栄養療法実践整形外科医の今日の独り言です。

80代の男性のお話です。

"腰痛と両脚が痺れて痛い"  
とやって来たのは1か月前。

レントゲンでは
腰椎の変形がありましたが、

なぜ痛みや痺れがあるのか
ちょっとわかりませんでした。

痩せていて、
全体に筋肉が落ちています。

両大腿部を触ると
                  太ももが凄く細い。

顔色はあまり良くありません。

『お食事はしっかり摂れていますか?』

"バナナや野菜を食べていますが、
             あまり沢山は食べられません。"

『凄く筋肉が落ちていますよ。
                  お肉は食べていますか?』

"最近、食べていません。"

『お肉食べないと元気になりませんよ。』

"はい。頑張って食べてみます。
でも先生、
この痛みはなんとかなりませんか?
注射打ってくれませんか?"

『ピンポイントで痛いところがあれば注射の効果がありますが、腰から下が全部痛いので、残念ながら注射は効かないと思います。ちょっと手を出して下さい。』

左合谷に反応あり!

『注射は打てませんが、腰のツボが反応していますから、鍼治療なら効果がありそうですが、やってみますか?頭に腰のツボがあるので、頭に鍼を刺すんですが、やってみますか?』

"お願いします。"

PAPTのポイントに鍼を刺しました。
1、2、3、4、5、
全部で5本。

『どうですか?立ってみて下さい。』

"あっ、ちょっと腰が楽です。"

『では、
このままで30分位座っていて下さい。
後で鍼は抜きますね。

それに、筋力が低下していますし、
リハビリをしましょう。

身体の状態も調べるために
血液検査もしましょう。

まずは治療しながら
原因をしっかりさせましょう。』

"はい。よろしくお願いします。"


というわけで、
           リハビリを開始しました。

数日後、

患者さんは
苦痛そうな表情でやって来ました。

リハビリをしたけど全く痛みが取れず、
身体のあちこちに痛みがあり、
食事も摂れずに夜も眠れない、

との事。

この話を聞いて、
私はすぐに患者さんにお話ししました。

『点滴で栄養補給しましょう!』

食事が摂れずに栄養不足。
痛みと不眠で大きなストレス。
顔は苦痛そのもの。

こんな患者さんに私は、
栄養を摂らないとダメですよ、
なんて言えません。

食べられないんですから、
食べられるようにしてあげなければなりません。

"点滴ですか?"

『そうです。まずは、栄養補給です。
元気になるために点滴です。』

アミノ酸、
ビタミンC、
マグネシウム、

これらを点滴しました。

激痛がちょっと和らいで
お帰りになりました。

更に数日後、

"先生、
身体中が痛くてリハビリも辛いです。"

と、またやって来ました。

まだ食事が出来ないとの事。
その日は血液検査の結果が出ていました。

タンパク質不足!
タンパク質代謝不良!
ビタミンB群不足というより欠乏!
筋肉量は少ない!
鉄や亜鉛などのミネラルも不足!

また、点滴しました。

アミノ酸、
ビタミンB群、
パントテン酸、ビタミンB12を追加し、
ビタミンCを多目、
マグネシウム多目、

アミノ酸+マイヤーズカクテル
の点滴をしました。

点滴後、
前回とは見違える程の反応の良さ。

顔色が良くなって、
完全に痛みが取れて、
笑顔の患者さんがソファーに座っていました。

『どうですか?』

"凄く楽です。
        身体が凄く軽くなりました。ニコニコ"

患者さん、ニコニコです。

私も笑顔で

『よかった、よかった。』照れ

この患者さんには
結局痛み止めを使いませんでした。

初診で痛み止めを出さなかったのは、
栄養が悪すぎて
           いい事が起こらないだろう
と思ったからです。

まずは栄養を摂って欲しかったんです。

しかし、食べられなかった。

だから、
強制的栄養療法をしました。

栄養療法の基本は、
腸を介した栄養補給です。

しかし、
時には腸を使わない栄養療法も必要です。

点滴はもう一つの栄養療法なんです。

栄養補給が必要な方には
栄養が必要なんですが、

食べられるか食べられないかで
栄養療法の方法は変わります。

患者さんによって、
栄養補給の方法を変える。

必要な時に、
必要な方法を使いこなす。

必要な栄養を
必要な量摂取しなければ、
ヒトの病的状態は改善できません。

これも
栄養療法実践整形外科医の
大事な仕事です。

さて、
また明日も頑張ろう!


では、また!