「みんなおなじ」という教育は人の成長にマイナスになると思う。 | 植松努のブログ

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講演でしゃべりきれないことを書きます。

この世には、同じ人間はいません。
みんな違います。
特に、年齢が若い内は、半年の違いでも大きな能力的な差になります。
僕の子達は早生まれだったので、ちょっとかわいそうに思えるケースもありました。
そんなときは、「人生を1年得してるんだよ」と言ったものです。

日本の教育は、なぜか「みんなおなじ」を大事にしています。

僕の講演への先生の感想文のなかにも、
「難しくてわらからなさそうにしてる子がいました。」
というのがあります。
え?
全員が100%理解しないとダメなの?
そもそも「わかる」ってなに?
人間は全員違うから、同じ言葉でも意味の解釈が変わるから、
100%の理解なんてあり得ないのに?
それでも、全員がわかるような内容にしなくちゃダメなの?
だとしたら、ものすごく情報量を減らすしかないんだけど・・・

あ、そういうことか。
だから今の子ども向けの図鑑は、
写真や絵はものすごく綺麗だけど、
専門的な情報量がものすごく少なくなってるんだ・・・。
昔の図鑑は、後半の10%くらいが、文字だけのページになっていて、
そこには、ものすごく専門的なことが書かれていました。
全部ふりがな付きでね。

小さい頃は、絵を見て楽しくて。
成長してきたら、文字も読むようになって。
もっと成長したら、後半の専門知識も読んで・・。
その段階は、子ども達が自分で選択できたのです。
昔の図鑑は、かなり長い時間、子ども達と共にあるものでした。
ちなみに、僕の本棚には、今でも小学生のころの図鑑が並んでいます。
(僕だけか?)


よく、日本の教育は登山にたとえられます。

みんなで山を登るとき、体力のある子達は、どんどん登りたいです。
でも怒られます。
「こら、勝手に行くな!みんなが来るまで待ちなさい!」

体力のある子達は、退屈そうに待ちます。

体力のない子達は、かなり遅れて登ってきます。

みんながいるところに、やっと着いた・・・と思ったら、
「さあ!遅れてるから出発するよ!」と言われます。
体力のない子達は、休むヒマもなく、再び歩くことになります。

この方式では、大多数を占める中間くらいの能力の子達にはいいでしょうが、
標準偏差の右側と左側の子達にとっては、つらいです。

 


高度なことを学びたい子がいても、
「そこはまだ習っていないから、勝手にやるんじゃない」と怒られる事があるそうです。
習っていない漢字を使うことも許されないケースもあるそうです。
算数の解き方も、先生が教えた方法以外はバッテンになるケースもあるそうです。
なんで?

「みんなと同じ」をよしとすると、
「みんなとちがう」は、ダメになります。
そうすると、
「普通じゃない」=ダメ
「みんなができることができない」=ダメ
「あいつは空気を読まない」=ダメ
「みんな予防したのに、あいつは感染した」=ダメ

という差別が生まれちゃうんじゃないのかな?
そして、「ダメなものは、教育して正してやらないと」という発想にいたるのかも。

何度か書いていますが、
昔の戦隊ヒーローは、
(1)熱いハートのアカレンジャー

(2)クールでメカに強いアオレンジャー

(3)身が軽くて優しいミドレンジャー
(4)力持ちでちょっとドジなキレンジャー
(5)科学に強いモモレンジャー
というように、キャラが明確にちがっていました。
サイボーグ009に至っては、9人全員ばらばらの個性です。
その人達が、力を合わせて問題に立ち向かっていました。

能力を表す10点満点のレーダーチャートがあるとします。
オール5の人を、10人集めても、5の能力の仕事が10人分できるだけです。
それは、ロボットがいなかった頃の大量生産時代には最適だったでしょう。
言われたことを言われたとおりにやる仕事では、「質」の向上など必要ありません。
大事なのは「量」です。
これは、「質より量」という状態です。
ドズル・ザビさまもおっしゃっていました。
「戦いは数だよ!兄貴!」
これは、人や装備の成長を期待せず、

単なる消耗品として考えなければいけない「戦」なら重要なことでしょう。
(そういう会社もあるねえ)
 

それに対して、
ある項目は2とか3だけど、この項目だけは10、という人達を、
バランスよく10人集めたら、そのグループは10の仕事ができます。
仕事の量は10人分にならないけど、問題を克服できる能力は高いです。
これは「量より質」という状態でしょう。
しかも、この方法だと、低い能力は高い能力に引っ張られます。成長できます。
これでは、物量がものを言う「戦い」には勝てないかもしれません。

でもね、この能力があれば、戦わない道を探すことができる気がするよ。

 

これからは、まずは子ども達の伸びる力を伸ばすように支えることが大事です。
そのときには、先生が特別な知識を学んで教えなくても大丈夫です。
図鑑や辞典の調べ方を教えたり、得た情報のまとめかたや、分析のしかたを
教えるだけで、あとは勝手に伸びていきます。
また、前回も書きましたが、子ども達の「好き」を増やすようなチャンスを作る事も
とても大事です。
それ以外の能力は、社会生活に本当に必要な基礎知識で十分だと思います。


僕らは今年から、専門学校の授業を受け持ちます。
そこで、僕が考える新しい教育を試していきます。
その結果が、どう出るか。
1期生が卒業する3年後が楽しみです。