兄猫の尿路結石の検査に向かったサードオピニオンの病院で、最近、歯磨きすると歯から出血するのが気になり、診察をしてもらった。


結果、「猫破歯細胞性吸収病巣」という猫特有の病気であることがわかった。恥ずかしながら、子供の頃からたくさんの猫を飼ってきたものの、この病名は初めてだった。


獣医曰く、高齢になるにつれほとんどの猫がかかると言われているらしく、虫歯のように細菌感染ではないので、他の歯に移るとかもなく、症状としては痛みらしい。知らずに歯肉炎かと思い、歯磨きをしてしまっていて、大変痛い思いをさせてしまっていた。申し訳ない。


今後の歯磨きは、病巣部分の歯磨きはせずに、続けて他の部分の歯磨きを行うよう指導を受けた。


今回は、この「猫破歯細胞性吸収病巣」という病気について書かせて頂こうと思う。


<初期症状>

歯と歯肉の境目部分が赤く盛り上がり、次第に痛みを伴い歯が溶けて穴が開いてくる。また、ドライフードを食べている時に折れることもある。


<中期以降>

・口を痛そうにする

・歯をギシギシさせる

・食べ方がおかしい

・食欲が落ちる

・口周りを触らせたがらない(嫌がる)

・しきりに顔を擦ったり、口を気にする

・よだれが出る

・前足がよだれで汚れる


<間違いやすい病気>

・歯肉炎

・虫歯


<原因>

乳歯が永久歯に生え変わる時に、乳歯の付け根を壊す細胞「破歯細胞」が働くことにより、生え変わりをスムーズにしている。この細胞が、永久歯の根元部分までを壊してしまうことが原因となっている。


<診断方法>

レントゲンで、歯の中が空洞にうつることで確定診断となる。


<治療法>

全身麻酔による抜歯

しかし、この細胞が働き出した場合、次々と他の歯にも症状が現れることが多く、多くは痛みで食欲が落ちた場合に初めて積極的治療を行うようである。


また、年齢が高くなるほど罹患率も高くなっており(3歳以上の25%〜75%が罹患していると言われている。)、全身麻酔のリスクも高くなる為、よほどひどくない場合は、特に治療を施さず、他の口腔病と併発しないよう、衛生状態を保つようにし、様子見となる。


また、猫は高齢になる程、腎臓の病にも罹患しやすく、腎機能自体も低下している場合が多く、これも踏まえると、やはり全身麻酔のリスクは高くなるものと考えられる。


<対処療法>

痛みが強くなり、食事が取れないような場合、痛み止めを服用することで対応。しかし、効き目に持続性も長くなく、胃腸に負担をかけるため、長期服用は問題となる。


<予防法>

残念ながら、生まれ持った細胞によるものなので、予防法はない。確定的ではないが、ドライフードよりもウェットフードを食べている猫に、早い年齢から発症する可能性があるとも言われているが、これに関してはなんともいえないらしい。


<治癒>

歯が全て、顎の骨に吸収されてなくなってしまうと痛みもなくなる。=歯がなくなる。


<新しい治療法>

最近では、動物のがん治療で使われているところもあるようだが、スーパーライザー(近赤外線治療)が有効とされている。が、この「猫破歯細胞性吸収病巣」に対して積極的に治療に取り入れている病院は、まだ少ない。私の住む地域でも、がん治療で使用している病院でさえ2〜3件しかない。


スーパーライザーの効果は、全身麻酔なしでの治療、疼痛緩和、炎症の抑制。これにより薬剤の服用が必要となくなり(もしくは減薬)、胃腸の負担減や日常生活のQOLも上がるものと期待されている。



兄猫にも、この新治療を受けさせてあげたく、通える範囲の病院を探すものの、今のところがん治療での使用している病院しかなく、そこで対応してくれるかが、今後の課題となる。この「猫破歯細胞性吸収病巣」に対して、使用したことがない獣医の場合、どのような変化や効果が期待できるのか等のエビデンスがないためか?もしくは、経験不足により、拒否反応を起こされることが多々ある。そこをどう説得し、また安全な治療を受けるために、既に行っている獣医の方々はどうにかして接触を試み、話を伺う必要がある。なかなか根気と時間のかかる作業だが、兄猫のため、また動き出さなければならない。