昨日は折角マンハッタンのオフィスまで出社したのに、予定されていた会議がキャンセルになりました。ということで急に時間が空いたので思い切って午後休みをとってSOHOとウエストビレッジ周辺でひとり遊びして来ました。こういう時に真っ先にチェックするのが、マンハッタンのミニシアターの上映スケジュールです。気になっていた新作フランス映画「Passages」がちょうどいい時間帯でウエストビレッジのIFCシアターで上映されているので、早速向かいました。

 

平日の昼下がりなので閑散としていた

 

作品の舞台はパリ、奔放な映画監督トマスと真面目なアーティストのマーティンのゲイカップルは倦怠期を迎えています。そんな時、奔放なトマスが若いフランス人の女性アガサと出会い、彼女との関係に次第にのめり込んでいく、、というストーリーです。上映スケジュールが伸びて、他の都市でも上映が始まったので、そのうち日本にも上陸するかもしれません。ということで、これ以上のネタ披露はやめておきますが、TimeOut誌の批評コーナーでは「Sexy, Sad and so very French(セクシーで、物悲しく、そしてとてもフランス的)」と評されていました。

 

 

 

私かこの映画を気になっていたのは、まず、主人公の一人をイギリス人俳優のBen Whishawが演じていることです。Benは、007シリーズでジェームスボンドをテクノロジーの部分でサポートするQを演じていました。シリーズの初めの頃はあまり目立たないオタク的役柄でしたが、007の直近の作品ではゲイである私生活部分のシーンも出て来ていて、人気キャラだったことがわかります。そのQも今や42歳!この映画でもバッチリハマった役柄を演じています。トマスがのめり込んだ女性アガサ役のAdèle Exarchopoulosもすごく良かったです。慈悲深くも現実的で賢いフランス人女性を見事に表現していました。

 

個人的な好みなのですが、フランス人女性が話す英語は賢さと芯の強さとその裏にある優しさを感じるので、大好きです。Adèle はまさにそんな話し方で英語のセリフがとても聴き心地が良かったです。一方フランス人男が話す英語は、セクシーさと隙のある小賢しさを感じますが、帰ってそれが憎めない印象を残します。ちなみに、この映画の中でのゲイカップルはトマスがドイツ人とマーティンがイギリス人という設定なので、男性が話すフランス語訛りの英語を聞く機会はありませんでした。

 

 

この映画の監督はIra Sachs氏で、私が最も新作を期待していた映画家の一人です。彼はアメリカ人なので、それが逆にフランス的なものへの憧憬に繋がっているのか、「外から見るフランス」という情景をうまく引き出すのに役立っているように思いました。今からおよそ10年前、2014年に公開された映画「Love Is Strange」でマンハッタンに住む老年ゲイカップルの悲哀を情緒豊かに描いていて、それ以降彼の作品には惹き込まれています。ゲイ映画だけでなく、彼の作品には人生の悲哀を、突き放すことなく優しく描く作品が多いです。日本でも上映されたことのある作品もあり、ストリーミングサービスでも観られるので、ぜひご覧になってみてください。

 

 

さて、フランス映画の新作を鑑賞した後は、まるでパリにいる気分になりウエストビレッジのフランス的な界隈を散歩しました。この辺りはまだ再開発の波が押し寄せていなくて比較古い感じのアパートや店舗が並んでいます。個人経営のレストランや雑貨屋が並んでいて、住むところとしてニューヨーク在住のヨーロッパ人には人気なのだそうです。ブロードウェイを跨いで東側にあるイーストビレッジはアジア的なカオスで賑わっていますが、とても対照的で面白いです。

 

この界隈のフレンチカフェとしておすすめは、6番街とBedford通りの交差点入ったところにある「Delice & Sarrasin」です。ベジタリアンの料理やスィーツを提供しています。サービスも良くて居心地がいいカフェです。日本にもこういうお店たくさんあると思うのですが、男性だけでは入りづらいのが難点です。ウエストビレッジにはゲイがたくさんいるので、ここも含め住む地元ゲイの常連客がいて、男ひとりで行っても全然平気です。

 

そして、こんな午後には食べ歩きスィーツがぴったりですが、特におすすめは、IFCシアターと同じブロックにある「Venchi」です。有名店なのでいつも週末や夕方以降は長蛇の列ができていますが、昨日は早い時間でしたので空いていました。こちらはフレンチというよりはイタリアンスィーツですけど、いつもフランス語訛りの英語を話す店員さんが何人かいて、気分を盛り上げてくれます。

 

ということで、フランス映画観て、フレンチカフェとジェラートを梯子して思いっきり怠けてしまったある平日昼下がりの様子でした。途中、上司から着信が入っていましたが、正式に休暇とったし、留守電にもメッセージは入っていなかったので、とりあえず、緊急ではなさそうなので、見ないふりしてみました。笑

 

 

 

隠れ家的フレンチカフェ「Delice & Sarrasin」

 

 

「Venchi Chocolate」はジェラートとチョコレートが人気

 

最後に、IFCシアターでは今年のヴェネチア国際映画祭出品作品である深田晃司監督作品「Love Life」も上映していました。日本映画もこうして、マンハッタン・ウエストビレッジの光景を彩っていると思うと嬉しい限りです。