優佳さんと一郎君の、なさぬ仲ながら心がつながった一風変わったカップル、戸惑ったのは優佳さんだけでなく、一郎君も、彼女に振り回される結果にはなりました。
サヴァン予知の結果により、優佳さんとセックスはしないと決めていた(彼女の方が言い出したのですが)一郎君であり、その考えは揺るがなかったのですが、目の前で8頭身ナイスバディーの彼女にフラフラされると、流石に気になりました。
優佳さん、両親からは一郎君とは深い仲にならないように注意されていましたが、姉の愛華さんからは、逆に早く深い関係になるように促されていたのです。
これ、優佳さんの両親にも落ち度がありました。
娘の結婚相手になりそうな一郎君なのですから、興信所に頼んで調査させたのです。
その結果、彼自身については、何ら悪いことは見つからなかったのですが、とにかく両親が滅茶苦茶の上に不仲で別居しており、その上母親である高子さんは、暴力団員との交遊(おそらく佐々木さんのことですから、彼が舎弟と呼んで可愛がっていた一郎君も当然絡んでいるのですが、余り二人が一緒になる場面がなかったせいか、彼との関係は報告されていませんでした。)もあるとの結果だったのです。
これは大変な結果ですから、彼女の両親、親の問題は子の結婚にも大きな障害となるから、諦めなさいと正直に話すべきだったのです。
それを、全く話さず、抽象的に深い関係にならないようにと注意するだけだったのは、明らかにミスでした。
むしろ、当然と言うか、優佳さんの心を通じて彼女の両親の注意が伝わった一郎君の方が、すべてを察していました。
もし自分が彼女の父だったら、やめろと言うと思いましたが、彼のスタンスとしては、優佳さんがそれでも自分を選ぶなら、真面目な、つまりはプラトニックな交際を続け、彼女の両親が根負けして許してくれるようなら、結婚を考えてもいいだろうというものでした。
ですから、とりあえず手を出さないのが正解だと信じていたのですが、優佳さん、母親と姉の間でフラフラするもので、デートしていると、このままホテルに行ってもいいかなあとか、山の中で二人だけになったら、キスぐらいしてくれるかなあ、なんて迷うのです。
そうすると、考えが伝わる一郎君としても、本当に彼女が思っているとおりにしたらどうなるかなあ、なんて考えてしまうことになるのでした。
それでも、理性の塊というよりも、心情解さないサヴァンですから、女心を理解しません。
ですから、いくら彼女が動揺しても、彼は全然動揺しないし、表情もほとんど変わらないのです。
すると、そんな彼の様子に、優佳さんは機嫌を損ねて、我儘をぶつけることになるのです。
これ、心が読めるとややこしくなります。
優佳さん自身は、一郎君を疑うことも、嫌うことも全くないのに、行動的には、嫌っているかのようなことをしてしまうのですから。
そのことが悪循環にならなかったのは、一郎君には、母や妹を見ていて、女性とはそんなものだという割り切りがあり、彼女の我儘を受け止めて終わりにし、自分は決して我儘言わなかったからだったのです。
でも、そんな彼の態度は、正しくはあっても、人間的な優しさには欠けていました。
ですから、優佳さんは、自分は「幸せ芝居」を演じていると感じてしまったのは、あながち間違いではなかったのです。
それでも、元の一郎君の恋人候補たちから見れば、二人の幸せ芝居は本当に幸せで、優佳さんのぼやきは贅沢なのろけにしか聞こえませんから、彼女、冷たくあしらわれるだけでした。
それでも、フラフラしつつも思いきれない優佳さんですから、そのまま行けば、二人の恋?は、意外にも成就したかも知れませんし、一郎君の卒業で自然消滅したかも知れませんでした。
一郎君、ずるいとも言えますが、自分からは決断しなかったのです。
ただ、決断しないとは言っても、彼には恋の成就以上に、優佳さんを磨いてみたい欲求がありましたから、彼女には、してはいけないことははっきり伝えたのです。
そこで、一郎君にも優佳さんの両親の娘に対する注意を笑えない事態が生じました。
一郎君の注意は、大変具体的でしたが、その理由をしっかりとは伝えなかったことです。
その第一の理由は、彼の考えは優佳さんに伝わるのですから、それをちゃんと解釈すれば、理由は明白だと考えたことでした。
そして第二は、サヴァン予知は多分に直感的なもので、理由がみつからないことも多く、理由があったとしても、優佳さんには理解不能であると判断したことは伝えなかったからです。
その点、優佳さんの両親の、一郎君とは深い仲にならないようにとの注意と五十歩百歩だったわけです。
でも、優佳さん、彼は預言者であり、彼が命じたことは、理由がはっきりしなくても絶対に正しいということを周囲から聞かされていたのですから、その重要性をもっと肝に銘じておくべきでした。
特に、彼の危険予知能力は絶対的であったことを。
一郎君、自身の危険予知による危機管理能力には自信をもっており、周囲の京大生たちは、今までの経験から、彼の予知能力を絶対的に信用していました。
その点、優佳さんは甘かったのです。
彼女、両親の注意も、姉の唆しも、中途半端に受け流しながらずるずると一郎君との関係を続けていったのですが、心の直結は秋になると薄れてきて、というよりは、優佳さんが、彼の心の容量、情報量、を受け止めきれなくなって、解析不能に陥った結果、余り伝わらなくなって、却ってほっとしていました。
11月のある日、一郎君たち4年生の引退の宴会が催されました。
その時優佳さん、京大生ではないものの、一郎君の恋人で特別待遇としてご相伴に預かったのですが、お開きになった時に、一郎君が割と強い調子で命じました。
「今夜は、僕の側から離れるな。」
普通、恋人からこう言われたら飛び上がって喜びそうなものですが、優佳さん、彼の言い方にカチンと来てしまったのです。
それで彼女、祇園のお店を出て、四条通を河原町方向に二人並んで歩いていた時、ここで彼の命令に逆らって私が逃げだしたら面白いだろうとふと思いつき、即座に実行に移したのです。
続く。
画像は、保護した子猫トメコです。250グラムしかなかった体重も、450グラムまで増えてきました。
なによりも、可愛い子猫なんです。


