ニューヨークは朝夕、秋の気配すら漂っています。今日は、この夏その味を謳歌した、桃についてのお題。日本に住んでた時は特に好きでも嫌いでもなかった桃ですが、アメリカに住むようになってから私の夏には欠かせないフルーツになっています。
アメリカでスーパーマーケットに並ぶ桃は、黄桃(イエローピーチ)が主流です。日本では白桃が贈答品としても人気で「桃といえば白」というイメージが強いですが、アメリカでは逆に黄桃が桃の代名詞のような存在になっています。これは品種改良の歴史や消費者の好みの違いによるもので、酸味と甘みのバランスが強く、香りもしっかりした黄桃がアメリカ人の味覚に合ってきたためだと言われています。白桃も存在はしますが、産地近くや都市郊外にある農産物直売所(ファーマーズマーケット)や高級スーパーでないと見かけないという位置づけです。そんな私は白桃派。夏になると毎週ファーマーズマーケットで買い求めて、夏を感じます。昨年までは1個1ドルくらいの相場感でしたが、今年はどちらの桃も、今年は東海岸一体、春先に天候不順で白桃が壊滅した地域もあるとかで、やや値段が高めでした。
夏の週末の朝の幸せ、、
黄桃は果肉がオレンジがかった黄色で、酸味がしっかりとあり、加熱調理や缶詰、ジャムなどの加工にも向いています。代表的な品種には「Elberta(エルバータ)」や「Redhaven(レッドヘイブン)」「O'Henry(オヘンリー)」などがあり、それぞれ収穫時期や果肉の硬さ、種離れの良さが異なります。特にElbertaは19世紀から栽培されている歴史ある品種で、加工用としても生食用としても広く使われてきました。黄桃は完熟すると香りが強くなり、ジューシーで甘酸っぱい味わいが特徴です。パイやコブラーといったアメリカの伝統的な焼き菓子にもよく使われ、家庭でも手軽に手に入る果物として親しまれています。
一方の白桃は果肉が淡いクリーム色から白色で、酸味が少なく上品な甘さが際立つのが特徴です。「White Lady(ホワイトレディ)」や「Snow Beauty(スノービューティー)」といった品種がありますが、日本の白桃(あかつきや清水白桃など)ほど繊細で高糖度な品種はアメリカではあまり広まっていません。これはアメリカの気候や輸送事情、消費者の嗜好が影響しており、傷みやすく糖度管理の難しい白桃よりも、栽培しやすく日持ちする黄桃が優先されてきた歴史があります。とはいえ近年は健康志向やフルーツの多様化に伴い、白桃の人気も徐々に高まりつつあります。アジア系のスーパーマーケットでは日本や台湾由来の品種に近い白桃が扱われることもあり、選択肢は少しずつ広がっています。
アメリカの桃の主要産地としては、まずカリフォルニア州が挙げられ、全米の桃生産量の半分以上を占めています。次いでサウスカロライナ州とジョージア州も有名で、特にジョージア州は「Peach State(桃の州)」という愛称を持つほど桃栽培の歴史が深い地域です。これらの州では黄桃・白桃どちらも栽培されていますが、流通量では圧倒的に黄桃が多く、白桃は地域限定のファーマーズマーケットや専門農園で扱われることが一般的です。ニューヨーク近辺で出回っているのは、サウスカロライナ州とジョージア州産が多いです。
またコロラド州のパリセード地区も高品質な桃の産地として知られ、地元では強いブランド力を持っています。産地によって収穫時期や品種構成が異なるため、旅行や引っ越しでアメリカ各地を訪れる際は、その土地ならではの桃を楽しむのもおすすめです。また変わり種として「Donut Peach(ドーナツピーチ)」や「Saturn Peach(サターンピーチ)」と呼ばれる、平たい形をした桃も近年人気が高まっており、甘みが強く食べやすいことから若い世代にも支持されています。こうした品種の違いを知っておくと、料理や用途に合わせて桃を選びやすくなります。
近年人気の「Donut Peach(ドーナツピーチ)」プレミア感がある
桃が旬を迎えるこの時期、アメリカの家庭でとりわけよく作られるのが「Peach Cobbler(ピーチコブラー)」です。桃をシナモンや砂糖と一緒に煮て、上にビスケット生地やケーキ生地をのせて焼く素朴なデザートで、特に南部の家庭料理として親しまれています。同じく人気なのが「Peach Pie(ピーチパイ)」で、サクサクのパイ生地とジューシーな桃の組み合わせは夏を代表する味として食卓に登場します。これらの料理は上に挙げたような桃の産地州で育ったうちの旦那Dの十八番。いつも義母が作ってくれていたそうで、そのレシピを引き継いでいます。飽きのこない味なので、シーズンに何度もリクエストして作ってもらってます。
手軽に作れる「Grilled Peaches(グリルピーチ)」も夏のバーベキューの定番で、半分に切った桃をグリルで焼き、アイスクリームやハチミツを添えて食べるスタイルが好まれています。さらに朝食向けには「Peach Cobbler Oatmeal」や、桃を刻んでヨーグルトに混ぜるだけの簡単なレシピも家庭でよく作られ、忙しい平日の朝にも取り入れやすい一品です。こうしたデザートやレシピの多くは黄桃を使うのが一般的ですが、白桃を使うとより上品で繊細な甘さに仕上がるようです。
うちの旦那の実家レシピ「Peach Cobbler(ピーチコブラー)」
最後に、アメリカで桃を楽しむ際のポイントについて触れておきます。桃の旬はおおよそ5月から9月にかけてで、特に7月から8月が最盛期となり、この時期はスーパーでもファーマーズマーケットでも新鮮な桃が豊富に出回ります。選び方のコツとしては、皮に張りがあり甘い香りが強く、軽く押した時にわずかに弾力を感じるものが食べ頃の目安だそうです。うちの旦那がよくやってますが、追熟させたい場合は常温の紙袋に入れて数日置くとよく、食べ頃になったら冷蔵庫で保存すると鮮度を保てます。
黄桃と白桃、それぞれの個性を知った上で食べ比べてみると、アメリカの桃文化をより深く楽しめるはずです。ぜひ次の桃シーズンには、いろいろな品種を試してみてください。





