『まほろば』蓬莱竜太・・・・79点
戯曲を読んでいるといろいろ勉強になります。
この作品の登場人物は女性だけです。
その女性たちは何かの因果のように幸せな結婚ができていません。
長女のミドリは酒を飲むと記憶がなくなります。
それを伏線にして、はじめは生理がもうこなくなったと思っていたのに実は妊娠しており、妊娠しても絶対に子供は生みたくないと考えていたのに最後には子供連れの親子がかわいく見えます。そのどんでん返しが「うまい」といわれているところなんだと思います。
この作品は岸田賞を受賞しています。
選考委員の永井愛さんの選評を読んでいると、「作者は自ら設定した女たちの状況を、人物の色分けとしてしか活用していない」という言葉に、まさにそのとおりだと思ってしまいました。この登場人物の親子たちには、傷つける言葉を言われてもけろっとしているのかと疑うくらい葛藤とかがなくて、たしかに深い人間関係が描けていないなと私も思いました。
でも、私はプロではありませんが、同じ物書きとして、人間関係はもちろんきちんと書かないといけませんが、あまり深く考えて書こうとすると筆が遅くなる原因になってしまいますから、難しいところです。
人物は描けていないけど、構成については演劇的な仕掛けがなされていて、「うまい」というところでしょうか。