果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語
ー㉓ー
にゃんく
夜中、リーベリはジュリアの夢を見ました。
ジュリアとリーベリは見渡す限りの雲海の上に立っているのでした。ジュリアは静かに、リーベリのこころに染み渡るような声で話しました。「自分だけの居場所をお持ちなさい。誰にも邪魔されない、自分だけの居場所を。それはあなたの宮殿となり、あなたの身を守ってくれる城となるでしょう。あなたはその宮殿の女王です。兵隊や、身の回りの世話をしてくれる賢い召使いも現れることでしょう。そこで愛する人と幸せに暮らすのです。あなたには、それを実現する資格があるし、能力もあるのですから」
ジュリアは、リーベリが質問をする前に、闇の中へ再び掻き消えてしまいました。リーベリは闇の方へ手を差し伸べましたが、ジュリアは戻って来てはくれませんでした。気がつくと、リーベリは雲の上でなく、みすぼらしい物置部屋の中に横になっていました。寝息を立てているのは、ベッドの上のリューシーだけです。
リーベリは布を敷いただけの寝床からそっと起き上がり、明り取りの外を覗きました。家の壁に背を凭せ掛けて、ジョーニーとストレイ・シープが眠りこけています。人形が喋ったりするのを見て、リューシーが愕くといけないと思い、彼らにはここしばらくは部屋の外にいてもらっているのでした。「あなたたちには迷惑かけてるわね。もうすこし、辛抱してね」リーベリは小声でそう囁くと、静かに寝床に戻りました。そうしてまんじりともしないで、夢の中でジュリアが云った言葉について思いを巡らせていました。