埼玉県 北本市 大友外科整形外科の
栄養療法実践整形外科医の今日の独り言です。

70代の女性。

右のお尻が痛いとの事で
臀部に注射を打っていました。

湿布無効。
痛み止め無効。
腰椎には神経痛を出す所見なし。
理学療法も無効。

『先生、なんとかして下さい。』
と懇願されて、
注射を打っていました。

注射を打つと数日楽になりますとの事。

しかし、完治しません。

『〇〇さん、一度血液検査をしましょうか。』
『治るなら何でもして下さい。』
と言う事で1週間後に結果を見ました。

あっ!
総コレステロールが低過ぎる。
タンパク質が足りないのにCKが高め。
ひょっとして、
あの薬を飲んでいるのでは?

私は〇〇さんに聞きました。

『〇〇さん、コレステロールを下げるお薬を飲んでいませんか?お尻の痛みはそのせいかも知れませんよ。』
『ステントが入っているので、内科の先生から ”この薬はずっと飲まないといけない” と言われて飲んでいます。』
『減らすか、飲むのをやめてみませんか?』
『内科の先生に聞いてみます。』

後日、
〇〇さんは内科医に相談しましたが、
『やめてはいけない』
と内科の先生に言われました。

相変わらず
右のお尻への注射は続いていました。

やがて、
左のお尻にも痛みが出始め、
左にも注射を始めました。

私は注射の度に
『コレステロールを下げるお薬を減らしましょう。』と、言いましたが、

『内科の先生が減らすのはいけないと言うので、減らすのは怖いです。』

と、〇〇さんは言いました。

〇〇さん、
気持ちも落ち込んでネガティブ思考です。

コレステロールが低くなり過ぎて、
脳機能にも影響が出てきたと考えられました。

『コレステロールを下げるお薬をやめるのではなく、お尻の痛みがとれるまで少しだけ減らしましょう。お尻の痛みが強くなっているので、コレステロールのお薬が効き過ぎて、副作用が出ているんです。副作用が出たら普通はどんなお薬も中止ですよ。』

『痛みをとりたいので、お薬は減らしてみます。』

少しずつ減薬し、

やがて内服を中止したら、
本当にお尻の痛みがなくなりました。

『先生、最近楽になって来ました。』
『よかったですね。もう少ししたら、血液検査をしてみましょうね。』

注射に来なくなった〇〇さん。

数日前に久しぶりにやって来ました。

あれ?

浮かない顔をしています。

『先生、また注射して下さい。また痛みが出て来たんです。内科に行ったら、コレステロールのお薬はやめちゃダメだと怒られて、また飲んでいます。』

せっかく副作用が良くなったのに、
また ”副作用の再発” です。

副作用の治療は、
お薬の中止です。

コレステロールを下げるお薬の添付文書にこう書いてあります。

1重大な副作用
         1)横紋筋融解症 (0.01%)、ミオパチー(0.01%): 筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれ、これに伴って急性腎不全等の重篤な腎障害があらわれることがある。また、ミオパチーがあらわれることがあるので、広範な筋肉痛、筋肉圧痛や著明なCK(CPK)上昇などに注意すること。異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。

〇〇さんには、
右の臀筋から大腿後面にかけての広範な筋肉痛と両方の臀筋に筋肉圧痛がみられます。

コレステロールを下げるお薬の
重篤な副作用があります

だから私はお薬を中止するように
患者さんにアドバイスするのです。

内科の先生が
頑なに薬を飲ませ続ける理由がわかりません。

薬を中止すれば、
痛みは止まるのに、

筋肉痛、筋肉圧痛があれば、
お薬中止しなさいと書いてあるのに、

『先生、また注射をして下さい。』

患者さんにこう言わせていいのでしょうか?

痛み止めが効かない痛みをとるには、
原因を突き止めて
元を断たなくてはなりません。

皆さんは、どう思いますか?

では、また。