埼玉県 北本市 大友外科整形外科の
栄養療法実践整形外科医の今日の独り言です。

ヒトの身体の中で
1番多いミネラルって何だと思いますか?

カルシウムです。

ヒトの身体を支える骨に
貯蔵されているのですから当然ですね。

では1番多い微量ミネラルって何ですか?

鉄です。

身体のいろいろなところで利用されている
1番大切な微量ミネラルなんです。

逆にいえば、
1番不足しやすい微量ミネラルなんです。

鉄の次に多い微量ミネラルは?

亜鉛です。

しかし、
カルシウムも亜鉛も
日本人には不足しています。

つまり、
鉄も足りていないということです。

しかも、
圧倒的にです。

地球の中心には鉄の塊があるというのに、
ヒトは鉄不足なんです。

鉄が不足したら、
多彩な症状が出ますよね。

おさらいしましょう。

鉄が不足すると以下のような症状が出ます。

           動悸、めまい、肩こり、頭痛、

            皮膚、爪、髪の毛、粘膜のトラブル、

            あざ、歯茎の出血、抜け毛など。

            氷を好んで食べる。

また、精神発達にとっても重要な栄養素なので以下のような症状も出ます。

           注意力の低下、イライラ感、

           食欲不振、

            抑うつ感。

当てはまるものがありましたか?

鉄、
亜鉛、
カルシウム、

このうちで
あなたが日常的に
よく摂るようにしているミネラルは?

多分、
カルシウムではないですか?

私は整形外科医ですから、
診察時に患者さんから

"カルシウムはよく摂っています。"

という声をよく聞きますが、

"鉄を摂っています。"
または
"亜鉛を摂っています。"
という声は全く聞かれません。

逆にこう聞かれます。

"鉄は何を摂ればいいんですか?"

"亜鉛って何に多いんですか?"

私の答えは2つ。
①食事なら、赤身肉かレバー。
②効果的なのは、サプリメント。

しかも、
ヒトの身体に利用されやすく
デザインされたサプリメントです。

鉄、亜鉛は
同じような食べ物に含まれています。

質の良いサプリメントで
しっかり鉄を摂れば、

肉は鶏肉、豚肉でいいんです。

嫌いなレバーも食べなくていいんです。

食事だけで鉄を入れるなら、
焼き鳥のレバーなら毎日3本以上。

しかし、

                考えて下さい。


鉄が足りない方は、
今まで鉄の多い食事を
食べてこなかった方です。

10代なら10数年間、
20代なら20数年間、
30代なら、、、
、、、
70代なら70数年間も、
鉄を摂らないで来た訳です。

10数年間鉄が足りなかった人が、
食事だけで鉄を満たそうとしたら、

毎日焼き鳥のレバー3本以上食べれば
早めに鉄は満たされるかもしれません。
多分、数ヶ月で。

20数年間鉄が足りなかった人が、
食事だけで鉄を満たそうとしたら、

毎日焼き鳥レバー3本以上食べたとしても
鉄はなかなか満たされないでしょう。
多分、年単位でしょう。

30代、40代の人も同じ。

しかし、50代半ば以上の方は、
20〜40代の方達よりは
鉄は早く満たされやすいでしょう。

鉄不足は女性に多いのですが、
理由は生理があるからです。

10代から50代までは、

女性は定期的に毎月決まった量の鉄を
生理と言う形で勝手に出て行くんです。

10代で生理がないうちは、
あまり鉄は身体の外には出ません。

50代で閉経したら、
もう定期的に鉄は外には出ません。

だから、
生理のまだない10代以下と、
生理がなくなった50代半ば以降の方は、
鉄が貯まりやすいといえます。

こう考えたら、女性が

"食事だけで鉄を蓄えるのがいかに難しいか"

を理解していただけるかと思います。



さて、

ここからが大事です。



食事やサプリメントで充分に鉄が摂れたら、

つまり

鉄が足りたら、

どうなると思いますか。

さっき出てきた
           自覚症状が無くなるんです。

               とにかく心身が楽になります。

しかし、
これでは本当に足りたか判りません。

では客観的には、
どんな時に鉄が足りたと判断するのか。

血液検査です。

貧血の検査は、
Hbだけで判断されがちです。

以前数回に分けて
blogで鉄の話をしてきました。

鉄が足りているかだけでなく、
鉄が身体でちゃんと使われているのか、
これをしっかり判断する手段が、
血液検査なんです。

白血球数、赤血球数、
Hb、Ht、MCV、MCH、MCHC、

通常はこれだけで 貧血 を見ようとします。

しかし、
私はこの他に

網赤血球数、血清鉄、UIBC、フェリチン、

もチェックします。

更には、
タンパク質代謝や、
ビタミンB6、亜鉛の過不足が
わかるような項目も追加します。

こうすると最早私の血液検査項目は、
ただの貧血検査ではなくなります。

鉄不足を見抜く検査になり、
更に鉄が吸収されないのか、
吸収されても使えないのか、
出血しているのか、
壊れている(溶血している)のか、
血液が作れないのか、
鉄欠乏の原因を推測する検査になります。

ここで注意が必要な検査項目があります。

フェリチンです。

間違ってはいないけど、
正しくない情報が出回っているからです。

フェリチンが低いのは、
貯蔵鉄の欠乏です。

症状として
鉄欠乏の多彩な症状が出ます。

だから、
鉄剤や
サプリメントによる治療をします。

治療をすれば、
鉄欠乏の症状が改善して、
フェリチン値が上がって来ます。

しかし、
治療によっては、
鉄欠乏の症状が改善しないのに、
フェリチン値が上がって来ます。

後者の場合には、
逆に体調が悪くなる事もあります。

ということは、
フェリチン値が上がる事は、
必ずしも
貯蔵鉄が満たされた
とは言えないんだという事です。

つまり、
フェリチン値が上がったら、
鉄が足りて来た証拠でなないんです。

鉄の代謝は単純ではなく、
治療でフェリチンが上がればいいとか、
フェリチンが上がれば
         治療が上手くいっている!
ではないんです。

鉄の代謝を理解していないと、
フェリチン値の本当の意味は
理解できないと思います。

鉄欠乏の症状の改善がないのに、
フェリチンだけが上がっていたら、

今の治療を続けていいのかどうか、
是非栄養療法実践医に相談して下さい。

フェリチンのひとり歩き、

どこまで行くのやら?

では、また。