栄養整形医学実践医の今日の独り言です。

 

70代男性の話。

 

10年ぶりに来院した患者さんは

すごく痩せていました。

 

『先生、

5年前に胃癌になってからどんどん痩せて、

食べても太らないんです。

 

体力が落ちてすごくだるくて、

なんとかならないかな。』

 

深刻なお願いでした。

 

まずは、

血液検査で栄養状態のチェックを行うことにしました。

 

この方は身長も高く、

かなりがっちりしていたマッチョ体型だったのですが、

 

来院時にはびっくりするほどガリガリになっていました。

 

この方の問題は ”胃がない” ことにあります。

胃がないことによって起こるのは大きく分けて2つあります。

 

胃癌で胃を切除しているために、

タンパク質の消化ができなくなっていること(①)、

それに本来なら胃粘膜から分泌される内因子が出ないことによって

ビタミンB12の吸収障害が起こってるため貧血になること(②)です。

 

胃がないのでタンパク質(長い鎖)を短くする酵素が出ないため、

タンパク質を短い鎖(ペプチド:アミノ酸のつながったもの)にできません。

 

そうなると腸から吸収できるアミノ酸が少ないため、

不足するアミノ酸を自分の筋肉を壊して取り出すことになって

筋肉が減ってしまうのです。

 

そして内因子不足よってビタミンB12欠乏になると、

丈夫な赤血球が作れなくなって溶血(赤血球が壊れること)となって

貧血になり、疲れやすくなってしまいます。

 

今回、

相談を受けたその日にそのことを説明して、

すぐにサプリメントをお勧めして摂取を始めてもらいました。

 

摂取してもらったのは、

アミノ酸とビタミンB12です。

 

体内で合成できないために必ず食事から摂取する必要のある

必須アミノ酸を摂取してもらいました。

 

胃がないので、

プロテインを飲んでも栄養にはならないからです。

 

アミノ酸は消化に必要がないため、

摂取した分は100%吸収されます。

 

それから、

貧血を治すためにビタミンB12を摂取してもらって、

丈夫な赤血球を作れる体になってもらうようにしました。

 

そのほかにはミネラルの吸収をようくするように、

ビタミンCも取ってもらうようにしました。

 

そうして、

2ヶ月ほど経ってからまた診察に来た患者さんは

 

『先生のおかげでだいぶ元気になってきたよ。』

 

と、顔色も良くなって笑顔になっていました。

 

・・・・・自分の筋肉や組織を壊してアミノ酸を取り出すのを

タンパク質の異化と言います。

 

この時、

水分子が必要になるので

体(細胞)は脱水状態になります。

肌のハリも無くなるのでこの患者さんも疲れ顔になっていたのです。

 

逆に、

アミノ酸からタンパク質を作ることを、

タンパク質の同化と言います。

 

この時は、

代謝水という水分子が作られるので脱水が取れて

体(細胞)がみずみずしくなります。

 

顔にハリが出て、

この患者さんも顔色が良くなって元気になったのは、

アミノ酸を摂取することで

タンパク質の同化がうまく行ったからだと思います。・・・・・

 

 

『癌を切ってくれた先生に言っても何もしてくれないから、

先生に相談してよかったです』

 

と患者さんから言われました。

 

外科の先生は、

患者さんの癌を治してくれましたが、

癌になった患者さんを治してはくれなかったようです。

 

私がただの整形外科医だったならば、

この患者さんから相談は受けなかったと思います。

 

自分が体調を崩してから気づいた栄養の大切さを知り、

栄養療法(オーソモレキュラー)を学んでから、

その人に起こっていることを考えていくことができるようになりました。

 

元気になった患者さんは、

今後もずっと ”胃がない”  状態が続いていきます。

 

患者さんも

そのことを受け入れて、理解して、

サプリメントを継続摂取しています。

 

癌になった自分の体の調子を保つことができている患者さんは、

また以前のように趣味の写真撮影を再開し、

近々また個展を開こうと思いますと言っていました。

 

体に必要な栄養素を、

必要なだけ摂取することで体と心の調子も良くなっていくということを、

また患者さんから学んだ気がします。

 

では、また。

 

体に大事な栄養の話。

書籍にも書いてありますので、ぜひ読んでください。