毎年9月の第一月曜日はレイバーデー(労働者の日)の祝日で、レイバーデーウィークエンドとして夏の終わりと位置付けられています。ニューヨークもこの週末あたりを境に、暑さも和らぎ朝夕はひんやりする日々が始まります。
今年は、旦那と共に金曜仕事を休んで4連休にして、Upstate New Yorkを旅行中です。下の地図をご覧になるとわかるようにニューヨーク州は東西南北に結構大きい州で、マンハッタンがあるニューヨーク市は南と東の端の方に位置しています。西北に広がる区域は総称してUpstate New Yorkと呼ばれています。今回目指したのはFinger Lakesのエリア。氷河期の名残りの地形で、名のとおり手の指の様に細長い湖が並び、風光明媚な上、寒暖の差のある気候を活かしたワイナリーなども点在しておりマンハッタン在住のニューヨーカーにとって絶好の週末旅の目的地となっています。
我々は、3泊4日の予定でUpstate New Yorkをロードトリップ中です。昨日は、マンハッタン在住の友人で、州都オルバニー郊外にセカンドハウス(別荘)持つゲイ友Oさんを訪問しました。別荘といっても、もともとはご両親の家だそうですが、Oさんが大学進学のために両親の元を離れてからご両親は移ったそうでこの家自体には住んだことはないようです。しかし高齢のご両親は老人ホームに入ってしまったので管理も兼ねて、ウィークデーはマンハッタンに住んで、月に2度くらいの週末に来て滞在しているようです。おうち自体は赤煉瓦の洒落た建物で庭にはプールもあり、なるほど、彼が手放したくないのがよくわかりました。ニューヨーク州といえども、この辺りはトランプ主義者も多く、大統領選でのトランプ支持の旗を庭先に立てた家を見かけます。近所に、同性愛者には人権はないと平気で発言して、全米での中絶全面禁止を目指す保守系政治家の家があるそうで、彼はその対抗策として、カマラ・ハリス支持の旗を玄関先に、そしてLGBTの象徴であるレインボーフラッグを通りに面した窓に掲げています。
この辺には反LGBT共和党支持者が結構いるので、🏳️🌈で存在誇示するそうです
昨日は週末前の金曜日という開放的な気分とは裏腹に、お天気は愚図ついてましたが、プールサイドでバーベキューで行く夏を惜しむスタイルでした。ちょっと前に、最近ゲイ友の主催するパーティーに行くのが気乗りしなくなったということをブログで書きましたが、今回招待してくれたゲイ友Oさんはとてもつきやすい方で魅力的な人なので誘ってもらってうれしかったです。ちょうど、この週末にUpstate New Yorkに行くという話をしたら、バーベキューするからオルバニー近郊にある彼の別荘に寄っていってよ、と誘われたのでした。我々としては自分たちと同じくくらいの年齢のゲイ友が年老いた実家のご両親や兄弟姉妹とどう折り合いをつけているかなど、興味もありました。
パーティーにお邪魔させていただいて面白かった学びは、Oさんは実家近くにもきちんとしたゲイコミュニティーに属していて結構活発に活動していることでした。マンハッタンにありがちな知らない人がたくさん来るようなパーティーではないけれど、普通の大人のゲイだけでこじんまりとして楽しかったです。また、Oさんがいずれマンハッタンで仕事を引退したらここで住む予定らしいので、こうして地元のゲイたちとネットワークを構築していくことはとても有意義と思いました。マンハッタンのゲイの集まりに行くと、見た目はおっさんなのに大学生みたいな気分のゲイだったり、年齢不詳で日頃何してるのかわからない人たちがいたりするのですが、この日会った皆さんは素性がちゃんとした人たちなので、そういう点でも自分の話もしやすいと思います。交通警察官とか、公立校の学校の先生とか、あまりマンハッタンのゲイシーンで出会わないような普通の職業の方がたとご一緒できて良かったです。なぜかマンハッタンにいると前述のような職業不詳系か、自称含め(笑)インベストメントバンカー、不動産業者、弁護士、インテリアデザイナー等が幅を効かせている気がします。
Oさんの現地のゲイ友人たち。皆さん普通の人たち
それと、Oさんが我々を招待したのには裏アジェンダがあって、それは彼のゲイ友の日本人ゲイTさんと私を引き合わせることでした。どういう友達なのかは聞けませんでしたが(笑)、Tさんは某中西部の大都市に住んでいてこの週末はOさんのお宅で過ごすようです。Tさんは、その大都市に越してきて2年経つが全くゲイの友人ができない、という悩みをお持ちでした。なお、アメリカのパーティーで偶然他の日本人と遭遇すると、なんとなく気まずいです。日本人だと気が付かないフリするか、挨拶仕様もアメリカ人には「Hi!」といってカジュアルなところを、日本人にはお辞儀に、みたいなモード変換が必要かも、などと迷ってしまいます。今回はあらかじめそういうアジェンダがあって、私以外に日本人がいると聞いていたので、自然に話を始めることができました。あまり書くと本人特定され迷惑がかかる可能性もあるので詳細は省きますが、端的に言ってどうやってゲイ友作ったらいいんですかね、という相談に乗りました。
私がアメリカに来た20年前の頃と今ではSNSの劇的発達や社会自体のLGBTへの許容度合いの変化もありますが、今も昔もアメリカでは自分で積極的に出ていかないと会う関係の友達はできないという点は変わりません。こうしてOさんを訪問しているように、週末旅行できるくらいの関係がある人が既にいるという点でTさんはまずまずのスタートを切っていると思います。しかしTさんは、今住んでいる都市圏で身近に会えるゲイ友が欲しい、ということでした。
