
ここ何日か、異様に寒い那須です。
今日も、天気晴朗なれど波高し、ならぬ大変寒し、の一日でした。
さて、続きです。
別室で新と二人だけになると、最初に俊一郎は頭を下げて謝りました。
「最初に、驚かせてしまいましたことを、謝っておきます。しかし、娘さんの京子さんと、息子の清輝とのことを真面目に考えての上ですので、そのことはご承知おきください。」
そのことは、新としても理解していました。「最初に、驚かせてしまいましたことを、謝っておきます。しかし、娘さんの京子さんと、息子の清輝とのことを真面目に考えての上ですので、そのことはご承知おきください。」
「まあ、こうやってわざわざ挨拶に見えたということは、本当に真剣に考えてのことだと言うことは俺も理解した。ただ、余りに唐突やったし、俺には、あんたがほんまに堅気のようには思えへん。」
俊一郎は、そのことも正直に答えることにしました。
「そう思われても不思議はないかも知れません。一つお教えしておきましょう。」
「何や。」
「私は堅気ですが、昔兄貴分であった人が、自分の命を賭して守った舎弟でもあるのですよ。」
「そんな馬鹿な。そんな奴は滅多におらんはずや。」
新、そういう例があると聞いたことはありましたが、実在するとは思っていなかったのです。
「大変希なケースでしょうね。だからこそ、私は、裏稼業の人にとってはタブーの存在なのです。あなたには、その意味がおわかりでしょう。」
手を出したらいけない相手が存在することは、新も理解していました。
「わからんでもない。しかし、そう言うからには、あんたにはそれだけの裏があったということやな。俺自身、聞いたことはあったが、信じられへんかった。あんたを前にして、初めて、納得が行ったわ。本物を見たんやからな。」
俊一郎には、独特の迫力を感じていましたから、新も素直に認めました。
「私の兄貴分は、自分の命をかけて、上層部に、私を極道の世界に引き込まないことを約束させたのです。その理由も知りたいですか。」
「教えてくれるんなら。」
好奇心もあり、新は素直にうなずいた。
「私は、西都大卒ですから、いわゆるエリートでしょうね。その上に強すぎたのです。心身ともに。あなたよりも強いと言ったように、正直、普通の人間相手に負ける気はしません。兄貴分だった人も、空手の有段者であり、顔に傷があって、押し出しも効きました。しかし、私は初対面で、彼は、本当は、むしろ気が小さいぐらいに優しい人だと見抜きました。だから、つい言ってしまったのです。「無理しないでそんな稼業からは完全に足を洗っては如何ですか。」と。それで、彼の方がびびって、舎弟になってくれと逆に頼んできたわけです。私は同意した覚えはありませんが、いつの間にか舎弟ということにされてしまっていたようです。それで、大学を卒業する時、その筋に誘われました。有力な組の組長から、養子に欲しいとまで言われました。しかし、ヤクザは、強すぎてもあかんのです。」
「何でや。強うないと、押し出し効かへんがな。」
新、やくざはひたすら強くあるべきものと思っていましたし、確かに一流大卒のインテリで俊一郎ぐらいの強さがあれば、幹部候補として誘うのも不思議は無いとも思いました。
「いや、任侠として義理人情を通すには、弱さも、いや、弱い人間を認めることこそが必要だったのです。極道、強いもんだけ揃っては成り立ちません。一般社会と同じく、極道の社会も、組長や幹部だけでなく、ちんぴらも、鉄砲玉も、いろいろいてこそ全体のバランスも取れるということを、私は理解していませんでした。エリートだけで法と折り合った集団として生き残るためには、使い道のない人間は全員鉄砲玉にして、競合組織にぶつけて淘汰してしまおうとすら考えたわけです。そんな過激な思想を持った人間は、極道にはむしろいてもらっては困るのですよ。私と付き合ってようやくそのことを悟った佐々木の兄貴は、公私ともにいろいろと重なってしまった自分の不始末に落とし前をつけるとともに、私に手を出させないようにと、自分の命を差し出したわけです。」
「恐ろしいやっちゃな。あんた、俺でも考えんようなこと思いついてからに、十分堅気やないで。」
新は、俊一郎の考え方には、感心するよりも恐ろしくなりました。
「私、全くその意味を知らないで、佐々木の兄貴から国内最大の組織の代紋の金のエンブレム付の車を借りて乗り回していたこともありましたが、あくまでも堅気なんです。自分では一切裏社会にはかかわっていませんからね。でも、一つだけ言い訳させてください。私は、その佐々木の兄貴のことが好きでしたし、男として尊敬もしていました。彼を犠牲にしてしまったこと、そのことだけは残念です。他人を犠牲にすることは、自分の強さからも絶対に許せないことだったのですから。」
