転職して新しい職場で勤務開始して2週目、私を採用してくれた上司であるベネディト・サンタバーバラ氏(仮名)とついに対面しました。来週までは帰ってこないと聞いていたので、ある日彼のオフィスにあかりがついていてびっくり。例によって、綺麗なシルエットのスーツでビシッと決めていて、オフィスのガラス越しに映る姿が既にファッションモデル。しかも難易度高いダブルのジャケット。マンハッタンで凡人が着たらイタリアンマフィアの幹部のように見えてしまいますが、彼が着るとクラシック映画の中の一シーン。私ももう少しマシな服でくれば良かったとか、まあ勝負しても無駄だからいいかな、など色々考えながら、部屋を覗くとあちらもタイミングを見計らったように、「Hey, NW!Finally、、、(NWさん、ついに会えたね)」と固い握手。ほんの2−3分話して、後日ランチしたり、仕事内容を話し合う会議を設定することになりました。ちなみに、サンタバーバラ氏との初対面の記事はこちら。

 

同じ週に設定されたランチは二人きりではなく、もう一人、私のメンターになるようなシニアレベルの同僚も加わりました。日々の業務はこの同僚がスーパーバイスしてくれるとのこと。その彼はもう60近いので、サンタバーバラ氏からはひとまわりも上。部下とはいえとてもリスペクトして接しているのがわかりました。

 

面接以降初対面のこの日は、難易度高いダブル(イメージ)

 

その後サンタバーバラ氏と1対1の面談があり、仕事内容の詳しい説明や期待値やパフォーマンスレビューのための目標設定を話しました。ランチに一緒にいた別の同僚がいずれリタイアするので、私が慣れてきたら彼のポートフォリオを引き継いでもらいたい、とのこと。正直、まだ実際に仕事を初めて1週間しか経っていないので、なかなか実態が掴めませんが、期待されていることは確か。

 

仕事のことは置いておいて、この超絶イケメン上司に見とれる気持ちと同時に、なぜか、きっと彼にも欠点はあるだろうと、穿った観察を続けています。これは、惚れてはいけないという無意識の予防線なのか、それとも天に全てを与えられた男への嫉妬から来るのかはわかりません。


本当は短気で意地悪?口先達者なズボラで怠け者?部下の手柄を取るのが上手い?など性格的な難があるのではないか、とか、もしかしたら、加齢臭や口臭がするのでは?とか。笑。しかし、どんなに粗探しをしても、目立った欠点は見えてきません。あえていうなら、彼とのミーティングは、彼が遅れてくるので時間通りに始まらない事くらい。でもそれは彼が悪いのではなく、彼のその上の経営幹部やクライアントの都合に合わせるが故。それどころか遅刻すると必ず「あなたたちの時間を無駄にしてしまってすまない、」と先回りして非を認めるので、逆に好印象。今のところ、非の打ち所がないです。

 

という感じですが、面談後話し合うべきことを済ませてリラックスした時に、突拍子もなく、彼が秘密にしているということを打ち明けられました。

 

サンタバーバラ氏(以下、氏):「NWさん、実はあなたに話していなかった私には秘密があるんです。(NW, Indeed, I have a secret that I havent shared with you)」

 

私:(やや困惑気味に)「ああ、そうなんですか、、、(Oh, I see...)」

 

氏:「実は私はジャパニーズなのです(In fact, I am Japanese)」(ニュアンス的には、日本人、ということではなく、日系です、みたいな)

 

私:「えっ、どいういことですか?(What do you mean?)」

 

氏:「私の母方の祖父は日系アメリカ人。祖母はフィリピン系アメリカ人。父方はみんな白人」

 

私:「ああ、なるほど。でもなんで、それが秘密なんですか?」(←確かに言われないと日系の血が入ってることはわからないが、)

 

氏:「小さい頃から、(自分の地出身の)カリフォルニアの町には日系人の友達がたくさんいて、みんな賢くて成功してるんです。私は成績もよくなかったし学校でも平凡な生徒だったから、自分がジャパニーズだなんて名乗るのは恥ずかしかったんです。日本語も話せないし。」

 

私:(返答に困りつつ、、)「あ、そうなんですね。」

 

氏:「先月のジャパン・パレードには行きましたか?私は、二人の娘、ナオミとサキ(仮名)連れて行って楽しかった。パーティーにも行ってきた。」

(この後も少し雑談が続いたのですが、省略します。。)

 

この話を聞いて、なるほど、と思いました。採用選考過程でサンタバーバラ氏と話している時に、何となく中井貴一と話しているような気分になったのです。日系の血が入ってたんですね。中井貴一のお父さんは昭和の超絶イケメン俳優佐田啓二。確かにサンタバーバラ氏には佐田啓二の面影が、、、。きっとお爺さんも佐田啓二並みのルックスだったのでしょう。サンタバーバラ氏は小さい時は髪も赤毛で青い眼、ほぼ白人の子供にしか見えなく、中学くらいからややアジア系の雰囲気が出てきて今に至るとのことです。

 

 

サンタバーバラ氏のイメージのモデル。確かに佐田啓二似

 

一方、こんな非の打ち所がないハイスペックなイケメンでも、コンプレックスがあるんだな〜と妙に納得してしまいました。周りの日系人の子供たちが皆優秀で成功者なんだと言った時も、決して嫌味には聞こえなく、今も本当に周囲の日系人たちを敬っている感じでした。世の中的に見れば、スタンフォードとハーバード出てる彼は超優秀な若者だったはずで、こうして今もアメリカの会社の幹部として大成功してるのですが、彼の基準からみると、日系人たちは今も尊敬の対象なのでしょうか。私のことももしかすると同じような目で見てくれているのかななんて、都合のいい解釈をしたい妄想に誘われますが、とにかくとてもいい話を聞いたと思います。

 

きっと彼は、私が日本人だからこうして普段は明かさない自分のルーツを共有してくれたんだと思います。アメリカでは、例えば副大統領のカマラ・ハリス氏が南アジア系であり、アフリカ系であると宣言しているように、出自やルーツを誇りにします。高らかに宣言してアピールする人もいれば、サンタバーバラ氏のように、特にアピールはしないけれど密かに、複雑だけれどもポジティブな憧憬の念を持ったり、まるで先祖の出自を畏怖し、その出身地を桃源郷のように想う人もいます。ジャパン・パレードに顔を出すくらいだったら、地元の日系人コミュニティーにも来てもらいたいところですが、これは、今後彼と距離を詰めていくためのトピックとしてとっておこうと思います。

 

そして、雑談の最後にジャパン・パレード行かなかったの?と聞かれ、思わず私も「Dと私も行きたかったのですが、私たちはその日まだ日本にいたんです。」とさりげなくカミングアウトしてしてしまいました。彼がこんな形でコンプレックスやあまり明かしていない出自を共有してくれたからか、本当に自然な流れで出てきました。サンタバーバラ氏は、特に「Dって誰?」などと野暮なことは聞きもせず、「So you guys enjoyed real Japan (本場の日本を楽しんだってことだね)」とごくさらっとの流れで終わりました。

 

おそらくこれが彼が娘連れて参加したパーティー