埼玉県 北本市 大友外科整形外科の
栄養療法実践整形外科医の今日の独り言です。

『一度ちゃんと整形外科で診てもらうように』
と、言われて来ました。

私のクリニックは整形外科がメインです。
そう言われて受診して来る患者さんが来ます。

ほとんどが年配の方です。

問診票には、こういうふうに書いています。

”どんな症状がありますか?”

患者さんは、
腰の痛みがとれない、
足が痛い、
足が冷たい、
手がしびれる、
足がしびれるなど、
歩けない、
リハビリしたい、
整形外科で診て欲しいことしか
書いていないのが普通です。

診察前に看護師がもっと詳しく問診をして、
『足が痛い』
としか書いていないスペースを埋めてくれます。

過去にどんな病気や怪我をして、
どんな治療を受けたか、
今はどんな治療を受けているかなどが、
余白に書いてくれます。

また、
今どんな薬を飲んでいるかが大変重要なので、
内容を聞き、持参していればお薬手帳を拝見し、
『足が痛い』という状態の背景を探ります。

患者さんは、
他の先生から整形外科に行くようにと
勧められて来ていますから、
当然何らかの治療を受けています。

なぜか紹介状を持って来ることが少ないので、
患者さんの治療内容を知るのには
飲んでいるお薬を調べるのがベストなのです。

多くの患者さんが飲んでいるお薬は、
①血圧を下げるお薬
②コレステロールを下げるお薬
③血液をサラサラにするお薬
④胃酸を抑えるお薬
⑤糖尿病のお薬
⑥不眠症のお薬
が代表的です。

①〜④は、まるでセットのようによく出ている
という印象があります。
⑤が出ている方は①〜④は大体出ています。
⑥はそこそこ出ている印象があります。

さて、ここからが本題です。
今日は⑤が出ている糖尿病の方のお話です。


診察室に入って来た⑤を飲んでいる患者さんに
何が困っているのかを聞いて、
診察をしてから必ず聞くのは
まず1日の食事内容です。

そうです、
『朝は何を食べていますか?』です。

そして、
『カロリー制限を受けていませんか?』
と質問します。

大抵の糖尿病の方のお食事内容は、
『朝はパンかご飯、昼は麺類、夜はご飯は少しにして野菜を多く摂っています。』
と答えてくれます。
『カロリーは1,800kcalで、食事も指導を受けました。』と、お答えしてくれます。

そして、私はこう質問をします。
『お腹空きませんか?』
患者さんは、気まずそうに答えてくれます。

『お腹が空くので、たまにお煎餅や果物を食べたりしています。』

やっぱり。

昨日のブログでも話しましたが、
糖尿病治療中の方はカロリーが足りないのです。

さて、皆さんは自分が
1日に必要なカロリーって知っていますか?

日本医師会がサイトを持っています。
『1日に必要なカロリーについて』です。
年齢と活動量をもとに簡単に計算出来ます。
皆さんもやってみて下さい。

これによると、51歳の私は
普通に動いている状態で 2,450kcal 必要です。

じぁあ、何をどれだけ食べましょうか?

脂質だけでカロリーを摂るなら、
2,450kcal ÷ 9kcal = 272g
つまり、バターなら2箱必要です。

しかし、
バターだけではカロリーは足りますが、
栄養は偏ります。
何しろバターだけなんて食べる人はいません。

切れてるバターなら1日に3個くらいにしておきたいので、切れてるバター1個は3gとすると、
3g x 3個 x 9kcal = 81kcal
ですから、
2,450kcal - 81kcal = 2,379kcal
は、他の食材で補う必要があります。

タンパク質、糖質は 1g 当たり 4kcal でしたね。

2,379kcal ÷ 4kcal = 594g

私は、ステーキ大好きですから、
450gのステーキを食べたとします。

赤身肉はタンパク質です。

(注 : タンパク質はアミノ酸組成と調理による損失も考えなくてはなりませんが、話をわかりやすくするために、今回は細かいことは省きます。)

594g - 450g = 144g

さあ、残りをあなたなら何で摂りますか?

私は、糖質はあまり摂りたくないので
残りはやはり肉か魚か卵か納豆や豆腐、
料理なら麻婆豆腐、焼き鳥、アジの塩焼き、
このあたりで行きたいです。

デザートに果物少し、
またはプリンなんかもいいかも。

ご飯なら
お稲荷さん1個くらいでいいかなと思います。

かなり食べないと、
日本医師会の推奨するカロリーには
なかなか達しませんよ。

では、
糖尿病の方は、どう食べていると思いますか?

まず、
カロリーが高いから油は摂るな、肉は摂るな、
野菜を中心にして、
主食は必要だからご飯は200gならOK
と、食事指導を受けています。
しかも、1,800kcalなんて身体が持ちません。

ちなみに、これが典型的な糖尿病治療食です。
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この食事内容は、
まず野菜が多く、
ご飯200gにしても、
タンパク質が少ないためにはらもちが悪く、
すぐにお腹が空いて間食を摂りたくなます。
お煎餅やフルーツを食べたくなりますよね。

間食にミックスナッツやゆで卵を食べれば、
腹持ちが良くお腹が空かないのですが、
油だめ、コレステロールが上がるから卵だめ、
と食事指導を受けており、
糖尿病の方は真面目な方が多いので、
お煎餅やパンやフルーツなど、
カロリーが低いとされる物を食べてしまいます。

これが糖尿病の方がいつもお腹が減る理由です。

カロリー制限という、
食事指導の矛盾が見えてきませんか?

そもそも、どうして
糖尿病になるとカロリーを制限するのかです。

患者さんに話を聞くと、 

『食事指導を受ける前は、
好きな物を好きなだけ食べて元気』でした。

検査で糖尿病と診断された瞬間に、
薬が出て、あれはダメ、これもダメ、
痩せなさい、運動しなさいと指導され、
家族にも監視されてテンションが下がります。

やがて、
体重は落ちますが、
それは筋肉が落ちてしまったためです。

元気がなくなり、
あちこちが痛くなり、
整形外科に行くように指示されて、
私のクリニックにやって来ます。

カロリーを減らして、
筋肉が落ちて足が痛い人に、
歩きなさい、
運動しなさいなんて

患者さんは幸せでしょうか?

私はそう思いません。

食べたい物を我慢して、
言われた通りにやっているのに、
整形外科まで来る羽目になっているのですから。

整形外科医の立場からすれば、
カロリー制限食は矛盾しています。

栄養が入らないのに、
糖質が中心になっているため、
血糖値も安定しないからです。

糖尿病の患者さんが、
筋肉を落とさず、
血糖値を安定させて、
あちこちが痛くならず、
元気な身体でいるための、

栄養療法実践整形外科医から見た食事を
次回頑張って解説したいと思います。

では、また。