埼玉県 北本市 大友外科整形外科の
栄養療法実践整形外科医の今日の独り言です。

14歳の女子中学生。
バスケ部です。

問診には ”腰痛” とありました。

身体は華奢で
あまり筋肉はついていません。

診察では、
腰を前に曲げると痛みなし
ですが、
腰を後ろに反ると ”痛い”。

痛い場所を触診して、
押して痛い所を探してみると

腰のど真ん中、
つまり棘上靭帯の痛みでした。

腰のど真ん中を触ると骨がありますが、
その骨を棘突起といいます。

棘突起の上に
ベルトのように繋がっているのが
棘上靭帯です。

詳しく診ていくと、
この子の腰痛の原因は
棘上靭帯のトラブルだとわかります。

外傷があって
靭帯が切れた訳ではないのに、

ではなぜ痛いのか?

栄養療法実践整形外科医の私は、
靭帯を分子レベルに遡って考えます。

臨床から生化学へ頭を切り替えて、
さらに分子栄養学の考えで
腰痛の治療法を考えます。

臨床だけでこの子の腰痛を診ると、
レントゲンで問題なし、
神経症状なし、
痛み止めや湿布を出して終わりです。

しかし、
これではこの子の腰痛は治せません。

では今回、
私はどういう治療をしたでしょうか?

この子の腰痛の原因が、
棘上靭帯のトラブルだと診断しました。

靭帯はコラーゲン線維の集まりです。
コラーゲン線維は何でできていたか?

タンパク質、
鉄、
ビタミンC、

でしたね。

日々の食生活がしっかりできていれば、

つまり

タンパク質、
鉄、
ビタミンCがしっかり摂取できていれば、

部活で使いすぎて、
ちょっと壊れたコラーゲン線維を
寝ている間に修復できるのですが、

栄養が不十分なら
壊れたものを治し切れません。

わかりやすく解説してみましょう。

棘上靭帯の元気指数を10としましょう。

全部で10あれば痛まないとすれば、

部活を頑張るといつも1だけ減ります。

10 - 1 = 9 

棘上靭帯の元気指数は 9 になります。

タンパク質、
鉄、
ビタミンC、

が新しいコラーゲン線維を作って、
寝ている間に 9 + 1 = 10 と修復します。

ある日、体育がありました。
その日は部活もありました。

体育で 1、
部活で 1、
その日は 10 - (1 + 1)= 8

元気指数は 8 になりました。

しかし、
この子は十分な

タンパク質、
鉄、
ビタミンC、

を持っていないので、

1日に 1 の回復しかできません。

すると、

8 + 1 = 9

になり、
腰に違和感を感じるようになります。

さらに、
試合が近いので
バスケ部の練習がちょっときつくなりました。

元気指数は 1.5減るようになりました。

しかし、
前回元気指数は 9 までしか回復していません。

今回は、9 - 1.5 = 7.5 になりました。

しかし、1日に 1 しか回復でかないので、
翌朝の元気指数は

7.5 + 1  = 8.5

なんだか、
腰にいつも張りを感じるようになりました。

更に翌日、また体育がありました。

体育1、
きつい部活で 1.5、

元気指数は 8.5 - (1 + 1.5)= 6
 
回復力は 1 ですから、

6 + 1 = 7

遂に、
元気指数は 7 。

翌朝は起きるときに腰痛を感じました。

相変わらず部活はハード。

元気指数はまた 1.5 減ります。

7 - 1.5 = 5.5

回復は 1 なので、

5.5 + 1 = 6.5

朝の腰痛に加えて、
普段も腰痛を感じるようになりました。

このまま同じことをしていたら、
腰痛は治りません。

この子がやるべき事は、
元気指数を
もっと回復できるようにすることです。

その方法は、単純です。

①体育や部活を休む
②栄養を十分に補給する

運動器トラブルを抱える子供達は、
このどちらもできないでいます。

こんな子に
痛み止め、
湿布、
リハビリ、
だけでは原因を取り除けません。

しかし、
腰が痛くてきている子や親に、

”腰痛は部活を休まないからだ”
”腰痛は栄養が足りないからだ”


いきなり話したら、
2人とも怒り出します。💢

だから私はこう説明しました。

『レントゲンに異常はないね。神経も問題ないから悪い事は起こっていないね。実は腰痛は、栄養状態が悪いと起こることがあるんだけど、朝は何を食べてる?  昼は給食だけど、学校から帰ったら何か間食してる? では、夜は何を食べてる?
...なるほど。ところで〇〇ちゃん、立ちくらみまってない?...そうか。立ちくらみって、鉄が足りなくて起こるんだけど、実は腰痛も関係があるんです。今、痛がっているのは靭帯で、靭帯はコラーゲン線維から出来ていて、多分〇〇ちゃんは鉄が足りなくて、それを治せないでいると思うんだ。お顔にもニキビが増えていない?これも鉄やタンパク質が足りないと治りにくいんだよ。〇〇ちゃん、嫌かもしれないけど、血液検査で栄養の状態を調べてみない?』

本人と親に納得してもらってから
採血となりました。

『経験上の話ですが、痛み止めや湿布はあまり効きませんが、どうしますか?』

『いりません。』

『これも経験上の話ですが、ヘム鉄サプリメントを1日に1粒でいいから摂取してみませんか?意外と腰痛が取れたり、立ちくらみが良くなったりするこがいますけど、どうしますか?』

『飲ませてみたいです。』

〇〇ちゃんは、
ヘム鉄サプリメントを1日に1粒飲んでもらい、
1週間後に来てもらいました。

そして、1週間後。

『〇〇ちゃん、腰痛はどう?』

『もう無くなりました!』

『よかったねー。でも、やっぱりひどい栄養状態だったよ。』

血液検査では、
タンパク質不足、
ビタミンB群不足、
亜鉛不足、
しかも重症鉄欠乏症!

『バスケや体育すら
      やっていいレベルではありませんよ。』

今後どんなに食事や栄養や
部活の休養が大事かお話し、

食事指導を行いました。

〇〇ちゃんは言いました。
『来てよかった。』

そうしたらお母さんが、
『ヘム鉄は続けて飲ませます。次は、いつ血液検査をすればいいですか?』

3〜4ヶ月後に採血に来るように伝えました。

栄養療法実践整形外科医は、
こんな風に腰痛を考えで治療をしています。

そんな一例として、
ご参考になれば幸いです。

では、また。