そこには「猫の手ッ
」
うちのトイレはドアの下が1センチ程開けられていて
その隙間から四ツ葉が手を突っ込んで手探りで私を探しているのだ。
しかもその手は結構速いスピードで動き回り、私を探り出そうとしている。
「ガシガシッ、ガシッ
」
器用に掌を上に向け、手首をクネクネと上下しながら左右に動かし
引っ込んではまた出てくるの繰り返し。
ヤツは一体どんな体勢でこんな荒業を成しているのだろう…?
想像するだけで私の頭の中では、もはや妖怪以外の何者にも思えなかった。
「これじゃ恐ろしすぎて出られないじゃない
」
それでも、目の前で起こっている恐怖と予想外のトイレの寒さに耐えきれなくなり
私は再び脱出する決心を固めた。
「でも…今急にドアを開けたら四ツ葉の手が挟まって、血が出て…」
想像の中でその光景は悲惨な殺人現場である。
「それはマズイ。」
地獄絵図どころかそれはもう地獄でしかない。
私はスリッパを脱いで冷たくなった足先をさすりながらヤツが落ち着くのを待った。
「妖怪猫さん、いい加減改心してくれ
人間を襲っても何も楽しくないよ…」
そんな事をブツブツ言いながら、時間だけが過ぎていった。
しばらくすると、そのガシガシは収まり、いよいよ脱出するチャンスが訪れたのだが
私が鍵を開けると「ガチャ」という音に反応したのか、今度はヤツが鳴き出した。
しかもその鳴き声は「ニャー」ではなく「ゥンニャーァァァァァ~~」である。
果てしなく長~いその声は、まるで「な~にビビってんだよぅ、早く出てこいよぅ。」と
悪態ついて催促しているかの様だった。
「ひぃっ
」
こんな非常事態を招くような挑発的な音をたててしまったけれど
もちろんあまり音をたてない様に全神経を集中させたし
自分的には近年まれに見る集中力ではなかっただろうか。
「おいっ、オマエ
何やらかしてんだよぅ
」
と自分に突っ込みをいれながらも、意を決して3、2、1で飛び出す。
「・・・アレ?」
そこにヤツは居なかった。
少子抜けしながらも、恐る恐るリビングへ行くと
ヤツもモヨオシタらしくトイレタイムの真っ最中。
私はソローっとその横を通りすぎようとゆっくり歩いていたが、
「こ、この臭いは・・・」
そう。ヤツがしていたのは小ではなく大であった。
以前にも書いたが、ヤツは褒めてやらないとズット砂をかけているから
直ぐに片付けるしかないのだ。
「今は一時休戦。お願いだから噛まないでね。」
私は祈るようにヤツの頭を恐る恐るそっとなでた。
「にゃ~ぉん
」
「あ、甘えてる
ずっとこうだといいのに・・・」
体をスリスリして甘えてくる姿はとっても可愛いのになぁ・・・
こんな風に毎日が過ぎていったある日、
生涯忘れられない出来事が起こったのである。
生活5へ続く・・・
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