以前、YKKの社長様とお話しをさせていただいたことがあります。
そのときに、「売ってるもので勝負をしてる限り、勝てない。」という話になりました。
僕は、売ってるもので勝負をすると、
自分より金持ちに必ず負ける。
後から買った人に必ず負ける。
ということを知っています。
だから、売っていないもので勝負をするしかありません。
売っていないもので勝負をするためには、「つくれる」ことが大事です。
それは、ゼロからじゃなくてもかまいません。
既製品を改造するだけでもいいです。
とにかく「売っていない」ことが条件です。
それができたら、強い競争力を持つことができます。
たとえば本屋さん。
出版社がつくった広告の張り紙と、
店員さんが手書きしたポップと、
どちらが効果的か、と言えば、
僕は、手書きのポップに目を引かれます。
旭山動物園が有名になったのは、
立派な施設が作られる前です。
職員さん達が手作りで作った動物の説明パネルが人気になり、
お客さんが増えたから、立派な施設が作られるようになったのです。
ですから、「つくる」って、ものすごく大事なことです。
それは、文章でも、絵でもかまいません。
もちろん、料理でも、編み物でもかまいません。
粘土でも、写真でも、映画でも、野菜でも、花でもかまいません。
「売っていないものを生み出す」力です。
それは、工作や、技術や、家庭科や、美術や、音楽などなどです。
しかし、いま、コロナの影響で、それらが真っ先に切り捨てられています。
なぜなら、受験にかんけいないからです。
「受験の評価対象ではないから」です。
でも、僕は、これは10年後に効いてくるボディブローだと思っています。
ただでさえ、ものづくりの力を失っている日本は、
10年後、「買うしかない」国になっているかもしれません。
しかし、それはかなり厳しいです。
なぜなら、「買うしかない」は「してもらうしかない」です。
「してもらう」ためには「対価」が必要です。
その「対価」とは、あいてに「してあげ」ないと手に入りません。
だから、「してあげる」能力が必要です。
それは、「相手が必要とすること」と同時に、「他の人にできないこと」です。
なぜなら、「他の人にもできること」だと、「価格競争」になるからです。
「他の人よりもやすく、他の人にもできることを提供する」というのは、
立派な競争力です。
でも、そのためにも、「他の人ができない価格低減の努力」が必要です。
それもまた「うみだす力」に基づいているのです。
少し前までは、日本よりも生活水準が低いからこそ、
日本から見て安価に仕事をしてくれる国が沢山ありました。
そういう国の力を利用して、日本は安価にものを提供してきました。
しかし、いまでは、それらの国も発展し、日本と同等か、それ以上の生活ができます。
ということは、もう、日本のお金をあてにする安価な労働力は得られない、ということです。
さあ、どうする?
僕は、これから10年くらいの間、日本の産業の自動化や省力化は、
当初の予想以上に進むと思っています。
ということは、それらの産業は伸びる、ということです。
でも、産業の自動化が進むと、雇用は減ります。
それを、これからの10年の間に対策するのです。
従来とはまるで違う雇用制度や、労務管理、社会保障システムが必要です。
僕は、日本向けにアレンジされたベーシックインカムという仕組みが必要だと思っています。
来年からスタートする「宇宙・ロボット学科」では、
まさに、このあとの10年を切り開く人を育成します。
宇宙やロボットの知識や技能を活かして、問題を解決する人です。
同時に、経済のことや、産業のことをしっかり知る必要があります。
そこは、僕自身が経営者として学んできたことを全力で伝えます。
この変化は、平成の真ん中あたりからはじまっていました。
それが、コロナで加速しているだけのことです。
もうすでに、新しい時代は始まっています。
子ども達は、そこを生きるのです。
それを、昭和の「普通」や「常識」で制限するのは危険です。
僕はよく、「現実を見ろ」と言われてきましたが、
いまこそ言いたい。
大人達よ。勇気を出して、つらく厳しい現実をしっかり見ろ。
そして、自分たちの経験を持って、そこに新しい道を作れ!
子ども達が、もっともっと先に進んでいけるように!
大人達よ。現実を見ろ!