今日の那須塩原は、朝は零下4度ながら、日中は14度まで上がって、暖かな温かな一日でしたが、実家の京丹波は、積雪50センチ近かったとか、地域によって、大きな差がある日本のお天気です。
さて、続きですが、また神坂夫妻の対話です。

「あなたの前世記憶って、今も健在なの。」
何千年前なのかわからないレムリア時代やら、もっとひどいのは、この世の始まりなんて、信じられないものまである、夫俊一郎の前世記憶なのですが、69歳というお歳のせいか、少し怪しくなっていると思われます。
「うーむ、却って、現世の記憶の方が怪しくなっているな。意外に、レムリア編の方が、まだ確かだったりするよ。」
「つまり、私は、神坂美奈子であるよりも、レムリア第一王妃、トゥーラ(本名は、トゥリトゥーラ・ククルカン・シャンバラ)だってことなのかしら。」
それは、恐ろしいものがあります。
「流石に、そこまでは行かないが、部分的にはトゥーラであることも確かだ。つまり、現世の記憶も、ドクター・カオスほどではないが、徐々に消えつつある。」
美奈子、漫画のドクター・カオスは、天才錬金術師でしたから、興味のあるところを聞いて見ました。
「ドクター・カオスが、マリアの設計書を持っていた(冗談のようなストーリーなのですが、彼は、その設計書を、便所紙にしようとしたのです。)ように、あなたは、レムリア時代の超越的文明の記憶は無いのかしら。」
答えは、意外なものでした。
「部分的に残っている。元々レムリアのミトラス国王だから、科学者、技術者ではなかった関係で、詳しいことはわからないが、いくつかの原理的な説明は覚えている。」
「どんなものを、覚えているの。」
「例えば、第3王妃ツィンツン(本名ラクシュミ・アーディティー・アマテラス)が、受け継いだ、天空の女神アーディティーの遺産であった、飛空艇ヴィマーナ・ウシャスだが、何と、機械なのに、人格を持っていた以上に、その動力、武器とも、完全にオーパーツだったよ。」
「動力は、何だったの。」
普通なら、原子力とでも言いそうなものですが、違いました。
「原子力ではなかった。恐らく、現在まだ実用化されていない核融合だったと思う。天空の女神アーディティーに限らず、当時のヒンダス(おそらくインド)も、常温核融合の技術を持っていたと思われる。」
美奈子、その動力源の燃料は何だったのか、聞いてみました。
「原子力でなければ、何を燃料にしていたの。」
「うーん、これこそ、科学担当でなかったのが残念なのだが、常温核融合物質だったと思われる。そして、当時の科学は、その融合のプロセスに、あらゆるエナジーを流用する技術を持っていた。」
「エナジーって、何だったのよ。太陽光なんてチンケなものじゃなかったでしょう。」
太陽光みたいなレベルで、まかなえるはずはありません。
「これ、幸運なことに、ツィンツン王妃と結婚して、ヤシマ経由でヒンダスに里帰りした際に、遺産として受け継いだものだったので、動かすために充電と言うか、エナジー充填するところを現認することができたんだ。」
「どうやったの。」
「これ、不思議なものだったのだが、本体から、子機のようなものを宇宙空間まで有線で飛ばし、地上との電位差だろうと思われるのだが、それを利用してエナジーを充填するものだった。気の長い話で、ヴィマーナ・ウシャス、5百年間眠っていたというのだが、その格納庫から、大異変時に疎開した都のポータラに行ってきた帰りに立ち寄ると、5日間で完全にエナジー充填が終わっていた。」
美奈子は、根本的な問題を尋ねた。
「エナジー満タンで、どこまで行けたの。」
「これ、驚愕で、ヒンダスから、ヤシマ経由、レムリアまで、約2万キロを楽に飛行できたんだよ。しかも、ヴィマーナウシャスは、当時知られていた飛空艇ヴィマーナの中では最速で、現在の尺度では、マッハ5ぐらいで飛行できたと思われた。」
美奈子は、武器はどうだったのか、確かめました。
「武器は。」
「これも、オーパーツだ。何故か、ヤシマのアマノトリフネには、特別な武器は装備されていなかったのだが、ウシャスと、ヒンダスのインドラには、高出力のレーザーのような光線兵器が装備されていた。いや、もしかしたら、レーザーではなく、加速された素粒子だったのかもしれないが、とにかく、全ての物質を完全に分解するものだった。」
