京都の講演会での質問への回答8 | 植松努のブログ

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講演でしゃべりきれないことを書きます。

優しさはどうやったら身に付くのでしょう。
フラストレーションしか溜まりません。
(自分の思うとおりにならない。相手が思うように動かないなど)
相手に伝わるように伝えているつもりだけど、理解できていない。
言っても無駄だから、命令だけしてしまう。

おそらく、少し前の質問にもあった、優しさと甘えの線引きにもつながることかも。

その時も書きましたが、優しさとは、とても単純なものです。

優しさとは、

人のことを思いやれる気持ちや、人の立場になって考えられる気持ち、だと思います。

人の苦しみや悲しみや不便を見捨てないことです。


おそらく、これと、「自分の思うとおりに事を運ぶ」とは、別物です。

自分の能力には限りがあります。

だから、世の中は、自分の思うようにならないことだらけです。

その段階で、思うようにならないことに腹を立てても、何にもならないです。

 

たとえば、これから子ども達のロケットを打ち上げるよ!という段階で、

雨が降ってきたとします。

そのときに、天に拳を突き上げて、「このやろう!なにやってんだ!」って怒っても、

なんにもならないです。そんなことしてる時間は無駄です。

 

僕らは、そもそも、かなり前の段階で、雨雲レーダーを確認します。

そして、雨雲を避けられるように、打ちあげのタイミングを決めます。

どうしても避けられない場合は、雨の量と相談です。

子ども達が濡れて風邪を引かないレベルなら、雨具を使って子どもを守りながら

ロケットを打ち上げます。

どうしてもだめな場合は、打ちあげ日を変えます。

北海道の場合は、僕らが後日出向いて打ちあげします。

本州の場合は、それが難しいので、学校の先生にお願いして打ち上げてもらうか、

地域の人に打ちあげをお願いします。(それも難しいので、基本的に本州でのロケット教室は引き受けることができません。でも、最近仲間が増えてきたので安心も増えてきました。)

思うようにならないときに、
怒ったり、恨んだりするよりも、できることは沢山あります。
問題を分析して、「自分はどうしたいのかな?」「なぜそうならないのかな?」

「そうするためには、どうしたらいいのかな?」

を考えるべきです。

また、自分1人でできないから、誰かに助けを求めることもあります。

そのときには、「なぜそうしたいのか」をしっかり伝える事が大事です。

「こうしなさい!」「ああしなさい!」では、人は力を発揮してくれません。
命令の仕方によっては、反感をかって、サボタージュされます。

時には、わざと失敗されることもあるでしょう。

 

また、指示が曖昧な場合もトラブルになります。

たとえば、掃除をするときに、「ここ、ぞうきんで拭いておいて」だけだど、

指示された範囲をぞうきんでなぜるだけで作業終了と受け取る人もいます。

でも、「こういう汚れがついてる事があるから、こうやって綺麗にしてね。」と言えば、

局所的に存在する汚れを探すようになるでしょう。

 

また、今回は急いでいるから、さっと拭くだけでいいよ、という時に、

「ここ、ぞうきんで拭いておいて」とたのむと、

その人は、前回と同じように、局所的な汚れも落とそうとじっくりやってくれるでしょう。

そのときに、「なにやってんの!サッとでいいんだから!もたもたやらないで!」と怒ったら、

もうその人は、サボタージュしかしなくなるでしょう。

 

たとえば、「このネジちゃんと締めておいて」と言われたら、

どのくらい締めたらいいのかわからない人達は、

締めすぎてねじきってしまうこともあります。

指示は、具体的にすべきです。

 

誰かに何かをしてもらうとき、

それが、思ったようにならないのは、

たいていの場合、自分の説明に問題があります。

だのに、

「どうしてこんな事もできないんだ!」と怒ると、反感しか買いません。

さらには、「こいつは理解力が足りない!」「こいつは頭が悪い!」

「こいつには常識が無い!」と考えるのも、正しく状態をとらえているとは思えません。

 

まずは、自分がどうしたいのかをしっかり把握し、

それを仲間にどう伝えればいいのかを、しっかり考えるべきです。

そして、最も重要なことは、

作業を始めて、なるべく最初のうちに、自分のやって欲しいことをやってる人に、

感謝することです。

ほめるじゃないよ。

感謝です。

 

「ああ、すごく丁寧にやってくれてるね。助かるわ。ありがとう。」

「ああ、素早くやってくれてるね。助かるわ。ありがとう。」

そうすると、「ああ、こうすればいいんだ。」「ああ、この方針でいいんだ。」が

理解されて、あとは放っておいてもそれが加速していきます。

 

と、ここまで読んでいただけたらおわかりかと思いますが、

このプロセスの中には、「優しさ」の要素は、ほぼありません。

 

優しさとは、優しげな表情や、優しげな言葉や、優しげな態度ではありません。

優しさとは、怒らないとか、罰を与えないとか、命令しない、でもありません。

ていうか、そもそも、「怒る」「罰を与える」「命令」は、おそらく不要です。

 

(1)なぜそれをするのかの説明

(2)具体的な指示

(3)相手がそれを理解してくれてるときに、その方針でいいことを伝える。

ができれば、イライラすることはなくなるでしょう。

 

ただ、そもそも、たのんだ相手のパワーでも不十分で、思うようにならない、

ということもあります。
そのときに、「なんでこんな事もできないの!」と怒るのもナンセンスです。

問題を分析して、「自分はどうしたいのかな?」「なぜそうならないのかな?」

「そうするためには、どうしたらいいのかな?」

を考えるべきです。