絶望させないために、絶望させるってどういうこと。 | 植松努のブログ

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講演でしゃべりきれないことを書きます。

僕はいま、子ども達向けにお話しをしています。
その内容は、「せっかく科学が発達したよ。だからみんなは大人があきらめたことや、できなかったことができるすごい人なんだよ。」を知ってもらうことと、
「夢をかなえるためには、やったことがある人と仲良くなるのが一番だよ。やったことがない人は、出来無い理由しか教えてくれないからね。」
が大きな柱になっています。

ですが、以前、高校の先生に言われました。
「あなたの言葉を信じた子が夢を追って、でも夢が叶わなくて絶望したら、あなたは責任とれるんですか?」というものでした。
その先生は「絶望したら可愛そうだから、できもしない夢はあきらめさせた方がいい」のだそうです。
でも、夢をあきらめさせるという行為は、絶望を生みます。

僕もきっとそういう先生に教えられたのです。
「飛行機やロケットは、東大に行かないと無理だ。お前の成績でいけるわけないだろ。お前には進学なんて無理だ。馬鹿なこと考えてないで、さっさと就職を探せ!」
僕はこの言葉で絶望します。
なにせ、「成績が悪い」ことで、「未来をあきらめろ」ということは、
「変えることができない過去の点数」で「未来をあきらめる」ことです。
それは、努力しても無駄だよ、と言ってるのと同じです。

 

ダンテの神曲という詩の地獄篇には、地獄の門の描写があります。
地獄の門には、「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」と書かれています。
僕は中学生の時に神曲を読んで、この言葉に出会いました。
「地獄って学校じゃん!」って思いました。
成績(過去)で未来をあきらめさせられる世界は、地獄なのかもしれません。

大事なことは、絶望しない人を育てることだと思います。
僕は子ども達に「夢を進学や就職に限定してはいけないよ。そもそも、進学や就職は手段だからね。」という話をします。

僕は、小さい頃から飛行機やロケットを作る会社で働きたかったです。
そのために頑張りましたが、さんざん否定されました。
でも、結局はそういう仕事に就きました。夢が叶いました。
でも、「就職する」という夢が叶ってしまいました。
2~3年したら、そのあとどうしていいかわからなくなりました。
わからないけど、毎日忙しいし、それなりに楽しいし・・・
でも、ある日気がつきました。「あれ。いつまで同じ毎日を繰り返せばいいんだろ。」

僕は、就職を夢にしたのです。だから、夢が叶ったら、夢がわからなくなったのです。
きっと、そういう人はいっぱいいると思います。

いま僕は、本当の夢がわかったので、毎日が忙しいけど楽しいです。
僕の夢は、人の自信や可能性が奪われない社会を作る事です。
そのための手段はいっぱいあります。宇宙開発は手段の一つに過ぎません。

夢はぼんやりしていていいです。
世界を平和にしたい!とか、
みんなを笑顔にしたい!とか、
知らないことを知りたい!とか、どれも立派な夢です。
そのための手段はいっぱいあります。
いっぱいあるからこそ、1つや2つうまくいかなくたって平気です。
違う道をとおって行けばいいだけです。
絶望などしなくていいのです。

大人が、子ども達の夢を進学や就職に限定し、しかも、1つに集中せよ!と言って、
一個しか選べず、おまけに成績でジャッジされます。
これでは、絶望の道をまっしぐらです。

お昼ご飯に、あの店で食べよう!って決めて行ってみたら、
その店が定休日だったとします。そりゃあがっかりするでしょう。
でも、絶望はしなくていいです。

ちがう店で食べればいいだけです。もっとおいしいものに出会えるかもしれません。

旅行に行くときに、「この道を通っていこう」と計画したとします。
その道が工事で通行止めだったとしても、絶望はしないでしょう。
他の道を通ればいいだけです。もっとすてきな景色に会えるかもしれません。

手段を目的化して、しかも一個にしてしまうから、絶望するのです。

目的を達成するために、あの手この手を駆使することを知っていれば、絶望などしません。
そういう人を育てた方がいいです。

やったことがない人や、あきらめた人は、出来無い理由とあきらめ方しか教えてくれません。
そういう人の憶測の否定や禁止は無視していいです。
大事なのは、現在進行形でやっている人や、成果を上げた人の話を聞くことです。

僕が子どものころ、まわりのリアルな大人は「出来無い理由」しか教えてくれませんでした。
でも、伝記の人達は「こうやったらできるよ」と教えてくれました。
リアルな大人は、なんの成果も上げていませんでした。
伝記の人達は、素晴らしい成果を上げています。
どう考えても、伝記の人達の方が信じるに値します。
僕は、伝記の人達のおかげで、絶望しない人生に気がつけたのだと思います。

だから、漫画でもいいから、伝記を読んで欲しいです。
いろんなあきらめなかった人の人生を知って欲しいです。
それだけで、絶望しない人生になります。

ともに頑張っていきましょう!