それでも、SF映画の光線砲、宇宙戦艦ヤマトの波動砲のようなものです。
「まあ、波動砲みたいなものだったのかしら。」
「波動砲って、科学的には突っ込みどころ満載だから、単純な超高出力レーザーと考えた方が近いな。それよりも、最も恐ろしい武器は、インドラの、「火の神アグニの鉄槌」だった。こちらは、複合核兵器と言うべきものだったが、すさまじい威力とともに、核兵器とは思えぬクリーンさが特徴だった。」
クリーンな核兵器など、ありえるのかと、美奈子は疑いました。
「どうすれば、核兵器がクリーンになるのよ。」
「要は、放射線を外に逃さなければいいんだよ。」
「そんなこと可能なの。」
「これ、究極の選択の中で、トゥーラ、ツィンツン、サクヤではなく、サクヤ、ツィンツン、カムヌカの3王妃を選択する次元で経験できたのだが、インドの叙事詩、マハーヴァーラタの場面そっくりの惨劇が実現された。」
「一体、どんな惨劇なのよ。」
「大異変後のヒンダスで、王室対北部都市国家連合の内戦が勃発し、苦渋の選択で、当時のクリシュナ国王は、「火の神アグニの鉄槌」の使用に踏み切ったのだ。」
「だから、その、「火の神アグニの鉄槌」って、どんな兵器だったの。」
「複合核兵器と表現したが、核融合物質と、熱線及び放射線遮断物質とを組み合わせたものだった。」
「だから、どんな兵器よ。」
「2段階になった核融合爆弾で、まず、最初に、目標地点の上空で、熱線及び放射線遮断物質を搭載した爆弾を爆発させ、半球状の覆いのようなものを作って、外部と遮断するんだ。」
「それから。」
「第二段階として、その半球内で、核融合物質の爆弾を爆発させ、核融合物質で満たす。」
何となく結果が見えてきましたが、美奈子は続きを要求しました。
「それから。」
「この時の状態が、マハーヴァーラタの表現そのものだった。」
「と言うと。」
「一段目の爆発で、空が暗くなり、2段目で、黒い粉が降ってきた。そして、その粉に触れた生物は、皆死に絶えた。」
「じゃあ、それだけでお終いじゃない。」
「ところが、そんな甘いもんやなかったんや。」
「じゃあ、どうなったの。」
「この時、ヴィマーナ・インドラと、ウシャスは、上空2万キロぐらいの地点に滞空していたのだが、目標であった、北部都市国家連合の6都市が、銀色の半球に包まれた状態となった。つまり、内側から見ると、空が真っ暗になったわけだ。」
「それで。」
「インドラの、素粒子砲らしきものを、各地点の中心に発射した。」
「すると。」
「光線と核融合物質が反応し、超高温の半球が出現、各都市を、焼き払い、溶かし去った。」
「恐ろしい。」
そうとしか、言えません。
「つまり、一瞬にして、6つの都市国家を消滅させ、約6万人の命を奪った。」
美奈子は、確かめました。
「あなたも見守っていたということは、最終手段だったのでしょうね。」
「そうだ。都市国家は、なまじ高度に整備された都市であったため、維持に多大なエナジーを必要としたのだ。大異変後で、大飢饉状態のヒンダスでは、エナジーよりも食料にシフトしなくてはならなかったのに、都市国家連合は、クリシュナ国王の説得に応じなかったのだ。」
「あなたのレムリアは、どうしたの。」
「ヒンダスの同盟国であったから、クリシュナに協力し、「火の神アグニの鉄槌」を使用する前に、ウシャスのエナジービームで各都市の城門を破壊する脅しをかけたのだが、それでも応じなかったので、使用に踏み切った。」
仕方がなかったというところなのでしょう。
「それにしても、物凄い兵器だったのね。」
「そう。これ、マハーヴァーラタの内容と一致するだけでなく、インドからトルコにかけて、超高温で焼き尽くされたと思われる遺跡が点在しているから、それが、北部都市国家連合の遺跡なのかもしれない。」
つまり、「レムリア物語」は、事実であった可能性があるわけです。
「レムリアのミトラス国王ならぬ、あなたのドクター・カオスは、関係するのかしら。」
俊一郎は、笑いながら続けました。
「ドクター・カオスは、私ではないが、転生者として、何千年かの時代を経験している私とは、共通電がある。」
「じゃあ、他にもいろいろあったわけね。」
「そう。面白いのは、テオティワカンの猛火だ。」
