今年に入ってからブログがほぼ転職活動記と化していましたが、円満退社の手はずも整って落ち着いたので、今日は久々にエンタメ関連の投稿です。2−3月は大本山のアカデミー賞をはじめエンタメ業界の賞レースが展開され、良作映画に触れる機会が増えるので紹介したい映画が結構溜まっています。そんな中、今日は最近満を辞してストリーミングが始まった、真田広之主演兼プロデュースでハリウッドが描く戦国時代劇『SHOGUN 将軍』の話題です。

 

 

SHOGUNの新旧キャスト

 

日本でも話題になっているようですが、『SHOGUN 将軍』はこちらでも大好評です。私たちはHuluで見ていて、視聴者数も今季ドラマの中ではトップクラスと聞きました。テレビでHuluのストリーミング画面を開くと大抵トップページに表示されます。原作は作家のジェームズ・クラベルによるフィクション小説で、歴史上の実在の人物三浦按針(ウイリアム・アダムス)をモデルにした物語です。1980年にはアメリカのテレビで実写化もされています。その後、編集の上映画化もされており欧米における日本関連のコンテンツではいまだに伝説的な作品です。当時「SHOGUN」と名のついた日本食レストランが全米各地にできたというエピソードもあります。また島田陽子がヒロインを演じ「国際派女優」と呼ばれるようになったきっかけの作品でもあります。なお、1980年版の主演は三船敏郎。今回の『SHOGUN 将軍』は、そんなレジェンド作品のリメークとなるわけですが、ディズニープラスの公式サイトでは、以下のように描かれています。

 

「徳川家康ら、歴史上の人物にインスパイアされた「関ヶ原の戦い」前夜、窮地に立たされた戦国一の武将<虎永>と、その家臣となった英国人航海士<按針>、二人の運命の鍵を握る謎多きキリシタン<鞠子>。歴史の裏側の、壮大な“謀り事”。そして、待ち受ける大どんでん返し。SHOGUNの座を懸けた、陰謀と策略が渦巻く戦国スペクタクル・ドラマシリーズ。」

 

 

初回を見た感想ですが、とても良かったです。時代劇の素養のないアイドルタレントが出演するような一部の日本の時代劇や最近の大河ドラマなどよりずっと重厚です。さすがに真田広之がプロデュースに関わっているだけあり、アメリカ人から見た可笑しな日本像があまり見られず、日本人を演じる俳優陣も皆さんちゃんとした日本語を話してます。CGなどの技術の進化もあると思いますが、さすが、巨額予算を注ぎ込んで製作されているだけあると思いました。評価はこれからご覧になる皆さんそれぞれですが、私は「ラストサムライ」(トム・クルーズ主演)出演以降の真田広之のハリウッドでの活躍をウォッチしてきていますが、この『SHOGUN 将軍』は、そんな真田氏がこれまでハリウッドで培ってきた努力、築いてきた人脈、そして経験してきた苦難などの集大成だと思っています。アメリカのエンタメでは、日本と中国がごちゃ混ぜになって表現されたり、日本人の役を韓国系が演じたりというシーンが多かったことは事実ですが、ここ数年の間に、尊敬を込めた日本文化の浸透が少しずつ広まっており、ハリウッドでその役目を果たしているのは他ならぬ真田広之氏です。

 

 

2年前に公開されたブラピ主演の映画「ブレット・トレイン」に出演した真田氏が日本公開での舞台挨拶で凱旋帰国した時に、自分はこれから日本文化の橋渡しをするミッションがある、というようなことを話していたインタビュー記事を目にしたことを覚えています。「ブレット・トレイン」自体は日本を忠実に描くというような作風ではありませんでしたが、それでも真田氏の登場シーンによって締まりができて、日本へのリスペクトが感じられる作品になっていたことは確かです。

 

 

その時に語っていた自身のミッションを実現したのが『SHOGUN 将軍』といっても過言ではないでしょう。今回も業界誌のインタビューで、日本の描写をできるだけ精巧に描き、日本人の役は日本の俳優さんが演じられるように様々な努力をしたことを話していました。実際日本人の有名俳優も多数出演していますが、真田氏が働きかけた様々な努力、というのは日本の芸能界みたいな「ゴリ押し」とか「事務所バーター」などでありません。日本人俳優が、作品を理解しオーディションで役を獲得できるような努力への導き、そして、ハリウッドでの制作現場での振る舞いもきちんと身につけてもらう、といったようないわばコーチングのようなことを意図したという意味です。出演者の一人の超ベテラン俳優さんが、「オーディションを受けているときに、誰の後ろ盾があるわけでもなく、頼れるのは自分のみ、初心に帰った」と何かのインタビューで話していましたが、長年アメリカで働く者としてとても共感するものがありました。どんな業界であれ、こういう自立心がないとアメリカではやっていけないのです。

 

 

家臣を演じている西岡徳馬氏、78歳にしてハリウッド挑戦!

 

真田氏は、作品のプロモーションでニューヨークにも来てくれました。製作陣や共演者を従えて様々な現地メディアにも登場し、まさにその姿は将軍そのもの。ニューヨーカーの間では、いまだに日本人俳優といえば「三船敏郎」というイメージがあります。ミッドタウンの高級ジャパニーズレストランに「MIFUNE」と名前がつくくらい有名なアイコンですが、ゆくゆくは真田氏も三船敏郎さんの地位に達するのではと思うくらい、いや後進の育成と言う意味ではそれ以上の貢献をされていると思います。現在の真田氏の活躍は単にハリウッドにおける日系俳優の重鎮というだけにとどまらず、きちんとした日本の文化を発信する文化人、そして伝道師としての役割を担うくらいの影響力を持つに至っていると思います。ここ数年のアメリカをはじめ海外での飛躍的な日本文化の浸透の一端は真田氏が担っているといっても過言ではないでしょう。

 

今回もニューヨーク凱旋の後は、首都ワシントンにも乗り込んだとのこと。映像作品のプロモーションで首都に乗り込むとは、真田氏の活躍にますます期待するばかりです。「SANADA」の名が「MIFUNE」に並ぶのはそう遠い日ではないように思います。

 

マンハッタンでのプロモーション活動(今年2月)