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『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉・・・68点

(小学館、ジャンル:ミステリー、2011年本屋大賞受賞作)


 被害者がどのように殺されたかその謎が解ければそれでいい、それだけの推理小説だ。主題もないし、美しさもない。残酷さもない。あるのは軽さだけだ。そして現実感は極めて希薄だ。


 考えながら読む必要のない小説のように思える。読者は作者があらかじめプログラミングしたちゃちな空間の中でちゃちな体験をして終わる。読者が想像したりすることが素晴らしいのに、作者から押し付けられているので、読者は機械のように皆同じ考えしか持たない。



 すらすら読める。空気のような文章。悪く言えば、個性のない文章。

 面白いと思った章もあった。「花嫁は密室の中でございます」執事が呼び方を分けていることによる錯誤。うまいこと考えるなあ。実際にありえないことでもなさそうだ。


 しかし、中には、こんなの読んでいったい何になるんだろう?
読み終えて何の意味があるのだろうか? 時間潰しのための読み物ではないだろうか?と思ってしまう章もあった。

 例えば、第2話のライターの話。犯行当時に所持していたかどうか分からないのに推測だけで決め付けられないだろう 。



決定的にリアリティは欠けている。

 捜査員たちが何時までも家に帰れないことによる疲れや夜通し眠れないことによる倒れそうなくらいの眠さ、死体の発する腐った匂い、夏場なら腐った蛆虫、そういったものが一切書かれていない。


 そのような生々しい現実は描いていない代わりに、馬鹿馬鹿しい謎解きが大半にせよ、暑い最中に冷房の効いた部屋でテレビゲームを楽しむような感覚で読む小説でしょうね。