埼玉県 北本市 大友外科整形外科の
栄養療法実践整形外科医の今日の独り言です。

鉄の組織利用の続きと
鉄の貯蔵についての話をします。

鉄は細胞が生きるためのエネルギー
ATPを作るのに必要だと話しました。

そのほかにもいろいろなところで
鉄は利用されています。

中でも危険な鉄を見事に使いこなす
免疫細胞の鉄利用は感動すら覚えます。

今日はそこから話しますね。

フェントン反応を覚えていますか?

フリーの鉄と過酸化水素が反応した時に、
最強最悪の活性酸素である
ヒドロキシラジカルが発生してしまうと言う
ヤバイ反応でした。

私達の白血球は殺菌作用を持っていますが、
殺菌作用の中心的役割を担っているのが
実はやばいはずの活性酸素なんです。

好中球、
マクロファージ、
好酸球などの食細胞が細菌などを貪食すると、
ある酵素によって活性酸素が作られて
貪食した細菌などを攻撃します。

細胞内に鉄があると、
最終的にはフェントン反応を起こして
ヒドロキシラジカルを産生して
それで細菌などを殺しているのです。

自分を傷つけるはずのものを
逆に自分を守るものとして使っているんです。

凄くないですか?

鉄は、
吸収して運搬して細胞に届くまでは
危険な反応が起こらないように
厳重に管理されているのに、

免疫細胞は
細胞内で自ら危険な反応を起こして
身体を守るために鉄を利用するのです。

鉄が足りないと活性酸素が作れないため、
免疫力も落ちるんです。

だから私は風邪かなって思ったら、
赤身肉やレバーを沢山食べます。

鉄を増やして、
鉄を運ぶタンパク質を増やすためです。


また鉄は
身体を支える土台作りに利用されます。

身体を支える土台?

そうです、
骨や血管や皮膚を作るコラーゲン線維です。

かなり前のblogでも何回か書きましたね。

コラーゲン線維の生合成には、

タンパク質、
鉄、
ビタミンC、

が必要だと。

”アザができやすい” のは、
コラーゲン線維で出来ている血管が弱るため、

ぶつけた覚えもない位の力でも
血管壁が破れて出血するからです。

”腱鞘炎で手首が痛い” のは、
コラーゲン線維で出来ている腱が壊れて、

壊れた腱の作り変えが出来ないからです。

”カルシウムを摂っているのに骨粗鬆症だと言われる” 原因のひとつは、
タンパク質や鉄やビタミンCの不足で、

コラーゲン線維である骨が作れないからです。

くっつく土台がないと、
カルシウムをいくら摂ってもムダなんです。

肩こり、腰痛の原因のひとつにも
鉄不足が関係しています。

筋肉には
ミオグロビンというタンパク質がありますが、
このタンパク質にも鉄が必要です。

タンパク質不足、鉄不足では
ミオグロビンが減って
筋肉に酸素が回らなくなるために
肩こり、腰痛が起こります。

原因はタンパク質不足、鉄不足ですから、
痛み止めでは改善しません。

更に、
鉄不足で多く見られる症状に頭痛があります。

女性に多いのですが、
最近では子供の頭痛が増えています。

身体の中で
鉄が沢山必要なのはどこだと思いますか。

肝臓と脳です。

だから鉄が足りないと頭痛が起こるんです。

なぜ女性と子供に頭痛が多いと思いますか?

それは女性には生理があり、
毎月出血しているからですし、

子供は成長しているので、
鉄が不足状態だからです。

成長期の子供にお菓子ばかり与えずに、
是非赤身肉やレバーを食べさせて下さい。

更に
頭痛があるとテンションが下がりませんか?

脳は精神にも関係します。

今日もオーソモレキュラー.jpから引用します。

うつ ~心の不調と鉄~

プチうつなど心の不調を訴える方々が増えています。うつは鉄不足でも起こります。

以下の図は、人の心をつくる脳の神経伝達物質の流れです。例えばいちばん右のセロトニンの列について見てみます。鉄はトリプトファンが5-HTPになるときに必要です。ゆえに鉄が不足するとトリプトファンが5-HTPになれないおそれが出ます。そしてセロトニンまでいかない可能性が出てしまうのです。

心の不調を訴える方の中には、もしかしたら鉄が足りない方もいるかもしれません。

神経伝達物質の生成と鉄の関与


図のプロテインはタンパク質のことです。

タンパク質は胃酸に含まれる酵素によって、
ペプチドになります。

ペプチドは更に腸内で分解されて、
アミノ酸になって体内に吸収されます。

吸収されたアミノ酸のうち

L-グルタミン酸、
L-フェニルアラニン、
L-トリプトファン、

というアミノ酸を出発点として、

私達は様々な栄養素を使って、
脳内神経伝達物質を作っていきます。

しかし鉄が足りないと

元気が出ない、
眠れない、

などの症状がでます。

鉄が足りないと、

元気になるように
ビタミン剤だけ摂っても元気になれない、

眠れるように
睡眠薬をもらっても眠れない、

という事が起こるんです。

私達の身体には本当に鉄が必要なんです。


不調が取れて、
自覚症状が改善し、
身体のいろいろなところで鉄が満たされたら、
はじめて鉄の貯蔵が始まります。

しかし、
多くの方は鉄が貯蔵される前に

『治った!』

と鉄の摂取を辞めてしまいます。

しばらくするとまた不調が現れます。

そうするとここに2つの考えが生まれます。

ひとつは 
”また鉄が足りなくなったからまた補おう”
という考え、

もうひとつは
”やっぱり鉄を摂っても良くならないんだ”
という考え。

ここが鉄欠乏症の治療の難しいところです。

だから、
鉄欠乏症の治療には
客観的な評価法が必要なんだと思います。

何度も言いますが、
血液検査による栄養評価です。


私達が
呼吸をしているという事は、
酸素を取り入れるためです。

なんで酸素が必要なのかというと、
ミトコンドリアでATPを作るためです。

ATPを作るのに鉄は必要でしたね。

という事は、
呼吸をしている間、
つまり生きている間は鉄が必要なんです!

私達の身体の中に
一番多いミネラルが鉄である理由が
少しは理解できましたか?


私達に大切な鉄をどう補うか、
また治療をしているのに
なかなか鉄欠乏症が改善しないのはなぜか、

次からはその辺を突っ込んで話しますね。


では、また。