元は、夫の魂と双子だと言う、摩耶美紀子さんの魂の作品とみられる、夫が書いた物語に関する質疑応答だったのですが、彼の交友の事情聴取みたいになった続きです。
今日は、変な話ですが、どうして私と結婚してくれたかのお話になります。
「何度か聞いたけど、摩耶美紀子さんを振ってまで私と結婚したのは何故。」
「僕の幻視、彼女の未来シミュレーション、おまけに宏和の霊感の三者三様に、僕と美紀子さんの結婚は、大凶も大凶、彼女が3年で死ぬ結果だった話はしたよね。」
彼女と結婚したら、彼女が祖母高子を殺して自殺するという悲惨な結果だったのです。
彼女、天才の夫を凌ぐ大天才でしたから、頭の良すぎる人の考えることは、理解不能です。
「どうにも理解できないけど、どこをどうして、そんな悲劇になるわけ。」
「それが、彼女の過激な愛情だったんだよ。」
「あなたのためだから、婆を殺して自分も自殺するって、普通の人間なら、そんなこと考えもしないわよ。」
私の頭では、ありえねーとしか言いようがありません。
「彼女の超頭脳によるシミュレーション結果がそう出た。それを実行するのが、僕に対する彼女の過激な愛情だったというだけのことだ。」
当然、夫がそれを許すはずがありません。
「あなた、そんなことは、絶対許さないでしょう。」
「僕は、絶対許さない。美奈子の時の決断でもわかっただろうが、僕は、自分の誇りにかけて、誰一人犠牲にしない未来を考える。」
「じゃあ、何故、そんな結果が導き出されるのよ。」
「彼女のシミュレーションの結果と、僕の幻視が一致してしまったというだけのことだ。だから、そのとおりには絶対ならないようにした。」
確かに、その未来は、避けられたわけです。
「あなたは、それで良かったということなんだ。」
「先日話した通りだ。それが、絶対多数の最も幸福な未来につながる選択であったから、そうした。」
「そこに、あんたの幸せは、愛は、あったんかえ。」
「僕の幸せと愛、どう定義するかだが、その点では、美紀子さんの創作の物語の方が、幸せと愛があふれていると思う。」
そうでした。
この議論自体、不毛なのです。
何故なら、彼には、自分だけの幸せがないのですから。
「改めて聞くけど、あなたは、それで良かったの。」
「彼女が望み、幸せにつながるものであれば、僕も幸せだ。そして、美奈子も。」
言われてみると、彼女の物語、私は死ぬのですが、彼女と夫の娘に転生して幸せになりますから、確かに、そのとおりでもあるのです。
「目先の幸せではない、ということなのね。」
「僕の幻視能力は、そのためにある。先の先を見る。幻視者とは、先見の者でもある。」
凡人の私には、所詮ついて行けない世界なのです。
単刀直入に聞きました。
「じゃあ、私はどうすればいいの。」
「神坂美奈子ではなく、美紀子さんの物語の、神坂美幸として生きればよい。そうすれば、僕と美紀子さんの娘として、理想の教育を施されて、幸せになれるから。」
反論の余地は、ないわけです。
「それでいいのかしら。」
「それ以上があるなら、教えてくれ。」
ギャフンとしか言いようがありません。
「わかったわ。お任せします。」
「最善の策を施すから、心配するな。」
彼には、利己的な考えというもの自体ありませんから、お任せが一番なのでしょう。
レムリア物語の現代編、その続編、美紀子編、三つの選択肢のうち、どうやら、美紀子編が最良のようです。
思うにこれ、異世界物語のチート能力のようなもので、後だしじゃんけんによる運命の八百長です。
まあ、それができるのなら、それに越したことはありません。
現実との境界があいまいな彼女の次元ですが、そちらは、お任せしましょう。