埼玉県 北本市 大友外科整形外科の
栄養療法実践整形外科医の今日の独り言です。

さて、
鉄の運搬のはなしから
いよいよ鉄の組織利用の話に入ります。

鉄の運び屋さんであるトランスフェリンに
受け渡されたFe+++は血清鉄となり、

鉄を必要としている細胞や組織に
供給されます。

では、
どんな細胞や組織が
鉄を必要としているのでしょうか?

実は、
身体のほとんどすべての細胞が
鉄を利用したがっています。

細胞自身が生きるために必要だからです。

細胞自身が生きるためには、
何が必要でしょうか。

ATPです。

では、
ATPはどこで作られるかというと、
細胞質とミトコンドリアでしたね。

細胞質では
解糖系によってATPは2分子作られますが、

ミトコンドリアでは電子伝達系によって
ATPはなんと36分子も作られます。

ミトコンドリアは
ATPの大量生産工場なんですが、

このATPを作るのに必要なのが
電子伝達系のチトクローム酵素なんです。

そして、
チトクローム酵素に必要なのが、鉄です!

つまり、
鉄が足りないと
ATPがうまく作れないんです!

だから、
疲れたり、
怠かったり、
気力が湧かなかったりするんです。

また、
チトクローム酵素の1つである
チトクロームP450というものは、
私達が飲んだお薬を分解してくれます。

鉄欠乏症(貧血)があると
お薬の分解ができなくなって
副作用も出やすくなります。

『人よりお薬に弱いんです。』
って言う方は、
私には
『鉄が人より足りないんです。』
って聞こえます。

『湿布にかぶれやすいんです。』
って言う方は、
私には
『鉄が足りないんです。』
って聞こえます。

さて、
トランスフェリンが運んで来た鉄は
どうやって細胞に届くのでしょうか。

ほとんどの細胞には
トランスフェリンを迎え入れるための
専用駐車場があります。

この駐車場は専門用語では受容体といいます。

だからトランスフェリン専用駐車場は、
トランスフェリン受容体と呼ばれます。

細胞は鉄がたくさん必要な時、
トランスフェリン専用駐車場を拡張して

たくさんのトラックが停められるように
準備をしますし、

逆に鉄があまり欲しくない時は、
トランスフェリン専用駐車場を縮小します。

つまり、
受容体は必要に応じて増減しています。

例えば女性が生理になったら、
子宮内膜が剥がれて出血します。

この時に起こるのが子宮での
トランスフェリン専用駐車場の拡張工事です。

巨大な駐車場に沢山のトラックが集まり、
荷台からFe+++をどんどん降ろします。

他の組織での鉄の不足が起こり、
その結果身体にいろいろな事が起こります。

鉄不足の症状

鉄が不足すると以下のような症状が出ます。

  • 動悸、めまい、肩こり、頭痛
  • 皮膚、爪、髪の毛、粘膜のトラブル
  • あざ、歯茎の出血、抜け毛など
  • 氷を好んで食べる

また、精神発達にとっても重要な栄養素なので以下のような症状も出ます。

  • 注意力の低下、イライラ感
  • 食欲不振
  • 抑うつ感
特に最後の3症状は
生理前後の女性に多く見られませんか?

ある組織に鉄が集まり過ぎて、
他の組織に鉄が足りなくなっただけでも
様々な症状が出て来るんです。

では上記のような症状が出たら、

あなたは
何科を受診しますか(受診しましたか)?

そして、
どんな治療を受けますか(受けましたか)?

動悸、めまいの薬?
肩こり、頭痛の薬?
軟膏?
止血剤?
育毛剤?
胃薬?
安定剤、向精神薬?

原因が鉄欠乏症であったなら、
お薬で果たして改善するのでしょうか?

原因が鉄欠乏症であれば、
鉄剤を出してもらいますか?

私のblog読書ならば
頭にこう浮かぶでしょう。

”ヘム鉄を摂ります!”

吸収の時に
活性酸素を作る鉄剤や非ヘム鉄ではなく、
吸収の時に
活性酸素を作らないヘム鉄を摂りましょう!

鉄欠乏症を食事で治療をするならば、
赤身の肉(牛肉、羊肉、馬肉、鴨肉、鹿肉)、
レバーを毎日食べましょう。
鶏なら砂肝、レバー、ハツを焼き鳥で!

肉が苦手な方は
是非サプリメントを毎日摂取して下さい。

まだ話は続くのですが、
かなり長くなりそうなので次回にします。

では、また。

〜ちょっとコーヒーブレイク〜
(ここでサプリメントについての注意です。
ヘム鉄のサプリメントは日本(と一部欧州の国)にしかありません!
海外ではヘム鉄が作れないため、吸収率を上げるためにキレート鉄を作っています。
逆に日本では海外で販売しているアミノ酸キレート鉄が作れません。海外のキレート鉄は確かに吸収はいいので、腸の粘膜上皮細胞にたくさんのフェリチンが貯まります。
しかし、その先に進まず、鉄は細胞や組織に運ばれないため細胞や組織で利用されません。
検査ではフェリチンだけが上がって、肝心の鉄欠乏症(貧血)が改善していない事もあります。
フェリチンが増えたからと言って、鉄が足りたと思い込まないで下さいね。
鉄は、吸収→運搬→組織利用→貯蔵で身体に満たされて来ますから、本来はフェリチンが一番最後に上がって来ます。
治療でいきなりフェリチンが上がったら、少なくとも私は ”あれっ?おかしいぞ?” と考えています。SNS情報によって起こっている”フェリチンの一人歩き”を心配しています。)