『ポトスライムの舟』津村記久子・・・79点
完成度は高いと思う。
二度読めば色んな仕掛けが施されていることが分かる。
処女作『君は永遠にそいつらより若い』に比べ簡潔な文章になってもいる。
無駄のない筋肉質の文章の中に必要な情報が詰まっている。
文章に関して作者は修行を積んでいるのでしょう。
処女作は処女作で初々しい感じがあって良かったのですが。
登場人物は女性しかいません。
女性がそれぞれ自分の人生で悩んだりする姿が描かれている。(あまり悩んでいないような人もいるが。それはそれで人生ということか)
<あらすじ>
ナガセはある日、自分の年収と同じ額の世界一周旅行の広告に目をとめる。誰かがナガセの自転車のブレーキレバーに悪戯をし、トラックにひかれそうになった後、ナガセはその旅行に行くための資金を貯める決心をする。
ナガセの友人たちは結婚したりしなかったりだが、結婚している子の中でも、夫婦生活が意外にうまくいく子やそうでない子がいる。
友人のりつ子は稼ぎをほとんど自分の好きに使ってしまう夫から逃げ出して、幼稚 園児の娘を連れてナガセの自宅に身を寄せてくる。
節約した生活をおくっていたナガセだが、思いがけなく出費がかさみ、それまでの休みの少ない日々に疲れがたまったのか、倒れてしまい自宅へ搬送され一週間ほど自宅療養する。
りつ子は寿結婚後退社した会社に再就職が決まり、ナガセの元から巣立っていく。
離婚協議は継続しているが、ひとまず自分の道を歩み出したようだ。
そしてナガセは思いがけず何年ぶりかのボーナスが支給され、計画よりも早く世界一周旅行の貯金を貯めることができたのである。
(第140回(2008年下半期)芥川賞受賞作)