観光目的でハワイを訪れた若い日本人女性がアメリカ入国を拒否され、強制帰国させられたというニュースを見ました。

 

ニュースによれば、出稼ぎ売春を目的としてアメリカに来る日本人女性が圧倒的に増えてきているそうで、彼女にも疑いかかけられたようです。アメリカ移民局はその動向に目をつけていて、ハワイだけではなくてサンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークなどの空港で疑わしいケースは入国拒否をするようです。このニュースの女性はSNSのインフルエンサーで普通の会社員だったそうです。一方で日本では若い女性が「パパ活」と称して軽い気持ちでお小遣い稼ぎでエスコート的活動していると話題になっていると聞きました。軽い気持ちの「パパ活」とはいえアメリカでは厳格に売春と位置付けられ立派な犯罪で、移民局が神経を尖らせているのは理解できます。

 

 

外国人にしてみれば、理由はどうであれ、アメリカ入国時の別室送りは恐怖でしかありません。

アメリカ生活が長い実は私も、このアメリカ入国時の別室送り、2度経験しています。なので、この記事の女性の気持ち、とてもよくわかりました。

 

1度目は、アメリカの学生ビザから労働ビザに切り替えた後の初めての入国の時でした。私は当時テキサスの会社で働いていましたが、OPTという学生ビザに付帯した労働許可証から労働ビザに切り替えて、日本に帰省した帰りのシカゴ空港で別室送りになりました。

 

入国審査官:「何しに来たの、シカゴになんの用事?」

私:「ヒューストンに乗り換えです」

入国審査官:「そんなこと聞いてない、シカゴにどんな用事があるの?」

(全く話題が噛み合ってないのですが)

私:「ヒューストン行きの飛行機乗り換えて、家があるヒューストンに帰るのです。」

入国審査官:「ヒューストンに行くのに、なぜシカゴに来るの?直行便があるでしょう

?」

私:「このチケットが安かったから、シカゴ経由にしたんです。」

入国審査官:「。。。。」

 

この会話の後、彼女はどこかに無線連絡して何か話していました。その後別の審査官が来て、まるで犬を呼ぶような仕草で私に手招きし、そのまま私は別室送りになりました。もう15年以上も前のこと、当時はスマホの黎明期で、別室送りになった人たちが生配信するとか写真を撮るようなリスクはなかったのか携帯自体は取り上げられていなかったと思います。ただ、通話は禁止されていました。

 

 

だたっ広い部屋には家族連れ含め100人近い人々が審査を待っていたと思います。主にアフリカ人、アラブ人、中国人風アジア人が大半。ブルカ被ったアラブ人女性客が、泣きじゃくりながらさらに奥の別室に連れて行かれてたのを覚えています。彼女を連行した審査官自身もスカーフ被ったムスリム女性のようでしたので、一応配慮はあるんだなと思いました。審査ブースがずらっと並んでいたのですが、審査官が2人しか配置されていなくて、待ち時間が長く永遠のように感じました。結局3時間待ちで私の番が回ってきて、書類を精査されました。労働ビザに切り替え申請をしてくれた移民弁護士さんが、approval notice(労働ビザが許可された通知)は預け荷物にしないで必ず入国の時は持参してね、とアドバイスをくれていたので助かりました。まるで不法就労者かのような質問を延々とされましたが、結局最後には入国許可のスタンプが押され、晴れて入国になりましたが、待ってる間は生きた心地がしませんでした。その係員にどうして呼び止められたのか聞いたのですが、きちんとした理由は示されなかったと記憶しています。

 

当然、乗り継ぎ予定だった飛行機は出発してしまい荷物は到着ゲートにポツンと置いてありました。盗まれていないだけマシだと思います。その後、航空会社の乗り継ぎカウンターで事情を話して、その日出発する最終便に何とか乗せてもらえました。これで、もし翌日の飛行機しかなかったら宿泊費は当然自腹でホテルに行くか、空港で寝るしかありません。家に帰って移民弁護士にその話をして、どうして別室送りになったのだろうと話したら「That sometime happens」(時々ある事ですね)と言われました。弁護士さんによれば、学生ビザ、OPTの労働許可、労働ビザの切り替えは複雑で、不正も多いカテゴリーなので審査官も慎重になっているのだろうということでした。次に入国するときに同じような目に遭わないように、労働ビザでの入国の記録を移民局のデータベースに提出し、念のため記録を色々調べてくれて改めてこちらに落ち度がないことは確認しました。

 

