栄養療法実践整形外科医の今日の独り言です。

ある日の午前中、
診察受付時間を過ぎて来院した40代女性。

"左ももが痛くて歩けない"
と左脚を引きずって来院しました。

前日の夕方から事務仕事で座っていたら
左の太ももが痛いなーと感じていて、
夜になってだんだん痛くなり
来院直前には激痛になったとのこと。

歩く姿は本当に痛そうでした。

左股関節の変形か石灰沈着症かなと考えて
まずはX線検査をしましたが、異常なし。

次に左股関節の超音波検査をしましたが、
軟部病変なく血管やリンパ節も異常なし。

腰椎椎間板ヘルニアによる
神経症状の所見もなし。

仰向けに寝ていると痛まず、
左股関節を曲げると少し痛み、
立ち上がり動作では痛みが強くなり、
立って歩かせると痛くてしょうがない。

診断がつかない
なぞの痛みです。

普通ならば、
痛み止めと湿布を出して安静を指示して
帰ってもらうしか打つ手なし、

そんな整形外科医泣かせの痛みでした。

しかし、
この痛みから解放してあげたい。

また肩こりも強いといいます。

こうなると原因を調べるために
いろいろと問診をしていくしかありません。

痛くなる前に身体を沢山動かしたか?
-No-

どこかにぶつけたりしていないか?
-No-

朝は何を食べているか?
昼は?
夜は?
-糖質過剰、低タンパク質食でした-

仕事は楽しいか?
-事務職だけど、接客もあります。
常に緊張して働いています。-

         ⁉️

これが原因かも知れない
と思いました。

緊張から来るストレスで
交感神経が興奮して闘いモードに入り、
筋緊張が強くなり
肩こりや左太ももが痛くなったのかも。

そうお話ししたら、
「休みの日にも
会社から電話がかかってくることもあって、
やはりストレスが原因ですか?」
と患者さんが何気なく話されました。

やはりこの痛みは、
痛み止めが効きそうもないタイプかも。

このタイプの痛みには
PAPT療法が功を奏すると思いました。

『痛み止めや湿布は
効果が出るのに少し時間がかかります。
鍼を使ったPAPT療法がありますが、
試してみますか?』

「はい。痛いのでお願いします。」

という訳で、

まず両手を取り合谷を触ると
左がコリコリで痛みがありました。

左の首診をしたら、
小腸、胃、頸椎、胸椎、腰椎に反応あり。

交感神経の興奮で
胃腸機能が落ちているのかなと推測。

左Y〜ポイントの胃、小腸に刺鍼して
再び首診をすると反応は消失。

そして、頸椎、胸椎、腰椎に頭鍼、
左股関節、左肩部分にも頭鍼、
再び首診をすると反応が消えていました。

『痛みはどうですか?
歩いてみて下さい。』

「あっ!あれ?歩けます!
まだチョットここ(左股)が痛いけど、
さっきと全然違います。」

『左肩はどうですか?』

「(左肩をグルグル回して)
あっ!大丈夫です。」

『よかったです。
この鍼治療は即効性なんです。
でも不思議でしょう?』

「嘘みたいです。
本当に痛くない。
ありがとうございます!」

とは言え、
また筋肉は緊張してくるので、
お薬と湿布は出しました。

PAPT療法は臨床的には大変効果的です。

ギックリ腰、
首の寝違え、
肩、膝、踵の痛みや
バネ指、腱鞘炎、
頭痛、肩こりなど
いろいろな痛みにPAPT療法は応用可能。

PAPT療法を学ぶ機会に恵まれた私は
臨床の幅が大変広がりました。

外来でのPAPTは
頭と左耳周囲に鍼を刺されたまま30分間
待合室のベンチに座っていてもらいます。

あなたも鍼をしたの?
わたしもよ。

患者さんの間で
そんな会話が自然に生まれる待合室です。

PAPT療法に副作用はありません。

まだまだ認知されない
日本発祥の優れた治療法です。

痛みや痺れで困っている人のために
栄養療法と共に広まって欲しい治療法です。

では、また!