今月の初めに、ヘッドハンターから旦那Dに某金融系企業の日本法人社長の仕事に興味はないか、という連絡が来ました。若い頃に金融業界の会社の駐在員として東京での勤務は経験していましたし、これまで同じような業界でずっと働いてきて今は管理職なので、こういう誘い自体は珍しいことではないのですが、Dの専門エリアとは微妙に違う仕事だったり、諸条件が合わなかったりで、真剣に考えるような段階には至ったことがありませんでした。面接に参加しても、大抵話を聞いてみるだけ、のような感じで終わっていました。それなので今回もそれほど期待せずに、自分のマーケット価値を再確認するくらいの気持ちで面接に応じたようですが、仕事内容がまさにDが専門とする分野で当然面接もとんとん拍子で進みました。先週こちらの本部の役員とも電話面談をし、だいたいのお給料とか赴任時期の話にまで発展してしまいました。現職の方の退任も決まっているようで、あちらもクリスマス前に目処をつけたいと思っているようです。
(日本法人は港区に本社を置くようです。Dのオフィスからはこんな眺めがみえるのでしょうか)
急転直下な話で戸惑いつつも、Dはもう一度アジアに駐在したいと前々から言っていたので応援したい気分です。長年の遠距離関係を続けてやっと一緒に住んでいる我々は、再び離れて住むという選択肢はないので、もしDがこの仕事をアクセプトしたら私も一緒に東京についていくことになります。今私が勤務する会社には日本拠点はないので、Dの赴任に合わせて自分も転勤、、なんて都合のいいことはできず、仕事を辞めていくことになります。Dのポストは日本で見れば「外資系社長」なんですけど、本部から見れば所詮極東の一拠点の管理職。住宅手当は出るようですが、私が仕事を辞める分世帯収入は減ります。しかし金銭的な問題より心配なのは、私が仕事を辞め無職になると言う選択についてです。
アメリカで言えば多分中産階級に属する私たちの周りは基本皆共稼ぎで、相方の稼ぎに頼って仕事を辞めてしまう人はいないので、ちょっと想像がつかない感じです。また海外赴任に限っては、どんなに仕事場での男女平等が進んだアメリカでも基本的に男性が当事者で、仕事を辞めてついていくのは女性というパターンが多いです。もちろん、バリバリのキャリアウーマンが職の自由の効く旦那さん(Potable Husband=持ち運び可能な夫)を伴って海外転勤するケースもありますが少数です。ゲイカップルの場合、あまりそういう棲み分けというか役割分担がないので、周りにいい例もなく悩ましいところです。
米人夫の東京駐在に伴いNYでの仕事を辞めて日本に住んでいる知り合いの日本人女性に色々話を聞いてみたのですが、我々のような子なしゲイカップルと、子供がいる家庭とは色々な優先順位が異なり、あまり参考になりません。その方は、日米ハーフのお子さんの学齢期に日本に住まわせて日本の学校に通わせて日本語を身に付けさせるのに絶好の機会を得たと捉えているとのこと。それに日本は、まだまだ専業主婦生活が受け入れられる社会だとおっしゃっていました。一方私のような中年のおっさんが仕事もせずに、ぷらぷらしても居場所がなさそう。もちろん、私は仕事をしないで専業主夫という生活では何をしていいのかわからないですし、きっと仕事を見つけて働くのでしょうけど、ビジネススクール卒業してからずっとアメリカの環境でキャリアを構築してきたので、今更日本社会に戻って適応できるのかもとても不安です。それにDの赴任も長くて5年くらいでしょうし、その後また私もアメリカに帰ってきて仕事を見つけることができるかも不安、、、。
近くのカフェで家族会議。席取りしてたら他の客にわんこの見張りを頼まれるD。この男に日本法人社長などつとまるのだろうか、、。
