果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語
ー㊲ー
にゃんく
「あなたたちはあたしの実家より南の方を捜索してみて頂戴。あたしは残りの東、西、北を当たってみるわ。いい? 見つけたら道草食ってないで、すぐに知らせに戻って来るのよ?」とリーベリは云いました。
「必ず見つけ出してみせます」ジョーニーとストレイ・シープは声を揃えて云いました。
リーベリは、出発前にストレイ・シープに首輪をつけておくことを忘れませんでした。
「これは?」
不思議に思ってストレイ・シープが訊ねました。
「これはね、他のカラス達から見分けがつくようにつけとくのよ」
とリーベリが云うと、ストレイ・シープは納得したようでした。そして、ストレイ・シープはジョーニーを背中に乗せ南の方角へ飛んで行きました。その首輪はほんとうはストレイ・シープを他のカラスから見分けるためのものではありませんでした。その首輪には実は魔法がかけられていて、世界中の何処にいても、首輪をつけた者の居場所が水晶を通してすぐリーベリに分かるようになっているのでした。
*
「ちぇっ、リーベリ様も人使いが荒いや」
とジョーニーは洞窟を後にすると日頃の鬱憤を吐き出すように云いました。リーベリはこのところ酷く機嫌が悪く、洞窟でも声を荒らげて、古参のジョーニーとストレイ・シープ達を些細なことで叱りつけたりするのでした。
聞き捨てならないというふうにジョーニーの股に挟まれたストレイ・シープが云いました。
「リーベリ様に聞かれたら、事だぜ、ジョーニー」
「あんたさえ密告しなければ、わかりゃしない。おいら、もうあの人の下で働くの疲れたよ、とても」
「それは僕も同感だがね。ついさっきも、丸焼きにされたカエルなんて、かわいそうで見ていられなかったぜ」
「ああ、おいらの人生、碌なもんじゃないなあ」
「まあまあ、我々が何とか食っていけるのもリーベリ様のおかげといっちゃおかげなんだから、そんなにぼやかないでくれよ」
「なあ、ストレイ・シープよ、おいらには夢があるんだぜ。形だけはリーベリに従っているけれど、その夢を叶えるために今は大人しくしてるだけだぜ」
「へええ、初耳だな。夢って何だい?」
「おいらもいつかきれいなお嫁さんをもらって、いっぱしの家庭を持ちたいんだ」
「そいつは見上げた夢だな」
「そしたら、きれいさっぱり、こんなヤクザな稼業からは足を洗って、カタギになって、仕合わせな家庭を築くんだ」
「たいしたもんだな、あんたは。前から見所あると思ってたんだ」
真っ暗闇だった眼下に、ぽつりぽつりと家の灯りが見えて来ました。この付近は、リーベリが生まれ育った家がある村なのでした。ストレイ・シープは背中にジョーニーを乗せ、そこからさらに南の、黒々とそびえる森を目指して飛びました。