俊一郎の絶対的な強さを理解した新は、確かめました。
「あんたの言うことがほんまなら、上の人間はあんたのこと知っとるわけか。」
「20年前に、元山菱組金バッジで佐々木不動産社長佐々木政夫の舎弟だった神坂俊一郎として知られているでしょうね。しかし、先ほども言ったように、私自身は全く裏社会にかかわっていませんし、兄貴が落とし前をつけた格好になっていますから、裏社会にとってはむしろタブーの存在です。佐々木の兄貴の死後、その筋とは全く付き合いもありませんし、元々私にはつけいるような隙もありません。その意味で堅気だと言ったのです。」
「さよか。でも、あんたの怖さ、ようわかったわ。」
新は、俊一郎の怖さを格闘技の名手としての体の感覚で感じていました。
「脱線してしまいましたね。私の過去は関係ありません。今日伺ったのは、あくまでも、娘さんを神坂家に迎える、そのことを認めていただきたい。それだけだったのですから。」
新、俊一郎にはかなわないと白旗をあげた。
「わかった。あんたがたと京子には負けた。ついでに、一つ言い訳しとくわ。」
「なんでしょう。」
「俺は、京子には謝らんといかんどころか、手が後ろに回るようなことまでしてしもた。娘に手を上げただけやなく、いたずらまでしてしもたことは事実や。本当に悪いことをした。でも、あの子はまだ処女や。それだけは信じてくれ。信じてやってくれ。高校生になってからは、手も出してない。京子とあんたの息子の仲は認めるから、あの子を幸せにしてやってくれ。」
かなり救われる話でしたが、俊一郎は言い返しました。俊一郎は、そのことも正直に答えることにしました。
「そう思われても不思議はないかも知れません。一つお教えしておきましょう。」
「何や。」
「私は堅気ですが、昔兄貴分であった人が、自分の命を賭して守った舎弟でもあるのですよ。」
「そんな馬鹿な。そんな奴は滅多におらんはずや。」
新、そういう例があると聞いたことはありましたが、実在するとは思っていなかったのです。
「大変希なケースでしょうね。だからこそ、私は、裏稼業の人にとってはタブーの存在なのです。あなたには、その意味がおわかりでしょう。」
手を出したらいけない相手が存在することは、新も理解していました。
「わからんでもない。しかし、そう言うからには、あんたにはそれだけの裏があったということやな。俺自身、聞いたことはあったが、信じられへんかった。あんたを前にして、初めて、納得が行ったわ。本物を見たんやからな。」
俊一郎には、独特の迫力を感じていましたから、新も素直に認めました。
「私の兄貴分は、自分の命をかけて、上層部に、私を極道の世界に引き込まないことを約束させたのです。その理由も知りたいですか。」
「教えてくれるんなら。」
好奇心もあり、新は素直にうなずいた。
「私は、西都大卒ですから、いわゆるエリートでしょうね。その上に強すぎたのです。心身ともに。あなたよりも強いと言ったように、正直、普通の人間相手に負ける気はしません。兄貴分だった人も、空手の有段者であり、顔に傷があって、押し出しも効きました。しかし、私は初対面で、彼は、本当は、むしろ気が小さいぐらいに優しい人だと見抜きました。だから、つい言ってしまったのです。「無理しないでそんな稼業からは完全に足を洗っては如何ですか。」と。それで、彼の方がびびって、舎弟になってくれと逆に頼んできたわけです。私は同意した覚えはありませんが、いつの間にか舎弟ということにされてしまっていたようです。それで、大学を卒業する時、その筋に誘われました。有力な組の組長から、養子に欲しいとまで言われました。しかし、ヤクザは、強すぎてもあかんのです。」
「何でや。強うないと、押し出し効かへんがな。」
新、やくざはひたすら強くあるべきものと思っていましたし、確かに一流大卒のインテリで俊一郎ぐらいの強さがあれば、幹部候補として誘うのも不思議は無いとも思いました。
「いや、任侠として義理人情を通すには、弱さも、いや、弱い人間を認めることこそが必要だったのです。極道、強いもんだけ揃っては成り立ちません。一般社会と同じく、極道の社会も、組長や幹部だけでなく、ちんぴらも、鉄砲玉も、いろいろいてこそ全体のバランスも取れるということを、私は理解していませんでした。エリートだけで法と折り合った集団として生き残るためには、使い道のない人間は全員鉄砲玉にして、競合組織にぶつけて淘汰してしまおうとすら考えたわけです。そんな過激な思想を持った人間は、極道にはむしろいてもらっては困るのですよ。私と付き合ってようやくそのことを悟った佐々木の兄貴は、公私ともにいろいろと重なってしまった自分の不始末に落とし前をつけるとともに、私に手を出させないようにと、自分の命を差し出したわけです。」
