埼玉県 北本市 大友外科整形外科の
栄養療法実践整形外科医の今日の独り言です。

50代の女性。

2ヶ月前に

”胸が痛い”

と、クリニックを受診しました。

胸部レントゲンで異常なしでしたが、
左胸肋関節部よりやや外側に圧痛があります。
超音波検査をしましたが、
やはり異常なし。

BMIは18を切り、痩せ型で、
筋肉量は少なめです。

あまり肉食はしていないだろうなと予想して、
食事内容を問診しました。

やはり、赤身肉はあまり食べておらず、
レバーはなおさらです。

肉は食べても、鶏肉か豚肉。
しかも週に2〜3回位でした。

患者さんのお話を聞いた私の診立ては、

鉄欠乏症によるコラーゲン線維合成不全
だろうと予想して血液検査を実施しました。

『まずは原因を調べてから治療しましょう。』
と、検査だけにしようとしましたが、

『痛みがあるので、痛み止めを下さい。』

と、お願いされました。

         『   .....    』

私は、最近、いつもここで悩みます。

           (どうしよう...)

(痛みの原因は、
恐らく鉄欠乏症からくる
コラーゲン線維の合成不全。

炎症ではない。

だから、
ロキソニンなどの消炎鎮痛剤を出しても、
恐らくは効かないだろう。

しかし、
鎮痛剤なら効くかもしれない。

カロナールを出してみようかな?

効かないけど、
湿布も出そうかな?

でも、
タンパク質や鉄、亜鉛が足りないだろうから、
湿布かぶれが起こったらいやだな...。)

などと思いながら、私は決めました。

『...では、胃に優しい痛み止めを出しますね。』

Cox2選択阻害薬という、
胃に優しい痛み止めを出しました。

1週間後、
血液検査結果で判明したのは、

重症の鉄欠乏症でした。

肝心の痛みはと言うと...

『お薬飲んでも、痛みは変わりません。』
との事でした。

私は、
患者さんに必要な栄養と
すべき食事を指導しました。

患者さんは、
『サプリメントを飲みたいと思います。』
とのこと。

私はサプリメントでヘム鉄をお勧めしました。
推奨量は1日18mg〜36mgと処方しました。

患者さんは、
サプリメントを1日18mg飲み始めて2ヶ月、
先日、外来にお見えになりました。

患者さん:『あの胸の痛みが取れました。』

私:『良かったですね。』

患:『あと、今まで両手にしびれがあったんですが、それも無くなりました。あと、肩凝りや背中の怠さも無くなりました。』

私:『いやいや、良かったですね。』

患:『やっぱり鉄が足りなかったんですね。』

私:『体重も増えましたか?』

患:『少し太れました。』

もう2ヶ月くらいしたら血液検査をして
栄養状態を確かめる事になりました。

栄養療法をすると、
胸が痛いというアラームサインだけでなく、
私には教えてくれなかったけど鳴っていた
手のしびれ、
肩凝り、
背中の怠さ、
というアラームサインまで消えたりします。

本人が考えている以上に、
栄養素の不足は
沢山の身体の症状に関係しているのです。

さて、

明日は
どんな患者さんがやってくるのでしょうか。

どんな患者さんにも、
栄養療法実践整形外科医のやる事は同じです。

患者さんのアラームサインの原因を調べて、
アラーム解除を目指すだけです。

また書きますが、
その方法は患者さんの血液が教えてくれます。

私はそれを解析して、
素直に足りないものを患者さんに補うように
教えてあげるだけです。

その言葉を聞くか聞かないかは、
患者さん次第です。

明日も私は淡々と仕事をしたいと思います。


では、また。