やはり王道はオンラインが出会いのきっかけなのですが、彼曰く出会い系アプリには既に同じ顔が滞留しているので「開拓し尽くした」みたいな。また「他人の顔は見たいが、自分は顔出ししたくない」というパラドックス。よくある話です。中には真面目にパートナーを探すサイトもあると思いますが、出会い系の基本はやり目なので「性的に好みの見た目」の人しか会えないという高い入口が設定されてしまいます。それとアジア人はゲイのやり目界隈ではあまり人気ではないので、人種差別的な嫌な経験もするでしょう。ゲイバーと言う古典的な手段もあるけれど、出会い系と同じような構図がただ対面になるだけと思います。出会いの時点がやり目だと、その後普通の友達として続いていかない傾向は、日本もアメリカも同じような気がします。
自分の経験から、真っ当な出会いの確率が高いのは、ゲイだけの趣味のサークルだと思います。趣味を共通にする人とは性的な視線抜きで(とはいってもゼロとは限らないのがゲイの世界ですが、、)友達候補者を見つけることができます。マンハッタンみたいな大都市にはかなりの数のゲイサークルがあります。私の身近な例では、親友ゲイZhaoはバレーボールのサークルで幹事をして交友を広げています。私もマンハッタンに来てすぐの頃に、音楽系のサークルに入り、人間的に魅力的な人々と出会いました。コロナのパンデミックがあったり、今は郊外住まいで活動ができなかったりでサークルは辞めましたが、そこで知り合った何人かのゲイ友は今の自分の人間関係の礎といっても過言ではありません。あと、LGBTの権利擁護を推進する人権団体やNGOなどで活躍するのも人脈を広げる上では有益です。このブログにも登場したことのある旦那Dの元同僚でゲイ友AさんはLGBTのNGOである「Human Rights Campaign」に参画しており、そこで今のパートナーと会ったそうです。Tさんの住む街も全米10位に入る大都市圏なので、インターネットを駆使して探せば自分の趣味に合うゲイの集まりはあるでしょうし、LGBTQセンターみたいなところに行くと各種サークルの会員募集の張り紙をしてたりします。
Human Rights Campaignのイベントの舞台裏
もう一つ、職場や学校のLGBTQの団体に顔を出すことも選択肢の一つです。私は大学院の時は、自身がカミングアウトしていなかったので大学院のLGBTQ団体に関わることはありませんでした。LGBTと言う言葉があの当時あったのかも覚えてません。その後アメリカで就職してからは、基本職場ではカミングアウトしていなかったので、どっぷり浸かることはなく、ハッピーアワーなどで様子見くらいでした。今は安定したゲイ友だちがいるので、現職場のLGBTグループで積極的に活動しようという人生のフェイズではありませんが、今思えば、大学院の時も、前の職場でももう少し積極的になれば、少しは人脈も変わっていたのかなと思うこともあります。以前は職場ではあまり知られたくないと言う気持ちもありましたが、今はもうどうにでもなれと言うかんじなと、経験上他人はそれほど自分のことを気にしてないものだなと、今になって思います。
それでも、自分が属すると感じるコミュニティーが見つけられなかったり、ウマが合う友人が見つからないというのであれば、自分で自分が心地いいコミュニティーを作るという方法もあります。このブログによく登場するSさんMさんカップルは、犬好きゲイのハイキングサークルを作って楽しくやってます。私がマンハッタンの寿司屋に詳しいことを知っているSさんから、寿司好きゲイのサークル作ってよ、と言われたことがありましたが、まんざらでもないと言う気がします。自分がコーディネーターとして動くのが好きであれば成功の確率は高いと思います。
私は使ったことはないけれど、Meetupは自分でグループを作って会員募集できるそう
なお、ユニークなところでは、私とこのパーティに招待してくれたゲイ友Oさんとの出会い。パンデミックの少し前、ゲイのためのリサーチプロジェクトで知り合いました。当時、Oさんが勤務する研究機関では、アメリカ人と外国人のゲイカップルの調査をしていました。あまり人が集まらなくてリサーチのサンプル数をもっと集めなくてはならないということで、共通のゲイ友で前出Aさんからの依頼で、オンライン・サーベイに回答し、その後Oさんのチームとの電話での聞き取り調査に協力したのでした。AさんとOさんは共に「Human Rights Campaign」の会員だそうで、Aさんのお宅で開かれたレイバーデー・バーベキューで初めて会って意気投合し今に至る友人関係を構築していると言う感じです。
Oさんと出会ったのもレイバーデー・ウィークエンドでした
こういう意識調査に参加することで意外にも人間関係が広がることもある(写真はイメージ)
アメリカでゲイ友を作る方法というテーマで朝ごはん前に書いてみました。昨夜お会いした日本人のTさん、英語も上手で社交的な方だったので、数年のうちにきっとたくさんのゲイ友ができていることと思います。彼の住む街を訪れたらぜひ立ち寄ってくださいと言っていただきましたし、もし彼がNYにくるのであれば、また再会を楽しみにしています。
まだ旦那は寝てますが、これから我々はFinger Lakesのワイナリーを目指しニューヨーク州をひたすら西にドライブ。旅行中は多分ブログの更新はできないと思いますが、時間差で訪問した場所などシェアさせていただきます!それでは、皆様も良い週末をお過ごしください。