多発性嚢胞腎は、遺伝性(常染色体優性遺伝)の病気である。その遺伝する確率は50%と言われている。稀にに突発的に発生する場合もあるようだが、高い確率で遺伝性で発症することがほとんどだ。ちなみに人間にも同じ病気があり、2015年1月より難病指定されている。よって、完治させる治療薬は、今のところ開発されておらず、進行を抑えるまたは、進行速度をより緩やかにする唯一の薬「トルバプタン」のみが治療薬となっている。


発症すると、少しずつ嚢胞が増え、増大し、腎臓の臓器部分を置き換えていくことで、腎機能を侵し、腎不全の体を有する。そして、同時に腎臓結石を持つことが多く、それにより、尿管結石も同時に発症する事が多々みられる。また、嚢胞のほとんどが良性の場合が多いが、中には悪性のものが含まれている場合もあり、そうなると治療もさらに複雑な様相を呈してくる。何故、この病にとっては、早期発見は何よりも重要となる。


今回、兄猫の場合、尿管結石の症状から、多発性嚢胞腎が発覚したわけだが、もし、尿管結石がなく、また症状が出なかったらとしたら、多発性嚢胞腎を見つかるのは、手遅れの状態になってからだったかもしれない。多発性嚢胞腎で、腎不全の症状が出た時には、それこそもう他の施しようがない状態となってしまう。


猫にも人工透析が出来る施設もあるのだが、1回30,000円と高額な上、その都度どうしても全身麻酔が必要となることから、現実的ではなく、あとは、緩和ケアで対応することのみとなる。


多発性嚢胞腎に限らず、ねこの腎臓病は、高齢猫に多く発症し、寿命よりも腎臓系の病気で生涯を終える子の方が多いのが現実だ。予防は、事前に療法食を食べたからと言って防げるものではなく、猫ならではの生存してきた故からなるものが大きく、現時点では、残念ながら予防薬や治療薬はない。


昨今、AIMと言うタンパク質が正常に機能しないと言う原因が判明されたが、未だ治療薬として世には出ておらず、少なからずとも多発性嚢胞腎を有せず、AIMが原因となる腎臓病には、有効な薬となり得ることから、多くの愛猫家から、多大な期待が寄せられている。


ちなみに、腎臓病と歯周病は、多大な関連性があり、歯周病の炎症が10%増加すると、腎機能が3%低下すると言われている。また、5年で腎不全になるリスクが32〜34%増加する可能性があると言われている。


よって、唯一の予防の一つとして、歯磨きは重要なファクターとなる。犬の歯磨きは、歯磨きガム等かなり以前から意識されているものの、猫に関しては愛猫家の中でもなかなか習慣的に行なっている方は少ないようだ。ちなみに、子猫(1歳までは、歯が柔らかいので、歯磨きによって表面のエナメル質が削られてしまう可能性が高い為、あまりお勧めではないようなので、1歳を過ぎた頃から、習慣づけることが重要だ。


最初は、なかなか難しいかもしれないが、爪切りと同じで、猫も嫌々ながらも慣れてくるので、出来れば毎日自分達が磨くのと同じように、お世話の習慣として取り入れたいものだ。歯を磨くコツとしては、人間と変わらず、歯の表面よりも歯と歯茎の隙間を磨くような感じで、境目に歯ブラシを斜めに当て、軽く左右に動かすように磨くと良いらしい。始めた頃は、歯茎から出血することもあるが、続けていれば出血もしなくなるので心配ご無用。歯の着色などは問題ではなく、あくまでも歯周病にさせない事が重要。ちなみに、下の歯や歯の裏側は、唾液に触れる事で殺菌作用が生じるため、下の歯より上の歯、歯の内側より外側の方が、より汚れやすいとのこと。人間もそうだが、歯磨き粉は、本来不要。泡立ちやスッキリ感で磨けてる気になってしまうので、使う必要はない。また歯ブラシを水で濡らして使うと、汚れが落ちづらくなるので、濡らさずに歯磨きをする方が良いと言われている(歯科医説)。


ちなみに我が家では、1歳半くらいから、ペット用の小さめの歯ブラシで、毎日歯磨きをしている。歯ブラシを用意し出すと、ササっと蜘蛛の子を散らすかのように居なくなるが、油断して出てきたところを捕まえて歯磨き、ブラッシング、爪切り(伸びていたら)、おしりチェック(うんち汚れや、弟猫は肛門腺が時々出てくるので)をしている。ただ、歯の裏側の歯磨きは、やはり困難なため残念ながら行えていない。が、みなさんも、もし歯磨きをされていたらご経験ありかと思われるが、磨き終わった歯ブラシを見ると黄色〜茶色く汚れが歯ブラシについているのが見てとれる。汚れていることが一目瞭然。毎日磨いてあげると口臭もほとんどない。残念ながら言葉が通じないが、猫もスッキリして気持ち良いのではないかと勝手に思っている次第だ。


多発性嚢胞腎(PKD)については、先にも述べたが、優性遺伝のため、遺伝性が多くを占める。よって、この遺伝子を持つ猫からの繁殖を防ぐのが、何よりの予防法となる。未だペットを商品として販売される事が許されている日本。せめても遺伝子検査の義務付けを法律で整備し、また、販売を許可するにしても、ただむやみやたらと繁殖させ陳列するのではなく、購入希望者に予約をもって繁殖させ、産まれた子(1歳以上)を購入するようなシステムに変えていかなければ、これからも不幸な命が増えていくことになってしまう。人間と同様に命あるものの、責任を背負う重さを軽視するような現状は、許されるべきではない。世界では、命を販売するという事を当たり前に禁止する世の中になっている中、他にもいろんなこと(セクハラやパワハラ、マイノリティや女性の社会的地位、リアルファー(動物愛護)等々)でも遅れをとっている日本。その中でも命に関わることに関しては、もっと敏感になって法整備が進むことを強く望む。


一愛猫家としては、全て猫が、幸せな猫生を最後まで精一杯おくれることを心から願う。