2gether ~恋する気持ち②(SaraTine)二次創作小説~ | 海に焦がれて

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タイの沼にずぶずぶにはまりまして、最近では台湾・中国のドラマにもはまっております。同じような経験をしているみなさんと交流を持てたら良いなと思っています。


 

 

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2gether ~恋する気持ち②(SaraTine)二次創作小説~





「Tine・・・・君は笑顔が素敵だ。
 でも、Sarawatといる時の君は笑顔じゃない。
 それはなぜ?
 彼は、君を幸せにしてくれているの?
 君を悲しませたりはしないの?
 僕が知っている彼は、女の子にとても人気がある。
 僕の周りにも、彼の写真を待ち受けにしている人達がいる。
 君という特別な人がいながら、彼はなんで今までと同じなの?
 僕は、納得できない。」



俺のことを思って言ってくれているはずのBankの言葉が、深く刺さる。
言われなくても分かってる。
Watの周りには、いつも取り巻きのファンがいる。
これは本人には言っていないが、Tineも密かな嫌がらせをされたりしている。
“Sarawatに相応しくない恋人”
SNSで1番多いコメント。
日々大きくなる不安が、表情に出ているのだろうか。



「それでも・・・・・・・俺はWatが大切だから」



息が苦しい。
この感情をなんて呼ぶのか、僕は知らない。
酸素が薄く感じて、俺は大きくため息をついた。



「なら、仕方ないね」



暖かい掌が俺の頭を撫でる。



「僕が待つよ。君の心が変わるまで。
 君のこと、誰よりも大切だから。」



心が穏やかになっていくのは、なぜだろう。
俺自身を認めてもらっているから?
そっと席を立つと、俺はBankに頭を下げる。
何も解決はしていないけれど、俺にとって大切なものが何かわかった。
改めて。
フロアにいるWatのところへ足早に急ぐと、Watがいた場所に人だかりができていた。
大勢の女子がWatを囲んでいる。
肩に触れたり、写真を撮ったり、プレゼントを渡したり。
見慣れている光景のはずなのに
胸が痛い・・・・・・。



“君という特別な人がいながら、彼はなんで今までと同じなの?“



先ほどのBankの言葉が蘇ってくる。
つまらなそうに外を見ているWatの膝に、一人の女子が腰掛ける。
そのまま写真を撮り始めた。
困ったように眉間にシワを寄せるWatに気づくことなく、
今度は他の女子も真似をして写真を撮り始めた。
心臓の音がうるさい。
胸が苦しい。
足元がぐらぐらして、立っているのが辛い。
取りあえずどこかに座ろうと動き出したところで、足がフラついた。



「おっと」



後ろから抱き抱えられて振り返る。
心配げな表情のBankが、俺の体を支えてくれていた。



「どうした?大丈夫?」



覗き込んでくる顔が近い。



「Bank・・・・・・俺・・・・・・なんか具合悪くて・・・・・」



頭がフラフラする。



「Tine。裏で休もうか。今日はもう上がりなよ。僕から店長に話をしておくから。」



支えられながら歩き出す。
突然、ガシッと衝撃があって、俺の身体の周りにあった温もりがなくなった。



「Tine!!どうした?具合悪い?」



見慣れたWatの顔が近くにある。
退かされたらしいBankは、少し前のテーブルに手をついてこちらを見ている。
遠くにいるファンの子達は何も言わずに佇んでいる。
誰も何も言っていないのに、その視線は俺を非難しているように感じる
“あなたはSarawatの隣にふさわしくない”と。
頬に熱いものを感じて、俺は初めて自分が泣いていることを知った。



「Wat・・・・・・もう・・・俺・・・・・」



ぎゅっと目を閉じると、Watは訳がわからないというように俺をそっと抱きしめた。



「Tine、どうした?言ってみて。」



分かってる。
Watは何も悪くないんだ。
俺はそっとWatを引き離すと、覚束ない足取りで控え室へ向かった。
追おうとするWatを、Bankが止めている声がする。
そして、さっき俺に言った言葉と同じ言葉をWatに伝えている。



「君は彼の恋人として失格だ。
 Tineがどれだけ我慢しているか、君は知ってる?
 君の周りは、いつだって華やかだ。
 でも、道端に咲いている小さな花だって、その存在は何物にも変えられない。
 君の周りを彩る花達よりも、唯一無二の存在に気付けないなんて。
 いや、気付いているけれど変える気がないなら、それは愛じゃない。
 僕なら、彼にあんな顔はさせない。
 彼がいつも劣等感を抱えるような関係にはしない。」



だんだん遠ざかるBankの声に、さっきよりも涙が溢れる。
違うんだ。
違うんだ、Bank。
これは、俺がダメなんだ。
Watは何も悪くない。
見慣れている光景に、勝手に傷ついているだけなんだ。
俺は、どかっとソファーに倒れ込んだ。
何も考えたくない。
何もみたくない。
生きているのも面倒くさい。
今は・・・・・・Watに会いたくない。
彼を、傷つけたくないから。
ガチャリとドアが開いて、足音が近づいてきた。



