クリスマスの週に入り仕事も落ち着いてきた一昨日の夜、旦那Dと話題のゲイ映画「Spoiler Alert」を鑑賞してきました。今年もいろいろな映画を観ましたが、2回映画館に足を運んだのはこの作品のみ。1回目は、メリーランド州への出張時に前日入りしたホテルの近くで上映していたので、一人で観てきました。その時は、不覚にも泣いてしまい、この映画はDにも勧めたいと思い今週NYで一緒に観ました。2000年代前半から約15年にわたるゲイカップルの実話を元にした作品です。(原作:Michael Ausiello「Spoiler Alert The Hero Dies」)
出張先をぶらぶらしてたら、ポスターが目に留まりました。Jim Parsons(右)は好きな俳優の一人
映画ではマンハッタンのテレビ局勤務の主人公マイケル(Jim Parsons)とそのボーイフレンド・キット(Ben Aldridge)の約15年にわたる暮らしを描いています。マイケルは生真面目なTVマン。ある日同僚に誘われて滅多に行かないゲイクラブへ行きますが、そこで運命の男キットに遭遇します。二人はデートを重ね、愛し合うようになり、一緒に暮らし始めますが、やがてキットが病魔に犯されていることがわかり、、、というストーリーです。ネタバレしないように、内容に関してはこの辺りで留めておきますが、個人的には、今年の映画の中では1番のお気に入りです。映画を観て泣いたのは実に何年かぶりです。
ブルックリン橋あたりでしょうか。このルーフトップのデートシーン、NYっぽくて好き
右が実際のカップル。Michael Ausielloの原作もアマゾンで購入しました
実話を元にしたベストセラー原作がベースになっているので、ストーリーに安定性があって、演出もリアリティーが抜群でした。LGBT映画も徐々にメインストリーム化してきて、同性同士の禁断の恋的なありがちな悲劇的ストーリーだけではもう聴衆の心を掴むことはできないので、今はリアリティーの度合いが共感を勝ち取るかどうかの鍵になっています。
例えば、主人公のマイケルは、有名テレビ局勤務とはいえ実際にはマンハッタンの煌びやかな場所に住んでいるわけではなく、対岸のニュージャージーから通勤していたり、ボーイフレンドのキットも新進気鋭のカメラマンですが、女性のルームメートとフラットをシェアしてる等、設定に現実感があります。よって一般の聴衆は自分を重ねやすい。
また、物語のはじめ、マイケルがキットと出会ったクラブで、そのままお互い本名もわからないまま離れそうになったシーンも、ニューヨークでのシングル同士の出会いを生き生きと描いていて印象的でした。キットが酔っぱらった女性の友人を連れて帰るためにクラブを去ろうとすると、マイケルは本能と直感を駆使してすかさず名刺を渡してました。この行動こそ、マンハッタンでいいパートナーを見つけられるか否かを決定づけます。マンハッタンのシングル男女はアパートの空き物件と同じ。いいと思ったら、その場で押さえないと、すぐに誰かの手に渡ってしまいます。そんな現実をきちんと描いているので、いつの間にかストーリーに引き込まれてしまいます。
クリスマスを40回一緒に祝おうねと約束したのに、14回で幕を閉じようとしてる、、、
出会って一人の人間として認識されるという関門を突破した後、最初のデートでは、長い付き合いができる相手なのか見定めるために、お互いの生い立ちとか、趣味とか、仕事とか、結婚の条件なども開けっ広げに話してました。これはいわば、第一次面接状態。例えルックスが好みで、その夜お持ち帰り状態になっても、価値観の違いや、互いの経済的背景が大きく違う場合は、次のデートには進まないことが多いです。ゲイだけじゃないけれど、ニューヨークにシンデレラストーリーはあまり存在しないです。
また、物語の後半で、関係性がマンネリ化して口論が絶えない二人がカップル・セラピーに通います。そこでカウンセラーに吐露される二人のいざこざの原因が、まさに私とDがいつも揉めるような事項と似たり寄ったり。こうした現実的なシーンの連続が物語の説得性に寄与しています。
余命を宣告されたキットを連れてビーチへ
マイケルは幼少期に両親を失っており、キットの両親を本当の父母のように慕う
キャスティングも良かったです。主人公を演じるのは、ベテランの域に達しつつあるJim Parsonsです。人気シリーズの「Big Bang Theory」での活躍などTV俳優の印象が強いですが、実在のモデルがいる役を見事に演じきっていました。彼は何より眼力が素晴らしい。雰囲気がなんとなく演歌歌手の新沼謙治と元男闘呼組で演技派俳優の高橋和也を連想さます。そして、相手役Ben Aldridgeは正統派ハンサムで「美人薄幸」のゲイバージョンを演じるのにぴったりの容姿。二人のカップルとしての相性も良かったです。そして、ゲイ映画に大きな影響を及ぼす母親の描き方ですが、ベテランSally Fieldがキットの母親役をこれまたリアリティーたっぷりに演じています。アメリカの田舎に実際にいそうな、とても子供思いで、しかしきちんと分別はあって子供の人生の邪魔をしたりはしない、観ていて安心感のある母親。日本では、ロビン・ウイリアムスが女装して家政婦さんを演じた「Mrs. Doubtfire」の妻役で一躍メジャーになったと思いますが、50年近いキャリアを持つ息の長い女優さんです。
真ん中がSally Field。見覚えある方も多いのでは?
ゲイ映画の作品としての成功は、母親役で左右されると思っています。こちらが現在のSally Field
さて、私の映画批評のお約束で、いい男発掘コーナー。この映画に憧憬的なエッセンスを与えているのはパートナーを演じたBen Aldridgeでしょう。キスが上手そう(キスシーン数回)、声がいい、クセがないハンサム顔。でも、都会的だけれど実は田舎の出身で、脇が甘くて浮気もするし、しまいには病気になってしまう、、完璧なアメリカン・ヒーロー的でない人物を演じられる俳優もそう多くはありません。ちなみにBen Aldridgeはイギリス人だそうです。アッパーイーストサイドの92Yで行われた作品インタビューでは、ブリティッシュアクセントで話していて、断然セクシーでした。これからハリウッド映画やアメリカTVドラマシリーズなどで活躍が期待されます。私生活でもゲイです。カミングアウトは2020年で最近です。それまでにもキャリアのある俳優さんなので、それまではどうやって隠し通してたんでしょうね。まさに俳優。
役柄の幅が広い俳優さん。ゲイ役に固定せずに色々活躍してほしいです
この作品、今月の初旬に劇場上映のみでスタートして、今もアメリカ各地の映画館で上映しています。そろそろストリーミングサービスのラインナップに加わると思います。内容が普遍的で、登場人物も万人の共感を得られそうなキャラクターなので、毎年ホリデーシーズンには観たくなる映画のような気がします。機会があれば、ぜひご覧ください。新しいゲイ映画の名作の誕生かもしれません。











