ダーレン・ラブと若松孝二とバロックと・・・ | AFTER THE GOLD RUSH

AFTER THE GOLD RUSH

とおくまでゆくんだ ぼくらの好きな音楽よ――

冬越えさ 季節の変り目さ
クシャミを ひとつ
話すことは 多いけど
ただ クシャミを ひとつ

A Darlene Love Anthology 1958-1998

夏以降、ぼくの生活はただただ仕事に追われるばかりで、日々ドタバタしているうちに、季節は、いつの間にか秋を通り越して冬になろうとしている。そう、今朝起きて、あまりにも寒いので、ぼくは、細野さんのこんな歌を口ずさみながら、タイミング良くも間抜けにクシャミをしたりして。うーむ、風邪をひいてしまったのかな。


「話すことは多いけど ただクシャミをひとつ」とは言い得て妙で、ぼくは、自分の好きな音楽のことを誰かに喋りたくてしょうがないのだけれど、最近はそれをうまく言葉にすることができなくて困っている。「グッときた」とか「ガツンと頭を殴られた感じ」とか、ボキャブラリーはますます貧弱でマンガチックな擬音調になっていき、そんなアホな言葉で音楽を語るくらいなら、黙って、聴くことに徹していようと思ってしまうのだ。
とはいえ、ぼくのCD棚も、リスニングスタイルも、随分と混沌としてきた。ここで自分の頭を整理する意味でも、最近購入したうちの何枚かについて書きとめておこう。

 

So Much Love: A Darlene Love Anthology 1958-1998
フィル・スペクター抜きのダーレン・ラブのアンソロジー。ブロッサムズ時代の代表曲から、ディック・デイル、デュアン・エディ、ハル・ブレインらとの極めてレアなセッション音源まで収録。と書くと、マニア向け?と敬遠されそうだが、とんでもない。ダーレンの爽やかにパンチの効いたヴォーカルを聴いているだけで、若松孝二傑作選理屈抜きで体の奥から元気が湧いてくる。それにしても、ブロッサムズの「Good, Good Lovin' 」は素晴らしすぎる。バリー・マンとシンシア・ワイルに乾杯。


若松孝二傑作選 「天使の恍惚」「新宿マッド」「腹貸し女」+特典サンプラーCD
説明するまでもなく、若松孝二監督の60年代末から70年代初頭にかけてのアングラピンク映画のサントラ集。山下洋輔トリオ、フード・ブレイン、ジャックスという申し分のないメンツによる、申し分のない、サイケでパニックに満ちた音のドキュメント。ぼくは、DU特典サンプラーCD収録のチープに歪んだ「恋はワイルド・シング」(「現代性犯罪暗黒編 ある通り魔の告白」)の唐突さに仰け反った。

 

バロック・マスターワークス バロック・マスターワークス
クラッシック門外漢のぼくが、この60枚組ボックスセットを購入したのは、5,790円という超破格値に惹かれたせいだけではない。最近、バッハやヘンデルといったバロック時代の音楽家たちに興味を持ち始めているからだ。皆川達夫氏の「バロック音楽」(講談社学術文庫)を手引きに、よちよち歩きの子供の如くゆっくりと聴き進めている。就寝前の最高のトランキライザーであり、また副作用の無い完全無敵な睡眠導入剤でもある。