埼玉県 北本市 大友外科整形外科の
栄養療法実践整形外科医 大友通明です。

今日は、
栄養療法実践整形外科医らしい話をします。

70代のその女性は、
両膝の痛みで私のクリニックを受診しました。

太ももの筋肉は細く、
レントゲンを撮ると明らかな変形性膝関節症。

最近痛みが強くなり、困っていました。

しかし、
膝にはお水め溜まっておらず、
熱もありません。

なんとなく弱々しく、
食事内容を聞くと、
やはり肉はほとんど食べていませんでした。
そして、運動もできていませんでした。

まずは痛み止めなどは出さず、
栄養状態のチェックを優先して、
血液検査をしました。

湿布だけを出して、
1週間後に来院してもらいました。

そして、1週間後...

驚きの血液検査結果でした。

尿素窒素とクレアチニンが非常に高く、
腎機能障害がありました。

事情を説明し、
大きな病院の腎臓内科に紹介しました。

患者さんは、
すぐに紹介先に行ってくれました。

後日、
また私のクリニックを再診しました。

両膝痛があるため、
ヒアルロン酸注射を開始しました。

数回目の注射終了後のある時、
相談を受けました。

『先生、足がむくんで浮腫んでしょうがないんです。なんとかならないでしょうか。』
私は内科の先生に相談したのかと尋ねました。

『いえ、あの〜、聞けませんでした。なんだか聞き辛くて...』

私は困りました。

どう困ったのか。

1.内科医にちゃんと聞いた方がいいと言うか、
2.利尿剤を処方するか、
3.サプリメントを勧めるか、

この3つからどれを選択するのかで、
困ってしまいました。

今までなら、迷わず 1でした。

しかし、1を選べば、患者さんにとって2度手間。
しかも多分紹介しても、
利尿剤が処方されるか、
経過を見ましょうと言われるんだろうなー、
と思いました。

2の選択は、
初めからあまりしたくありませんでした。
患者さんの身体に良くないだろうなー、
となんとなく思ったからです。

私は、今回思い切って 3 を選択しました。

なぜなら、
*腎機能障害はあるかも知れませんが、
患者さんはしっかりと尿が出ていましたから、
腎不全ではないことがひとつ。
*クレアチニン値はあまり高過ぎず、尿素窒素が高めで、
これは腎機能障害というよりタンパク質摂取不足から来る、タンパク異化の亢進だと、最新の血液検査結果データから読んだからでした。

私は、言いました。
『水分が血管の外に漏れて、足が浮腫んでいるのだと思います。肉もあまり食べられないから、〇〇さんは自分自身の筋肉を栄養として使っていて、血液の中のタンパク質が足りていないようです。たくさん食べられないなら、サプリメントでタンパク質を補給する方法がありますが、どうしますか。それとも、お薬で余分な水分を身体の外に出しますか?』
『先生が私にいいと思う方を選んでください。』
と、患者さんに言われてしまい、
私はさらに困りました。

しかし、
私は決断しなくてはなりませんでした。

”何はともあれ、患者を傷つけてはならない。”

医療の大原則が頭に浮かんできました。

『では、〇〇さんが元気になれるように、栄養をしっかり入れたいのでサプリメントを摂って見ませんか。』
『はい、お願いします。』

私が選択したサプリメントは、
グルタチオンです。

なぜか。

患者さんは、長く肉を食べていません。
タンパク異化が亢進しているということは、
身体は含硫アミノ酸の不足状態があると考えたからです。

グルタチオン
これは、グルタミン酸、システイン、グリシンという3つのアミノ酸からできているものです。
{0746FBA7-D54C-47A2-B79B-A9976C931E20}
(Wikipediaより、引用)

この中の システイン は、分子構造中にS(硫黄)を含み、メチオニンと共に含硫アミノ酸と呼ばれましす。

タンパク質は、3次元の立体構造をとりますが、この立体構造を構成するのに必要なのが、
S-S結合です。

患者さんは、肉をあまり食べられません。
ということは、肉に多いメチオニンが食事から摂取することが困難なのです。

だから、グルタチオンを摂取してもらえると、グルタチオンがシステインを身体に供給してくれるため、身体は筋肉を壊して含硫アミノ酸を利用しなくて済むようになり、血液中にタンパク質が増えて、水分が血管外に漏れなくなって、足の浮腫みが取れていくのです。

と、栄養学セミナーで学びました。

さて、実際はどうでしょうか。

なんと1週間後、
足の浮腫みが取れたのです‼️

患者さんは大喜び。
『先生、ありがとうございます。
ありがとうございます。』

私は心から『良かったですね。』
と、喜びました。

症状がとれて、
学んだ通りのことが起こって、
自分の決断がいい結果に繋がって、
そして何よりも患者さんが笑顔になって、
良かったです。

栄養療法って、
このように臨床現場で使っていくべきものだと私が確信したキッカケを作ってくれたこのエピソードは、いつかblogに書きたかったので、
今日かけて良かったです。

この患者さんは、
今もサプリメント(グルタチオン)を継続し、
血液検査では、尿素窒素の数値が下がってきています。

多くの人がこのblogを通じて、
栄養療法を知るキッカケになってくれれば、
本望です。

では、また。