そして2回目の別室送りも、まだテキサスに住んでいたころ。永住権がプロセスされ労働許可と渡航書類のコンボカードという一時的な書類で入国しようとした時です。その時は実際のグリーンカードが届く前に、実家の事情で急遽日本に一時帰省せざるをえない事情がありました。この時の入国はヒューストン。前回の嫌な思い出があったので、ビザの切り替えとかややこしい時には直行便を使うようにしてました。コンボカードはアメリカへの入国に使えるはずなのですが、嫌な予感はしてたんです。そしてその嫌な予感は的中し、再び別室送りになりました。この時は持ってたスマホを取り上げられました。よって、ブログで紹介できるような写真もありませんが、シカゴ同様、青白い蛍光灯の照明の無機質なだだっ広い部屋で何十人も待ってました。ヒューストンは距離的に近い中南米のハブ空港になっているので、別室送りになっている人たちの層は、シカゴと比べて圧倒的にラテンアメリカ系の人たちで、特に若い女性が目立ちました。あとで聞いたところ、彼女たちは人身売買の被害者ではないことを証明するために別室に呼ばれているのだそうです。みなさんも、途上国の若い女性が誘拐されたり、騙されたりして、先進国に連れてこられて売春エージェントに売り飛ばされたりする話を聞いたことはあるかもしれません。アメリカはその一大市場です。この辺りの高速道路の休憩所には、若い女性が人身売買の被害者かどうかを見分ける方法、みたいなポスターが掲示してあったりします。

 

話は冒頭の日本人旅行者の別室送りの話に戻りますが、最近、円安ドル高で日本から寿司職人をはじめ日本食シェフなど需要が多い分野で日本人が結構出稼ぎに来ているというニュースを見ました。しかし、労働ビザなしのお試しバイトのような軽い感じで来ることは避けましょう。最近、東京からやってきたという日本人風の男性がマンハッタンのパーティーで奇抜な寿司を握ってアメリカ人を喜ばせている動画を友人に見せてもらいました。その動画には「コネなし、宿無し、金なしでNYに着いて放浪1週間、ついに食い扶持見つける」と書いてありました。ニューヨーカーが見知らぬ旅行者をホームパーティーの寿司職人として雇うとは思えないので、やらせであって欲しいと思いますが、もしこの男性がESTAや観光ビザでの入国だった場合、自ら不法就労をオンラインで自白していることになります。こういう動画は移民局に蓄積されていると思われ、よって冒頭の女性のような他のインフルエンサーを自称する旅行者の入国にも嫌疑がかけられるのだと思います。

 

また、インフルエンサー活動以外に怪しまれるきっかけになるのは、英語もろくに話せなようなタレントの「にゅうよ〜くひとり歩き」みたいな、いかにもゴーストライターが書いてそうなエッセイ本に感化された日本人に多い「自分探し系一人旅」での入国です。自分探しって、旅の理由としては本当にフワフワした印象しか無いです。入国の理由に真顔で「自分探し」なんて言われたら、入国審査官も面食らうだろうし、女性の場合は売春活動と間違われても仕方ないと思います。たとえアメリカ訪問が何らかのうちなる刺激を得るのが目的であるにしても、審査官に入国理由を答える際には、具体的な目的と訪問予定地をしっかり言えるようにしておきましょう。例えば、明日はブロードウェイのミュージカル観劇、翌日は、メトロポリタン美術館訪問して、セントラルパークを散策、とつらつら言えて、予約したチケットなどを見せられれば売春活動や不法就労の嫌疑をかけられる事態にはならないと思います。また、滞在は、空港ピックアップ付きのシェアハウスみたいなサービスは使わず、きちんとしたホテルを予約しておくとか、友人知人宅に泊まる場合でも、住所をしっかりメモしておくなどあらぬ疑いをかけられないようにしましょう。

 

それと、トルコ人でグリーンカードを持ってる同僚から、最近グリーンカード保持者でも入国時に呼び止められるケースがあると聞いたので、そのトレンドが日本人にも見られるようになる可能性もあります。グリーンカード所持者でも配偶者などアメリカ人同行者がいるときはできれば、その同行者の列の前に入国を通過するようにしたほうがいいのかなと思います。という私も、2度の別室送りがトラウマになっており旦那Dと一緒に外国を旅行してアメリカに帰ってくるときは、家族として一緒に入国するか、それができない場合は私が先に入国審査を通過するようにしていました。そうしたら、少なくともDは私が別室送りになったりしたら様子はわかるので。今はグローバルエントリー(顔認証入国)にしてそのリスクはほぼゼロになりましたが、グリーンカードホルダーといえど、所詮外国人。何が起こるか分からないのがアメリカの入国審査です。

 

ということで、最近何かと日本人旅行者ソロツーリストを不安にさせている別室送りについて、私の経験と、旅行者の方が避けるべきポイントをアドバイスさせていただきました。これから年末年始の旅行を計画されている方などがアメリカに入国する時の参考になればと思います。