂ってほしいのは、

鉄とビタミンC。

 

やはり、

骨成長を考えるとまずはその2つを考えていいのではないか、

 

整形外科医としてはそうアピールしたいと思います。

 

思春期の子供の

成長スピードに見合った栄養供給、

運動による栄養の消費を考えた栄養補給、

 

この2つを頭に入れて

子供の栄養について知っていてほしいと思います。

 

では、また。

 

 

栄養の重要性がわかる著書です。

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