「恐ろしいやっちゃな。あんた、俺でも考えんようなこと思いついてからに、十分堅気やないで。」
新は、俊一郎の考え方には、感心するよりも恐ろしくなりました。
「私、全くその意味を知らないで、佐々木の兄貴から国内最大の組織の代紋の金のエンブレム付の車を借りて乗り回していたこともありましたが、あくまでも堅気なんです。自分では一切裏社会にはかかわっていませんからね。でも、一つだけ言い訳させてください。私は、その佐々木の兄貴のことが好きでしたし、男として尊敬もしていました。彼を犠牲にしてしまったこと、そのことだけは残念です。他人を犠牲にすることは、自分の強さからも絶対に許せないことだったのですから。」
俊一郎の絶対的な強さを理解した新は、確かめました。
「あんたの言うことがほんまなら、上の人間はあんたのこと知っとるわけか。」
「20年前に、元山菱組金バッジで佐々木不動産社長佐々木政夫の舎弟だった神坂俊一郎として知られているでしょうね。しかし、先ほども言ったように、私自身は全く裏社会にかかわっていませんし、兄貴が落とし前をつけた格好になっていますから、裏社会にとってはむしろタブーの存在です。佐々木の兄貴の死後、その筋とは全く付き合いもありませんし、元々私にはつけいるような隙もありません。その意味で堅気だと言ったのです。」
「さよか。でも、あんたの怖さ、ようわかったわ。」
新は、俊一郎の怖さを格闘技の名手としての体の感覚で感じていました。
「脱線してしまいましたね。私の過去は関係ありません。今日伺ったのは、あくまでも、娘さんを神坂家に迎える、そのことを認めていただきたい。それだけだったのですから。」
新、俊一郎にはかなわないと白旗をあげた。
「わかった。あんたがたと京子には負けた。ついでに、一つ言い訳しとくわ。」
「なんでしょう。」
「俺は、京子には謝らんといかんどころか、手が後ろに回るようなことまでしてしもた。娘に手を上げただけやなく、いたずらまでしてしもたことは事実や。本当に悪いことをした。でも、あの子はまだ処女や。それだけは信じてくれ。信じてやってくれ。高校生になってからは、手も出してない。京子とあんたの息子の仲は認めるから、あの子を幸せにしてやってくれ。」
「そうですか。少しは救われましたが、京子さん、体は処女でも、心は違うようです。それはあなたの責任です。そのことだけは、十分反省してください。」
自分の非を認めた新は、潔く俊一郎に頭を下げました。
「わかった。本人にも謝る。」
「そこまで考えていただけるなら、言うことはありません。お返しにもう一つ私の恥を告白しておきましょう。」
完全無欠であるかのように思えた俊一郎に恥があるとすると、新も興味がありました。
「何や。」
「私は、実の両親でしたが、母には虐待で何度も殺されかけ、父には無視され、まともに話したことが一度もないのです。」
「そうやったんか。あんたも苦労したんやな。」
それも、彼の強さのもととなっているのだろうと、新は理解しました。自分の非を認めた新は、潔く俊一郎に頭を下げました。
「わかった。本人にも謝る。」
「そこまで考えていただけるなら、言うことはありません。お返しにもう一つ私の恥を告白しておきましょう。」
完全無欠であるかのように思えた俊一郎に恥があるとすると、新も興味がありました。
「何や。」
「私は、実の両親でしたが、母には虐待で何度も殺されかけ、父には無視され、まともに話したことが一度もないのです。」
「そうやったんか。あんたも苦労したんやな。」
「それで、ついでにお願いなのですが。」
「わしに、京子と話せっちゅうことやな。」
新は、俊一郎の意図を理解しました。
「そうです。まだまだ間に合います。血のつながりなんか関係ありません。本当の親子になるべきです。」
「あんたは、わしにわざわざそのことを教えに来たというわけや。」
「神坂家は、京子さんを家族として迎えます。あなたがたは、その京子さんにとっての家族なのですから、彼女の幸せのためにも、本当の家族となっていただけるように、僭越ながらお願いしようと考えたわけです。」
新は、俊一郎の年齢を尋ねました。
「あんた、ほんまはいくつや。」
「今の人生では45歳ですか。」
変な言い方をする俊一郎に、新は聞き返しました。
「今の人生とは何や。」
「神坂俊一郎の人生です。」
「それ以外の人生があるんか。」
