またまた最近、ゲイ映画の新作を発掘しました。タイトルは「On an Age」。邦題はありませんが、つけるなら「憧憬」かな〜。ゲイ映画を中心としたなんとなく切なさや憂い帯びた物語の秀作を世に送り出しているオーストラリア人ライター、映画監督のGoran Stolevski氏の新作とあってとても期待していましたが、予想どおりの出来栄えで、いいゲイ映画を見た時の感覚、「昔の友達に再会した時のような」気分に包まれる作品でした。

 

 

舞台は1999年夏オーストラリア。東欧からの移民である17歳の主人公が、ふとしたことから女友達の兄と濃密な、そして儚い24時間を過ごします。そして時は流れて、お互い離れ離れになりますが、その女友達の結婚式で再会を果たす、というストーリーです。主人公は音信不通の何年もの間相手を恋焦がれていたけれど、相手の方はすでに結婚していた、という何とも言えない美しくも切ないストーリーです。これからご覧になる方もいらっしゃるでしょうから、内容はこれ以上記述しませんが、自らのセクシャリティーを徐々に受け入れていく若者の成長と彼を取り巻く人間模様という点ではオーソドックスなゲイ・ムービーと思いました。お互い成長してから再会するという展開には懐かしさを感じ一気に惹き込まれます。

 

見どころは、ゲイ映画の金字塔でもあるウォン・カーワァイ監督の「ブエノスアイレス」へのオマージュがあちこちに位散りばめられている点です。例えば、二人がドライブするシーンでカーステレオから「ブエノスアイレス」のテーマ曲が流れたり、主人公が恋する相手がアルゼンチンに憧れているなど、「ブエノスアイレス」ファンならゾクゾクするようなリスペクトが感じられます。

また、Goran Stolevski監督自身が主人公と同様、東欧からに移民でゲイでもあり、移民コミュニティーの悲哀やさらにそのマイノリティーの中でゲイというダブルマイノリティーである主人公の不安定な心の機微の描き方は秀逸と思います。悲しい物語でもポジティブに持っていこうとする傾向のあるアメリカのゲイムービーとは一線を画します。監督は2016年にも、ムスリムのゲイの青年を主人公にした「YOU DESERVE EVERYTHING」という短編映画の名作を制作しています。

 

ニューヨーク付近での「Of an Age」の上映は終了していますが、ニューヨーク・タイムズでの批評も好評でしたので、おそらく今後全米各地、そしてストリーミングサービスでの配信が始まっていくと思いますので、ぜひご覧になってください。

 

「Of an Age」出演者とStolevski監督(右から2番目)