「Tine?」



柔らかい声音が、Bankのものだと気付いてホッとする。



「大丈夫?」



俺の横になっているソファーの端が、ポフッと沈んだ。



「ありがとう、Bank。」



それ以外の言葉は見つからない。
出会ってまだ何日かしか経っていないのに、ここまでしてくれる人はいないだろう。



「Tine。ごめん。
 君の気持ちを考えないで、君の大切な人を傷つけた。
 でも、許せなかったんだ。
 僕は入学当時から君のことが好きだったんだ。
 講義で一緒になることもあって。
 君の笑顔が、とても好きなんだ。
 君という存在を、何もかもを手にしているのに、君から笑顔を奪った人。
 正直、僕は彼を羨んでいるのかもしれない。
 何もかも手に入れた彼を。」



顔を上げてBankを見ると、困ったような優しい笑顔で俺をみていた。
その笑顔は、どこかで見たことがある。
あぁ、そうだ。
Sarawatが、初めて俺と出会った日のことを話した時、同じような顔をしていた。
じゃぁ、Bankよりももっと長い間恋心を抱いていてくれたってことか。
こんな時でもWatのことを考えてしまう。
俺は、両手で顔を覆った。



「俺は、ただの足手まといなんだ。
 彼の力になりたいのに、俺は何もなくて。
 ギターだって弾けないし、歌だってうまくは歌えない。
 ズバ抜けて頭がいいわけじゃないし、運動神経が良いわけじゃない。
 全て持ってる彼の隣に並ぶのに、俺には何もないんだ。」



次から次へと涙が溢れてくる。
Bankがそっと頭を撫でてくれる。



「僕ね、Tine。
 君が好きだよ。
 僕の恋人になってくれないかな。
 絶対に悲しませたりしないから。」



柔らかい声音に、俺はBankを見た。
涙で霞んで見えるBankは、柔らかい笑顔で俺のことを見ていた。



「俺・・・・・・・」



忘れた時にこみ上げてくる涙。



ガチャリ



ドアが開いた音がして、俺たちはドアの方を見る。
笑顔の要素ゼロなWatが入り口に立って俺を見ていた。



「Wat・・・・・・・」



ズキリと心臓が動く。



「Tine、帰ろう」



ふわっとWatが微笑んで、俺に手を差し伸べた。
その笑顔が、いろいろな事を伝えてくれる。
俺は、ゆっくりと立ち上がった。



「待って、Tine。
 君は、また悲しみに身を落とすの?」



手首を掴まれて、身動きがとれない。
俺は、じっとWatから目を逸らさないでいる。



「違うんだ、Bank。
 俺は、自分の気持ちを伝えるのが苦手だけど。
 ちゃんと伝えなくちゃいけないことがあって。
 俺にとって・・・・・Sarawatは全てなんだ。
 Watがファンに囲まれていて嫌な気分になるけど、それは、Watだから。
 他の人だったらこんな気分にはならないし、こんな気分になるのはWatだから。
 嫌いになったことなんてない。
 好きになりすぎて、怖くなってる。
 もしWatが俺を嫌いになる日がきたら。
 もし愛想尽かされたら。
 もし・・・・・女の子を好きになったら。
 俺はその時どうなるんだろうって。
 Watがいない人生なんて、俺にはわからないんだ。」



苦手な自分の感情を、ポツリポツリと話す俺をWatが真っ直ぐ見つめる。
潤んだ瞳が、今にも粒を溢しそうだ。



「彼に俺は相応しくないっていう人が沢山いる。
 俺も、そう思ってる。
 でも、みんなには申し訳ない気持ちはあるけど。
 俺は、Watといたい。」



そこまで言うと、いきなり重みが俺の身体に襲い掛かった。
Watの髪から、同じシャンプーの香りがする。



「Tine・・・・Tine・・・・・。」



強く抱きしめられて、頬に口付けられる。
Bankが見ていること、忘れているのかもしれない・・・・。



「愛してる・・・・Tine・・・・・・愛してる」



そう言いながら、優しく髪を撫でてくれる。
こんなにも近くにいる。
Watが、手を伸ばせばそこにいる。
こんな単純な気持ち、なんで俺は遠回りしたんだろう。
全身で俺に愛を囁いてくれる。
時間にルーズで、自分のことに興味がなくて。
自分のことよりも俺のこと。
そんな彼の気持ち、知っていたはずなのに。



「帰ろう、Tine」



掌を引かれて、俺は数歩歩いて止まった。



「あ、あの・・・・・えっと・・・・・ありがとう、Bank」



ペコリと頭を下げる俺に、Bankは仕方ないという表情で笑った。



「いいよ。気にしないで。
 Sarawat・・・・・無自覚なフェロモン撒き散らしの恋人、ちゃんと見張ってなよ」



ふわりと笑うBankは、透き通って見えて、まるで天使のようだった。
そんなbankを一瞥して、Watは「あぁ」とだけ答えた。
俺は一礼して、Watに続いて部屋を出た。
そこから自宅に帰るまで、どちらも何も話さなかった。







続く