「テオティワカンって、メキシコの遺跡よね。」
「そう。壮大な遺跡なのだが、近年になって、どうも、大火災で遺棄されたらしいことがわかってきた。」
「それにも、あんた、絡んでるわけ。」
とんでもない夫ですから、あり得ます。
「お前も絡んでいる。」
何処をどうして自分が絡むのか、美奈子は聞き返しました。
「私が、何をしたって言うのよ。」
「お前は、可哀そうな犠牲者だ。」
となると、夫のことですから、私を殺した人間を皆殺しにしかねません。
「すると、下手人皆殺しにしたわけ。」
かまをかけると、俊一郎がうなずいたので、美奈子は背筋が寒くなりました。
「何をしたのよ。」
「アステカ文明って、奴隷を生贄にして殺しまくっていた。」
それは、聞いたことがありました。
「あなたは、何してたの。」
「レムリアに続いて、国王兼大神官だった。」
今の彼に近ければ、奴隷の生贄を止めさせるに違いありません。
「じゃあ、生贄廃止を訴えたのでは。」
「そう。実は、美奈子の前世の巫女が、生贄候補で、豚を代わりに生贄にして、人間の生贄を廃止させようとした。」
上手く行かなかったことになります。
つまりは、私は殺されたのです。
「じゃあ、手違えで殺されちゃったってわけね。」
「そう。そうすると、私がなにをするか、わかるな。」
彼のことですから、関係者皆殺し一直線です。
「あーらら、皆殺しよね。」
「そのとおり。まず、首謀者の神官たちを皆殺しにした。」
「どうやって。」
「ああ、私が手刀を振るっただけで、全員首が落ちた。」
そうなのです。
彼を怒らせたら、今でもありえることなのです。
「その後、どうなったの。」
「ここで、常温核融合技術が登場する。」
「どんな風に。」
「大神官兼国王パカルは、国民にこう宣言した。「神官たちが、犠牲を強要したため、その報いを受けて、神に、死を与えられた。神はまだ怒っておられる。命の惜しい者は、速やかにこの都市チーチェンから、3時間以内に退避しろ。その後、チーチェンは、神の怒りに寄って、炎に包まれて滅びるであろう。」
つまり、その炎が、常温核融合だったことになります。
「どうすれば、石造都市が燃えるのよ。」
「だから、常温核融合なのだよ。石造都市全体に、核融合物質が塗装されていたのだよ。」
「それが、どうすれば発火するのよ。」
「実は、チーチェンは、天使の一人チーチェンが築いた都市で、彼女は、音声反応信管というか、発火装置を仕掛けていたのだ。」
「音声って、何が合図になったの。」
「言葉だ。」
「どんな。」
「天使の長アールマティ―と、人間の王ミトラスの名において、命ずる。チーチェンよ、我とともに滅ぶべし。」
芝居がかった文句です。
「それで、どないした。」
「一瞬にして、歳は猛火に包まれた。焼き尽くされた都市と人々は、その後、制御のために張り巡らされていた水路が決壊して、全て流し去った。」
これまた、妙に現実感のある話です。
「こんな光景まで幻視できる私には、生死など、あってないようなものなのだ。」
美奈子、聞きたかったことを聞きました。
「死ぬ時って、辛くないの。」
俊一郎は、あっさり答えました。
「全然。次に移るだけだ。」
そうなると、死を恐れる必要は無いことになります。
「じゃあ、あなたは、死が怖くない。」
美奈子が確かめると、俊一郎は、深くうなずきました。
「ドクター・カオスではないが、千五百年生き続けているようなものだ。」
彼は、今69歳ですが、毎日サイクリングして走り回っていますし、腹の立つことに、老眼も、針に糸を通しにくくなったかな、程度で、小さな文字でも平気なのです。
「体力は、如何。」
「面白いことに、60歳で定年退職した時より、今の方が絶対、走っても速いな。」
確かに、サイクリングで右折してきたダンプに巻き込まれかけて、逆に加速して避けたというぐらいですから、嘘でもありません。
ただ、はげてはいませんが、髪は真っ白になりました。
顔を見ると、私も若く見えますが、これまた腹の立つことに、67歳の私よりも、しわは少ないのです。
何度も言いますが、私よりも、長生きしてください。




今年は、那須と会津のお山は雪が多いようです。
水不足にならないから、歓迎です。
外は寒いが、家の中でヌクヌクしている猫たちです。