みんなができることができないなら、みんながやったことがないことをやってみるといいよ。 | 植松努のブログ

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講演でしゃべりきれないことを書きます。

僕は小学生の頃に「連帯責任」という言葉をおぼえました。

僕がへまをすると、クラスのみんなが罰を受けます。

だから、僕は、クラスのみんなに申し訳がたちません。

すくなからずの人から嫌われます。

やがて僕は、「何かをする」ことが怖くなりました。

僕が何かをすると、誰かの迷惑になる、と思うようになってしまったのです。

なるべく、目立たないように、見つからないように、

人と関わることに怯えながら生きるようになりました。

 
同じように、団体のスポーツも恐怖でした。
僕の所にボールが来ると、だいなしになってしまいます。
だから常に、「どうかボールが来ませんように」と祈ります。
でも、そういうときに限って飛んできます。
で、僕は失敗します。みんなががっかりします。
それも、本当につらいことでした。
 
そんな僕にも、得意なことがありました。
よく飛ぶ紙飛行機を作ること。
ペーパークラフトを作ること。
水泳でもぐること(息継ぎはできない)。
自転車を整備すること。本が大好き、昆虫が大好き・・・
でもそれは、評価の対象ではありませんでしたから、
「そんなことできたって、なんにもならない!」
「くだらないことやってないで、勉強しろ!」
といわれ続けます。
 
「みんなができることが、なんでできないの?」は、
ものすごく沢山いわれた言葉です。
でも、なんでできないのかわからなかったです。
わかってれば、できてるわ。と思いました。
なんで、できないことが怒られるんだろう?
できないことをできるようにするのが、学校じゃないのかな?と思いました。
だって、活躍してるのは、いい成績なのは、もともとできる人だったり、塾に行ってる人達だったように見えたからです。
僕のような人間こそ、先生のサポートが必要なのでは?と思いましたが、体育の時間は、先生は僕を指さして笑ってました。
 
でもね、そんな日々は、大学に行って変わりました。
大学では、僕の好きなことや興味があることが、授業の内容そのものだったからです。みんなが知らないことを、僕はとっくに知っていました。だから、成績がよくなりました。
そして、僕は、自分の好きな仕事に就きました。そこでも、好きなことが認められ、僕しか知らないことが認められて、よいアウトプットにつながりました。
そしていま、僕は会社を経営しています。
そこでは、「みんなができること」がいくらできても、生き残れないことを知りました。なぜなら、「同じ」だと、比べられて、安いのがえらばれるからです。
会社を経営してみて、はじめて、「他の人ができないことができる」ことの価値に気がつきました。
(ここで注意すべき点があります。僕は、飛行機やロケットやものづくりが大好きで、小さい頃から没頭していました。莫大な量の本を読んでいました。だから、大学でも、会社でも活躍できたと思います。しかし、実際には、受験勉強しかしていないで、偏差値だけで入れる大学を決めてしまい、就職も、内容ではなく、待遇だけで選んでしまった場合は、「自分にしかできないこと」がとても少ない可能性があります。その場合は、居場所を作るのに、苦労する事になるかも知れません。)
 
これからの日本では、「みんなができること」は、ロボットがやってしまうと思います。
だから、「みんなができること」は、最低限できりゃあいいと思います。できなかったら、補う方法を考えればいいと思います。
むしろ、「自分にしかできないこと」がすごく大事です。

学校で教えることは、みんなが習います。
それは、個性にはなりません。
だからこそ、学校以外での経験が、これから重要になると思います。
いかにして、学校以外での経験を増やすのか。
これが、これからの自動化が進む日本での「必要条件」になると思います。
(ただし、僕は、中学生の頃に、山登りが好きな先生に助けてもらいました。だから、学校でも、学校以外のよい経験をすることは不可能ではないです。というか、考えて見たら、その先生と過ごした時間は、やっぱり学校の外だわ。)
 
先日のロケット教室。KMPの子ども達もスタッフとして働いています。700人以上が入る講演会の切り盛りを手伝っています。大人が大変そうにしていたら、進んで助けに行きます。
その経験は、学校では得られない経験です。それが個性です。
それは、間違いなく、「管理型教育」を卒業した後に光り輝く能力になると思います。
 
だから「みんなができることが、なんでできないんだろ?」と嘆くなら、「じゃあ、自分にしかできない事ってあるかな?自分しかしていないレアな経験ってあるかな?」を考えて見たらいいと思います。
なかなか話し相手がいない趣味とかは、間違いなく、「レアな経験」です。
それが、どんなに些細な事に思えても、それは立派な個性と経験です。それを必要としている人は、きっとどこかにいます。
 
できない自分を、責めなくていいです。
自分ができることを、リストアップしてみたらいいと思います。
なければ、今から増やしてもいいです。
たとえば、ピザを生地から作ってみるとか。
最初は失敗するかと思うけど、やってる人はけっこう少ないから、レアな経験になります。
たとえば、カツ丼作ってみる、というのもいいね。何度か失敗して、やがておいしい個性的なカツ丼になります。
カレーをスパイスから作ってみる、なんてのもいいね。
要するに、やったことがないことをやると、それは、レアな経験になる可能性が高い、ということです。
そしてそれは、自信になるから。
だから、やったことがないことをやってみたらいいよ。