極私的60~70年代日本のロック/フォークアルバムベスト25? | AFTER THE GOLD RUSH

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とおくまでゆくんだ ぼくらの好きな音楽よ――

AFTER THE GOLD RUSH-シローとブレッド&バター/ムーンライト (以下、推敲無しの乱文につき、誤字脱字、不快な表現等、ご容赦ください)
ボブ・ディランの「時代は変わる(Times They Are A-Changin)」にこういう歌詞がある。「今 先頭を走っている者が やがて 最後尾になる 時代は変わるんだ」。レコード・コレクターズ8月号の「日本のロック/フォークアルバム・ベスト100(60~70年代篇)」なる特集記事を読んで、ぼくは、そんな皮肉な歌詞を思い浮かべていた。辺境の音楽だと思っていたものが、いつのまにか“主流”になっていた。この逆転現象は、90年代半ばから顕著になった傾向であり、今さら驚く話ではないのかもしれない。でも、ぼくには、根深い、屈折した“恨み”のようなものがある。それは、かつてのメインストリームに対するルサンチマンといった方が正確かもしれない。

 

70年代末から80年代前半にかけては、逆風の時代だった。実につまらない、くだらない、湿っぽい連中が、主流派をなしていた。主流派は、いつもフォークギターにカポタストを付けて、「乾杯」や「銀の雨」を歌っていた。YMОが、細野晴臣が、主流派だったなんて、残念ながら、ぼくの周囲では見たことの無い風景だ。

 

80年代半ば、友人たちと地下に潜った。右手に持つアルバムは、時にジム・フィータスの「ホール」だったり、ジーザス&メリーチェインの「サイコ・キャンディ」だったりしたけれど、――そして、それはひときわ破壊力の大きな武器になったけれど――、左手にはいつもはっぴいえんど関連のアルバムを大切に抱えていたような気がする。でも、その左手は背中に回して他人に見せないようにしていることが多かった。それらの古いアルバムを聴いていることは、アンダーグラウンドではあまり英雄的な行為ではなかったし、かといって、街中では「風をあつめて」さえいまだ辺境であった。中途半端な時代だった。うんざりするくらい風は凪いでいた。

 

そして、あれから四半世紀が経った。今や、ぼくの左手にあった、そして、いつも背中に隠していたアルバムは、堂々とメインストリートを歩いている。正当な評価だと思う。素直に、良い時代になったと思う。でも、少しばかりの違和感も感じる。日本のフォークは、ロックは、もっと、多様で、猥雑で、歪つなものではなかったのか。少し掘り起こせば、まだ、いくつもの豊かな鉱脈に行きあたるというのに、人々はその作業を怠っているのではないのか。

 

と偉そうに書きつつ、ぼくにもその答はよく分からないので、とりあえず、極私的60~70年代日本のロック/フォークアルバムベスト25を挙げて、お茶を濁すこととする。(レコードコレクターズ誌のベスト100に入らなかったアルバムという「しばり」をかけたため、かなりいびつなものとなっている。順番は、発表年順である。)

 

1 ザ・モップス/サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン(1968年)
2 ザ・テンプターズ/5-1=0 ザ・テンプターズの世界(1969年)
3 高石友也/坊や大きくならないで:高石友也フォークアルバム第3集(1969年)
4 中川五郎/終り、はじまる(1969年)
5 V.A./第4回フォークキャンプコンサート(1969年)
6 ザ・ゴールデン・カップス/ザ・フィフス・ジェネレーション(1971年)
7 ガロ/GARO(1971年)
8 六文銭/キングサーモンのいる島(1972年)
9 シローとブレッド&バター/ムーンライト(1972年)
10 フライド・エッグ/ドクター・シーゲルのフライド・エッグ・マシーン(1972年)
11 ザ・ディランⅡ/きのうの思い出に別れをつげるんだもの(1972年)
12 休みの国/休みの国(1972年)
13 加川良/親愛なるQに捧ぐ(1972年)
14 久保田麻琴/まちぼうけ(1973年)
15 岡林信康/金色のライオン(1973年)
16 石間ヒデキ/ワン・デイ(1973年)
17 西岡恭蔵/街行き村行き(1974年)
18 ウオッカ・コリンズ/東京-ニューヨーク(1974年)
19 よしだたくろう/今はまだ人生を語らず(1974年)
20 斎藤哲夫/グッド・タイム・ミュージック(1974年)
21 センチメンタル・シティ・ロマンス/センチメンタル・シティ・ロマンス(1975年)
22 大貫妙子/Grey skies(1976年)
23 1310/中川イサト(1977年)
24 T-Bird/T-Bird(1978年)
25 遠藤賢司/幻のフォークライブ傑作集 '70 遠藤賢司リサイタル(1979年)