先月、日本のゲイ友Tが出会いアプリで国際ロマンス詐欺に遭遇した話を紹介させていただいたところ、ご好評いただき初のジャンル総合ランクインを果たすことができました。Tにもリンクを送りましたが、口の悪いおかまの代表格らしく「くだらないことに筆圧強め〜」とダメ出しを喰らってしまいました。でも、彼の体験の記事でランクインしたことは満更でもない様子でした。
さて、私も実はそんなTを揶揄うことができないような国際ロマンス被害にあったことがあります。その男の名は、ダラスのブライアン。10年以上前、テキサスに住んでいて婚活を真剣に開始した頃のことです。まだ当時はスマホのアプリなどは主流ではなく、ネットの婚活サイトへはパソコンでアクセスしていた時代です。もうそのサイトは存在しませんが「ヤリ目」(Hookup Site)ではなく、割と真面目な感じで、ゲイもストレートも真面目にパートナーを探しているサイトでした。有料オプションもあったような気がします。
初めの数ヶ月は結構な数マッチングがありましたが、ゲイのマーケットは限られているので、半年もすると近場にいるのはすでに見覚えのあるプロファイルばかりになり新規開拓できないでいました。そんな時に、"Howdy from Dallas!"というメッセージが入っていて、写真もまあまあ。当時住んでいた街から数百キロ離れたダラスのブライアン(かっこいい響き)。職業は庭園デザイナーで、週末は家業を手伝うカウボーイ38歳。馬に乗るのが日課だとか。早速、やりとりをはじめました。まず、外見という出会いサイトの非常に壁の高い第一関門を突破。ブライアンのプロファイルは顔写真一枚だったのですが、あちらは私の写真をみて気に入ってくれて"You are so cute!"との反応。正直、ブライアンのことはそこまで好みのタイプではなかったのですが、そんなことあまり言われたことがなかったので、逆にこちらが乗り気になって、そこからメールでやりとりが始まりました。まだスマホで頻繁にメールをチェックする時代でもなく、仕事が終わり家のパソコンでメールをチェックすると、毎日ブライアンからメールが来ていて、返信するとまた寝る前くらいに、「おやすみ」みたいなメールがきていました。もう私は1ヶ月も立たないうちにブライアンにかなり入れ込んでいました。彼曰く、もう少しで40歳になるからそれまでには、人生を共に過ごせるパートナーが欲しいし、君とはその可能性を感じるんだ、と真剣交際前提の会話。自分の中では、テキサスの大地を馬に跨り駆け抜けてカウボーイが迎えにきてくれる妄想が膨らんで行きました。
(これは当時私が勝手に思い描いていたイメージ。当時の私より10歳近く年上だったので、とても包容力があるように思えた。)
その後、電話で話そうということになり、週2ー3回電話をする仲になりました。携帯を持っていないということで、(まずこの時点で怪しかったのに私は見過ごしていた!)テキサス周辺ではみたことのない不思議な番号からかかってきていました。アメリカ人の白人男にしては、妙なアクセントだな〜と思ったのですが、父親がフィンランド人で、ヘルシンキで育ったのでアクセントが強いと説明。これも特に怪しまずに納得。今考えると、色々辻褄が合わないことばかりなのですが、当時は恥ずかしいくらいラブラブな会話を展開していました。
そして、3ヶ月くらい経った頃に、実際に会いたくなって、私の住む街に遊びに来ないかと誘いました。向こうも快諾してくれて、とある初夏の週末にダラスから3時間かけて訪問してくれる運びになりました。しかし、当日の朝になって、急に仕事が入ったから行けなくなったとメール。前日の夜から部屋の掃除をして、手料理の準備、食材やワインも普通のスーパーでなく、当時は高級感が漂っていたWholeFoodsで購入。そして彼が泊まってもいいように、ベット周りも準備万端でいたのでとてもがっかりしました。準備していたワインや食事で週末ぼっちディナーの惨めさ、、。それでもきちんと謝ってくれて甘い言葉で、恋しいよ〜と言ってくれたので、その時点でブライアンの素性を疑うことはありませんでした。
その数週間後、今度は私が彼の住むダラスへ訪問しようと計画しました。電話では嬉しそうな感じでしたが、その後詳細を決めるメールのやりとりでは、返信が滞りがちで、なんとなく不安になりました。それでも、ある土曜日にダラス市内でランチをすることが決まり、私は気合を入れて、金曜の夕方からダラス入り。見栄を張って高級ホテルを予約。返金不可のプランで、土曜日も含め2泊分前払い。金曜の夜も会えないかな〜とメールしたのですが、返信はなし。土曜に朝になっても返信がないし、電話への着信もなくどんよりした気分になりました。嫌な予感が的中して、ランチで会う約束をした場所にも現れることはありませんでした。傷心のまま、その夜にスカイプで数少ないゲイ友であるTに愚痴を聞いてもらったことを覚えています。Tもその時はロマンス詐欺だとは思わず、「白馬に乗った王子様がそんなに簡単に現れるわけないよ〜」と慰めにもならないような慰め言葉をかけてくれていました。
