今回は猫の歯磨きについて書かせていただこうと思う。


いまでは、ペットの歯磨きは常識となっているが、なかなか思うようにいかないのが現実だ。


小さい頃から慣れさせると良いとも言うが、乳歯の場合、歯ブラシでゴシゴシすることにより、柔らかいエナメル質が削れ、守るべき歯を逆に痛めてしまいかねない。よって、一歳前後で、乳歯が永久歯に生え変わった頃から始めるのがベストだ。


磨き方は、基本に人間と同じで、歯と歯茎の境目に斜めにブラシを当て、軽く左右に動かす。目的は、歯垢や汚れ、食べ残しを取り除くことなので、歯の着色等は気にしなくても大丈夫だ。


汚れを取ることに一生懸命になりすぎて、力を込めすぎると、出血したり歯茎を痛めたりするので要注意だ。歯ブラシの毛が曲がるほどの力は必要ではなく、軽く当てる程度で行うのが望ましい。


我が家の兄猫も破歯細胞性吸収病巣の疑いがあるが、多発性嚢胞腎のため、全身麻酔のリスクから、手術を行えず現状できることで対応している状態だ。


破歯細胞性吸収病巣の治療法は、全身麻酔の上抜歯がスタンダードだ。最先端治療では、スーパーライザー(近赤外線)を用いた治療も行われているようだが、残念ながら、まだ、この治療を行っている病院もわずかなようだ。


そこで、我が家では、病巣以外の歯は、ペット用歯ブラシで磨き、病巣部分は、最近人間用で出ているシリコン毛の歯ブラシ(赤ちゃん用)を使い、赤くなっている病巣部分は痛みがあるので避け、他の部分を軽く磨くようにしている。


毎日、決まった時間に行なっているが、歯ブラシが結構汚れることに驚かされる。それだけ口腔内が汚れているということだ。


また、これは人間もなのだが、歯を磨く前に歯ブラシを水で濡らすと、汚れ除去力が弱まってしまうため、水で濡らさずに行った方が良い。ペットに歯磨き粉は不要。人間も本来であれば、なくても十分に汚れは除去できる(歯科医)。ただ、人の場合、爽快感等で歯磨き粉を使用したり、またフッ素の入ったものを虫歯予防的に使用する場合はあると思われる。


ペットの口腔環境が注目されたのは、口腔環境と腎機能に深い関係があるからとわかったきたからだ。


2018年に発表された論文では、進行した歯周病のある猫の場合、慢性腎臓病のリスクが1.5倍高くなると報告されており、また純血腫は混血腫よりもリスクが高くなるとも記載されており、歯周病は、腎臓の低酸素状態と炎症に寄与している可能性が指摘されている。逆に慢性腎臓病は、歯肉炎を引き起こし、歯周病を悪化させるとも言及されている。


上記論文の抜粋からも、どれだけ口腔環境を保つことが重要か理解できると思う。また、歯周病が見られた場合、同時に腎機能の検査も受けることもお勧めしたい。早期発見は、その後の猫の寿命に大きく影響を及ぼすと思われるためだ。


なかなか猫の歯磨きは、ハードルが高いかと思われがちだが、慣れてくれば、逃げはするものの、磨き始めると諦め、案外おとなしくしているものだ。我が家のニャンたちは、何故か?歯磨きよりもブラッシングが嫌いなようで、歯磨き<爪切り<ブラッシングのようだ。


長毛種なので、まめにブラッシングをしないと毛玉も出来てしまうし、毛もグルーミングで飲み込んでしまうため、歯磨きと一緒に毎日行っているが、嫌なものはイヤらしい。。。が、しかし、心を鬼にして毎日続けることに意味があるのだ。


最後に、人間と一緒で、歯ブラシにも寿命があるので、毎日磨いてる場合には、月に1度は新しい歯ブラシに交換することもお忘れなく。また使用後は、きれいに洗浄し、乾燥させて保管することが衛生的にも必要とされる。


次回→多発性嚢胞腎治療費