栄養療法実践整形外科医の今日の独り言です。

整形外科には、
さまざま痛みの患者さんが受診されます。


最近立て続けに同じ症状の患者さん3人を診察しました。


『原因不明の胸の痛み』


男性1人、女性2人。3人には共通点があります。


1.何ヶ月も症状が続く

2.内科や婦人科や整形外科に受診して、レントゲンやMRIや血液検査をして、異常なしと言われた

3.立ちくらみがある

4.食事は糖質が多く、レバーが嫌い


私が注目するのは、1と3と4です。

問診で分かることは明らかに貧血があること。


しかし、3人とも内科で採血をして、

『貧血なし』と医師から言われています。


そして、


『整形外科に行って下さい。』


と、言われてその通りにしました。


大きな病院でレントゲンやMRIまで撮って、

再び『異常なし』と言われたとの事。



でも、痛みがとれずに困ってしまいます。



自分で調べて、
私のクリニックのHPを観て受診しました。


私は問診から『鉄欠乏症状』があると判断して、
血液検査をしようと提案しました。


すると、

『もう、3回も検査していて、貧血はないねーと言われてます。』とのこと。


あまり栄養面からアプローチする先生は少ないということをお話しさせていただき、検査をさせてもらいました。


血液検査の結果が出るまで、一週間あるので、

『お薬や湿布は欲しいですか?』

と聞くと、

『前のところでもらったものが残っていますが、効かないので要りません。』


痛みが止めが効かない...


これもある意味でキーになる症状だと考えます。


痛み止めは多くの場合、抗炎症剤です。
炎症があれば、
それを抑えることで痛みが和らぎます。


痛み止めが効かないなら、なぜ痛いかを考えて、どんな時に痛みが強いかなどを患者さんに聞いていきます。

3人の共通点は?


ありました。


息を大きく吸うと痛かったのです。
また、腰を反らせると痛かったのです。



『肋間神経痛』


こう思いましたか?


この診断なら、私のクリニックに来る前に解決しています。


大きく息をして痛い...
腰を反らせると痛い...


関係するのは肺、肋骨などの胸郭、胸椎や胸肋関節などの骨格、あとは筋肉や神経でしょうか。

もし、それらが原因なら、これも私のクリニックに来る前に解決しています。


では、何が原因か?


答えは、       『鉄欠乏症』



鉄が足りないとなぜ胸が痛くなるのか?



みなさん、深呼吸してみましょう。
息を吸う、息を吐く。

これは横隔膜の働きです。
横隔膜が動いて、
肺を膨らませたり萎めたりして、
呼吸をしています。

横隔膜は肋骨の裏側と腰椎の前側にくっついている膜状の筋肉です。

横隔膜の中心は腱性中心といって、
筋肉ではなく伸び縮みしない膜になっています。

腱はコラーゲン線維でできています。

そして、コラーゲンは高分子のタンパク質です。

さらに、
コラーゲンの主な材料は

       1.タンパク質
       2.鉄
       3.ビタミンC

なのです。

3人の患者さんの問診で、共通点は何でしたか?


立ちくらみ → 貧血症状
糖質を好む → タンパク質不足
レバーが嫌い → 鉄不足

つまり、
コラーゲンの合成が十分にできないのです。


タンパク質を摂り、
鉄を補い、
ビタミンCを摂ると、
古くなったコラーゲンが新しく生まれ変わり、
横隔膜がしっかり伸び縮みができるようになり、
深呼吸しても、
腰を反らせても、
痛みがなくなるということになります。


問診の共通点、

1.慢性的な症状の持続  はどうして起こったか?


タンパク質、鉄、ビタミンC

といった栄養素の不足が続いていたため、
伸び縮みのしない機能を失った横隔膜が、
肋骨の裏側や腰椎の前側を身体の内側から引っ張っていたからだと思われます。


3人の患者さん、
採血結果ではやはり

鉄欠乏とタンパク質不足

がありました。


タンパク質を十分摂ることを指導し、
肉やレバーを食べることを指導しました。

男性は食事の改善でかなりよくなりました。

しかし、
女性2人はどうしてもレバーがだめで、
相談して 

ヘム鉄 をサプリメントで摂取してもらいました。

治療ができるレベルである至適量を摂ることで、2人とも2週間ほどで

『原因不明の胸の痛み』がなくなりました。


また、3人とも、立ちくらみも消えました。





世の中には、

いろんな『原因不明』の病気や症状があります。


しかし、
患者さんの訴えをよく聞いて、
身体の情報をダイレクトに教えてくれる血液検査をしっかり解析すれば、
不明の原因が見えてくることがあります。

症状改善のための扉は、
なかなか開かないこともありますが、
扉は閉まる前は開いていたわけですから、
必ずまた開けることができるはずではないでしょうか。

扉の開け方はお医者さんによって違います。

ダイナマイトで壊してしまおうとする先生、
重機を使ってこじ開けようとする先生、
錆びを落とし油をさしながら優しく開ける先生。

どの先生も扉を開けようと一所懸命でしょう。


私は、
扉が開いたら、
開いた扉がまた閉まるようなことがないように、
なぜ扉がしまったのか、
どうすれば扉が閉まらないのか、
自分で扉の管理ができるような方法を患者さんに身に付けて欲しい。


そんな思いで、毎日診察をしています。



鉄欠乏と痛みの話しがあなたの、

重い扉を開くための一助になれば幸いです。

クリニックはこちらです。
では、また。