「私、いわゆる前世記憶が一杯ありましてね。心と言うか、魂と言うかの面では、本当は何歳なのか、自分でもよくわからないのです。」
新は、俊一郎の強さだけでなく、年齢も読めなかったのですが、その謎が解けた気がしました。
「そうか。そんなからくりがあったんか。謎解けたわ。正直、わし、あんたの強さと共に、あんたがいくつかもわからんかったんや。」
「45歳にしといてください。」
「わかった。もっと何か話すことあるか。」
「まあ、京子さんのことさえ許していただければ、初期の目的は達しました。そこで、一つお願いがあります。」
「何や。」
「あなたが京子さんにしたことについては、本人が話すまで、誰にも話さないでもらえませんでしょうか。」
新としては、話しにくいことですから、歓迎すべきことではありましたが、理由を尋ねました。
「ええけど、何でや。きっと、かあちゃんも聞くと思うんやが。」
「京子さんの試練でもあるからです。彼女、息子には、私から話すことができるようになるまで、待ってくださいと頼んだと言います。私も、そうすべきだと思いますから、お願いします。その方が、彼女にとって、秦野家が自分の家だと思えるようになると思いますから。」
新、釈然としませんでしたが、俊一郎が言うからにはその通りなのだろうと応じました。
「わかった。その通りにするわ。」
俊一郎は、頭を下げました。
「ありがとうございます。今日のところはこれで十分です。娘さんたちのところに帰りましょう。」
新は、俊一郎に頭を下げられるのは逆だと思いましたから、謝りました。
「あんたに謝られては、俺のかっこうがつかんわ。じゃ、俺、娘に謝るわ。」
そうしてもらえると、京子にもよいと思いましたから、俊一郎は応じました。「わしに、京子と話せっちゅうことやな。」
新は、俊一郎の意図を理解しました。
「そうです。まだまだ間に合います。血のつながりなんか関係ありません。本当の親子になるべきです。」
「あんたは、わしにわざわざそのことを教えに来たというわけや。」
「神坂家は、京子さんを家族として迎えます。あなたがたは、その京子さんにとっての家族なのですから、彼女の幸せのためにも、本当の家族となっていただけるように、僭越ながらお願いしようと考えたわけです。」
新は、俊一郎の年齢を尋ねました。
「あんた、ほんまはいくつや。」
「今の人生では45歳ですか。」
変な言い方をする俊一郎に、新は聞き返しました。
「今の人生とは何や。」
「神坂俊一郎の人生です。」
「それ以外の人生があるんか。」
「私、いわゆる前世記憶が一杯ありましてね。心と言うか、魂と言うかの面では、本当は何歳なのか、自分でもよくわからないのです。」
新は、俊一郎の強さだけでなく、年齢も読めなかったのですが、その謎が解けた気がしました。
「そうか。そんなからくりがあったんか。謎解けたわ。正直、わし、あんたの強さと共に、あんたがいくつかもわからんかったんや。」
「45歳にしといてください。」
「わかった。もっと何か話すことあるか。」
「まあ、京子さんのことさえ許していただければ、初期の目的は達しました。そこで、一つお願いがあります。」
「何や。」
「あなたが京子さんにしたことについては、本人が話すまで、誰にも話さないでもらえませんでしょうか。」
新としては、話しにくいことですから、歓迎すべきことではありましたが、理由を尋ねました。
「ええけど、何でや。きっと、かあちゃんも聞くと思うんやが。」
「京子さんの試練でもあるからです。彼女、息子には、私から話すことができるようになるまで、待ってくださいと頼んだと言います。私も、そうすべきだと思いますから、お願いします。その方が、彼女にとって、秦野家が自分の家だと思えるようになると思いますから。」
新、釈然としませんでしたが、俊一郎が言うからにはその通りなのだろうと応じました。
「わかった。その通りにするわ。」
俊一郎は、頭を下げました。
「ありがとうございます。今日のところはこれで十分です。娘さんたちのところに帰りましょう。」
新は、俊一郎に頭を下げられるのは逆だと思いましたから、謝りました。
「あんたに謝られては、俺のかっこうがつかんわ。じゃ、俺、娘に謝るわ。」
「それはありがたいことです。そうしてください。」
俊一郎は、新を伴って家族のところに戻りました。
続く。
画像は、冬の風物詩、遠赤外線ヒーターの前の猫いっぱいです。
何匹いるでしょう。
俊一郎は、新を伴って家族のところに戻りました。
続く。
画像は、冬の風物詩、遠赤外線ヒーターの前の猫いっぱいです。
何匹いるでしょう。

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