ブライアンのことは忘れようと、メールも全部削除しメールアドレスもブロックして次の出会いを探し始めたある日、I am very sorryという題名のメールが、彼の別のメールアドレスから届いていました。なんでも、ヨーロッパに住んでいる父親が亡くなって、急遽ヨーロッパに戻っているとのこと。父親の膨大な遺産がイギリスの銀行に残っているのだが、5000ドルの手数料を払わないと引き出しができなくて、その手続きが終わるまでアメリカには帰れないという話をしてきました。今でこそロマンス詐欺の典型的ストーリーですが、当時はまだそういう手口が知れ渡っていなかったので、まず、お父さんのことで本当に気の毒と思い、そんな失意の中遺産処理までするなんて大変なんだな、としか思えませんでした。それに私もまだ英語が未熟だったので、ブライアンが私に5000ドル工面して欲しいと言っているのか、ニュアンスがいまいちわかりませんでした。でも、2−3回同じ話をするので、その話をTにしたら一応会話を録音しておいたら、とアドバイスをくれました。怪しくて録音したのではなく、単に何を言っているのか解析しようかな、という動機だったのですが。
まあ、それでも続けてお金の話をされて、その額も5000ドルから7000ドルに値上がりしていったので、だんだん怪しく感じるようになり、ユナイテッド航空(当時はまだコンチネンタル航空)のコールセンター勤務でフィンランド人を父親にもつ本物のフィンランド語スピーカーのゲイ友にその録音会話を聞いてもらったら、この声とアクセントは、フィンランド人ではなく、おそらくナイジェリアあたりの出身者の話す英語だろうと言い当ててくれました。その時初めて、自分は騙されていたのだと気が付きました。ずっとブライアンとの遠距離恋愛おノロケ話を聞いてもらっていた3−4人の現地ゲイ友も同じ場にいたのですが、大盛り上がりで私はその夜の悲劇のヒロイン。私もメラメラと復讐心が芽生えてきて、友人達の悪ノリにも乗っかって、騙されふりを実行することにしました。まずは、次の電話で7000ドル払ってもいいよ、とブライアンに伝えました。そこからの展開は素早く、すぐにイギリスの香港上海銀行のロゴが入った変なメールを送ってきました。24時間でリンクが切れるからそれまでに送って欲しいと。リンクを開くのも怖いし、ここは相手を焦らして、リンクが作動しないということにして、電話で話すことにしました。本性が現れ始めたのか、相手にとっては最後の仕上げ、とでも思っていたのか、それまでの甘い言葉はなく、とてもビジネスライク。そして、送金先の口座名などを話をする予定の電話の時に、フィンランド系の友人が同席して弁護士の役を演じてくれました。本物のフィンランド語を盛り込んだ彼の迫真の演技で、銀行の署名入りのレターを送付してくれとか、借金の金利を話し合いましょうと、色々とたたみかけたら、ブライアンは恐れ慄いたのか、電話が切れました。その後、一切ブライアンから連絡はありませんでした。
この顛末を日本にいるTに話したら、まずその本物のフィンランド人の友人の方に興味津々で、写真見たいとか、その彼とくっ付いたら?とか、超ゲイ的視点。(おいそこかよ!)そして私みたいに危機意識の甘い日本人は、海外で通用するわけがないから、早く日本に帰ってきたら〜?と帰国の勧め。(その10年後まさに自分が同様の手口に引っかかるとかつゆ知らず、、。)でも、ネットでの出会いの洗礼を受けたというのは図星です。偽物ダラス男に首っ丈になって半年も気が付かなかった自分の愚かさや、もちろん、だまされた悔しさ、費やした時間などへの後悔で、しばらく落ち込みましたが、この経験があったからこそその後のネット婚活では、会う前に妄想をふくらまし過ぎないように気をつけるようになりました。そして、いいなと思った人には、早い段階で実際に会うようにして、バーチャルのみの感情には頼らない、と決心しました。結果的にそれがDとの出会いに繋がったと思えはいい授業料だったと思います。
ということで、もうかなり昔の話をしてみました。ヨーロッパ人マッチョイケおじのなりすましにひっかかった最近のTの経験と同じで、当時は私もパートナーを渇望していました。また、容姿も平凡な私に、"You are good looking"等と言ってくれる人はそういないので、それだけで運命の人に出会ったように舞い上がっていました。そしてマメな連絡と"I miss you"と甘い言葉のオンパレード。こいつら、まるで心理学でも学んでいるかのように寂しい人間の心の隙に付けこんで来るのが巧妙です。
後日談ですが、その1年後ついに私もiPhoneを購入し、黎明期のゲイアプリを始めたのですが、ブライアンと同じ写真のプロファイルを発見!その名も「オースティンのヴィンセント」。名門テキサス大学オースティン校の博士課程に在籍している32歳。同一人物が懲りずに獲物を狙っているのか、はたまた同じ写真が色々なところで使われているのかは知りませんが、ダラスのブライアン、というアウトドアのワイルド路線から、アカデミア男子路線に変更か〜と思わず苦笑。速攻でサイト管理者にレポートしました。(この下の写真)
(これが、ダラスのブライアン、そして後にオースティンのヴィンセント。すでに色々なサイトで出回っていた写真なので載せています。)
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ロマンス詐欺シリーズ、私の周りにはもう一人被害者がいて、その方はお金を振り込んでしまった実被害に遭っています。Dの長年の友人でストレート女性でシングルマザーのSさん。アメリカらしく、サイト運営者を相手取って裁判中と聞いていましたが、来月ランチをする約束をしているので、その後のアップデートが聞けたらまたブログで紹介します!