そんな感じで不安ばかりなのですが、まあ、私のキャリアのことはなるようにしかならないので、あまり考えないようにして、我々のもう一つの関心は目下、もし赴任が決定したらどこに住もうかということ。Dは前回の駐在時には麻布十番とか飯倉片町のあたりに住んでいたのですが、東京における白人エクスパッツ的アドバンテッジは全く行使せず、六本木・赤坂界隈を夜な夜な遊び歩くということはなくアークヒルズの職場と家の往復で数年を費やしたらしいです。また元々田舎者なので、最初のうちは通勤時間帯の地下鉄が怖くて乗れなかったらしいです。私と一緒になってから東京は色々連れ回したので、あの時より数倍詳しくなっていますし、色々冒険もできると思うので、レベンジでまたあの界隈に住むか、振り切って葛飾区とか下町情緒を感じられるところに住もうかとか、または、長距離通勤だけど憧れの鎌倉に住んでみようか、なんてことも考え始めました。
知人の日本人女性は米人夫の東京駐在に伴い仕事を辞めて日本で駐妻生活をしていたが、今はこのビルの中で仕事をしてます。
ところが、その会社の日本支社の情報をネットで色々調べていくと、非常に気になる点が出てきました。会社自体は優良企業のようですし、コロナでも業績は良好のようですが、果たして、Dと私にとっていい選択なのか、、。その会社は職場における「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」に大変力を入れており、ビジネス雑誌などでもその取り組みを紹介されていることがわかりました。ヘッドハンターが送ってきたジョブ・ディスクリプションにも、人事マネジメントの項目に、D&I指標の達成、などの文字が踊っていました。現在の支社長さんは女性で、ご自身の育児とキャリアの両立話など、結構な発信量。育休を取った旦那さんも顔出しでメディア登場。本部のダイバーシティ方針を元に、LGBT社員にもパートナーシップを認めて家族休暇を付与するとか、かなり先進的のようです。ダイバーシティ推進も多くの日本の会社のお手本になってもらいたいと思いますが、内心、これは我々夫夫にとって大変なことになるかもしれない、、と思うようになりました。というのも、ダイバーシティを戦略の一環として掲げている会社のトップとして、Dが自分のセクシャリティーをどの程度開示していくかということに非常に悩むだろうと思うのです。Dにこの話をしたら、仕事とプライベートは別で、今と同じように職場でカミングアウトするつもりは全くない、と言いますが、平社員の立場と経営幹部の立場がは違うように思えるのです。それに、もし日本法人の人たちがDの配偶者が日本人男性と知ったらどんな反応をされるのだろうか、、、。日本法人には若手LGBT社員の会が結成されていて、何年か前のレインボー・プライドマーチにも参加したようです。きっとDも担ぎ出されたりするのではなどと、考えれば考えるほど、東京での生活に対する期待よりも、この会社の進めるダイバーシティとDがどのように折り合いをつけていくのだろう、と不安になってきています。
そんな中、日本法人を統括する人事部門のマネージャーからDに、パッケージ(給与とか福利厚生)や東京での暮らし、そして現職の支社長さんと日本支社の経営課題を話し合うための面会をセットアップしたいと連絡が来ました。私からDには、「日本の労働ビザ申請の話になるときっと配偶者のこととか聞かれると思うけど、どう対応するの?」と聞いていますが、「日本は同性婚認められていないのだから、言う必要はないと思う」とあくまで消極的。そうすると私は存在しない事になる?日本人なので配偶者ビザも必要なく私がその会社に手続きでお世話になることはないと思うので、隠そうとすれば隠すことができるかもしれませんが、生活していく上で不便は出てくるのではと思っています。考えれば考えるほど決断が難しくなります。
そのHRマネージャーさんとの会話はどのように展開していくのか、、来週の初めにその電話面談がセットアップされています。果たして、Dが正式に書面でジョブオファーをもらって日本行きを決め、それに伴い、私も東京で駐在妻ならぬ駐在夫として生活を送ることになるのか、これから数年の運命を決める電話会議の成り行きは如何に、、、、、。来週あたり、会議の内容を紹介させていただきます。


